
メビック扇町では、扇町・天満・南森町界隈で活動するクリエイター、デザイナー同士が互いに知り合い、顔の見える関係を築く「場」を提供するため、少人数による座談会「クリエイティブ・クラスター・ミーティング」を定期的に開催しています。
今年度は、業種や地域(扇町・天満・南森町界隈)にこだわらず、様々なジャンルの方々に集まっていただき、制作やディレクション、プロデュースにまつわる現場での経験談を中心に意見交換を行っていきます。
(今年度は、参加者、関係者のみによる非公開で開催しています)

プロジェクトをゴールまで正しく導くため、スタッフやクライアントの先頭に立って仕事を仕切る「プロデューサー」という仕事ですが、“言うは易く、行なうは難し”。クライアントとの折衝にスタッフ間の調整など、責任重大かつ非常に気を遣う仕事であるため、プロデューサーは多くの課題を抱えています。
そこで今回、大阪で活躍するさまざま業界のプロデューサーのみなさんに集まっていただき、現場における仕切り方のノウハウをミーティング形式で交換、互いのスキルアップに繋げていただこうとこの機会を設けました。
2008年7月4日(金)18:00〜21:00

このミーティングのコーディネータ。広告代理店営業マンとして各種企業のコミュニケーション活動をプロデュース。その後、05年に独立して大阪に「情熱の学校」を開校。中小企業のブランド向上を通じて、自社の想いをきちんと伝えられる会社を創り出すため、コンサル&セミナー事業を展開中。

デザインマーケティング会社を経て、フリーのデザイナーとして独立。2004年有限会社DRIVE設立。メーカーやブライダル業界、リゾート業界などのデザインからブランドコンサルティングまでを手がける。その他、大学・専門学校講師、現代美術作家としても活躍。関西ブランディングデザイン協会理事。

オフィス家具メーカーで20年以上、オフィスデザインの仕事に携わったのち、独立して2000年Kepla Design Studioを設立。独自のオフィス理論で、空間作りのコンサルティングからプランニング、デザインまで手がける。2004年、同じ考えを持つデザイナーと協業グループK-DESPAを結成。

設計事務所勤務ののち、2005年に独立し、ライフサイズ総合計画事務所(現・(株)ライフサイズ)を設立。建築設計・空間デザイン事業を展開するほか、大学や専門学校で講師を務める。

大阪府立工業高専を卒業後、1995年に有限会社ゼック・コーポレーション(現・(株)ゼック・エンタープライズ)を設立。セールスプロモーションに関するコンサルティング・プランニングを手がける。社外役員や企業顧問を含め、プロジェクトマネージャーを多数兼任。

情報誌編集部、クリエイターのマネージメント会社を経て、独立。現在、関西のクリエイターとのネットワークの中で、全国の雑誌媒体の編集企画、企業SP制作などのエディトリアルや企業ブランディング、WEB制作などを手がける。2007年、障害者の表現を応援するプロジェクト『ハコプロ』を発足。

環境デザインをベースにしたコミュニケーションデザインやプロダクトのデザインを手がける。またインスタレーションなどのアート制作など、風景を眺める人のまなざしへのアプローチとして領域横断的な表現に取り組む一方で映画や舞台などで役者もつとめる。大阪大学コミュニケーションデザイン・センター特任教員。

制作プロダクションや印刷会社にてコピーライター、クリエイティブディレクターを歴任。大手企業の各種販促活動やイベントキャンペーンを手がける。1997年、独立してフリーに。企業やショップの立ち上げに関わるほか、絵本制作なども手がける。また、2003年に『ギャラリーヘイ・オン・ワイ』を開設し、自主イベントを開催。

創業90年を数える鉄工所の4代目。「中小企業にもブランディング力が必要」と、積極的に営業活動を展開。今回はものづくりの現場代表としてミーティングに参加。OWO(次世代型航空機部品供給ネットワーク)副会長、KNS(関西ネットワークシステム)世話人などを務める。

藤井寺工業高校を卒業後、金属メーカーを経て、父親が経営する工場に入社。キャリア40年のヘラ絞り職人。人脈を広げるために異業種交流会への参加やセミナーの受講、独力でHPを立ち上げるなど、アクティブに営業活動を展開している。

財務省系財団シンクタンクを経て、2003年5月より現職。シンクタンク時代には地域産業政策を担当。現在、クリエイターの創業支援、および扇町クリエイティブクラスター創生に向けたコーディネート活動等に取り組む。また、産学官民の有志とともに、KNSを設立。
今回は、「現場で起こる問題」を設定して参加者それぞれが回答を出し合い、そこから意見を交換するという、今までのクラスター・ミーティングとは異なる趣向で進行しました。なお、参加者と数名のオブザーバーのみによる非公開形式での開催となりました。

外部スタッフ数名とともにネットワークチームを組織し、新規事業に取り組んできた。
その事業は将来の利益を生み出すための(新規顧客を獲得し、メンバー全員のWinWinに繋がる仕組みづくりの)先行投資的なもの。
始めはスタッフの士気も高く、盛り上がっていたが、事業の結果が出難い状況になる(利益に繋がり難く、商品・宣伝費や毎回の会合など時間とコストだけがかさんでいく。おまけにメンバー間で作業量にバラつきがある)と、スタッフたちのモチベーションはダウン。
さて、この現場を改善するため、プロデューサーとしてのあなたの選択は?
この問題の改善策として、次の3つに分かれました。

現場で起こる問題1
プロデューサーの問題だという意見が数名の方から出るなか、「自分の“汗”を周囲に見せ、周りを巻き込む努力をすべき」(中川悠)という主張が。これに対し、「“汗(努力)”どころか、血(損失)も涙(泣き言)も見せない」(大倉)という意見が出され、「プロデューサーに必要とされる資質とは?」という次元にまで話が広がりました。
「個別に話し合う」という意見が多く出されましたが、「経営者なりクライアント、あるいは競合先など、メンバー全員に共通する“敵”を作り、結束力を高める。ただし、敵になってもらう人には、裏からその旨を伝えておく」(芦谷)というユニークな意見も挙がりました。
「ターゲットのあいまいさ」(森)「ゴールと現状とのギャップ」(大倉)を認識し、仕切りなおすべきとの見解が出ました。

ある日、上得意先から「スタッフの1人が気に入らないので担当を外してほしい」と、一方的に電話があった。
事情を聞くと、「複数の提案がほしかったのに、キメ打ちで押し切ろうとしてきた」とのこと。
そのスタッフAは、たしかに得意先に対するコミュニケーション能力には少々問題があったが、腕はよく、この仕事に対するモチベーションも高い。なにより、あなたの唯一の右腕だ。
他に、スタッフが2名いるが、彼らはそれぞれ別の作業を担当しているため、Aの代わりはできない。
さて、この状況において得意先を納得させるための、プロデューサーとしての選択は?

現場で起こる問題2
この問題については、次の2つに答えが分かれました。
この意見を出したのは、10人中2人と少数。いずれも「得意先担当者、A、自分の3人で飲みに行く」という意見でした。仕事を離れ、プライベートな時間を持つことで人間関係が円滑に行くことも多いようです。
「Aの力量は充分認めつつ、担当者の機嫌もそこねないように……」という意見。
ほかに、「複数案を提示できなかったのは、自分の指示ミスだとプロデューサーとしての責任を示しつつ、Aの必要性を説く」(杉山)、「Aを外すと満足のいくものが得られないがそれでもいいのかと問い、それでもいいというのならAをはずす」(堂野)など、真正面からAの必要性を説くという人も。また、「得意先担当者を飛ばし、上の権限を持つ者に話をもっていく」(森)という意見も。担当者レベルでのやりとりにとらわれるのではなく、その上の立場の者など、クライアント側の人間全般と折衝し、仕事を遂行すべき——そんな、俯瞰的な観点が要求されるプロデューサーの一面が表れていました。
いずれにせよ、Aをスパッと切るのではなく、「仕事のできるスタッフAを守ってあげるのがプロデューサーの役割」というスタンスで臨むという点では、スピーカーのみなさんの一致するところでした。ただ、「自身が表に出ながら、Aにもコミュニケーションについて教育する」(中川悠)など、Aに成長を促すこともプロデューサーの大切な仕事といえるようです。

外部スタッフとともに進めてきた新商品のパッケージデザイン。しかし突如、得意先の一方的な理由から、その商品が発売延期。そして、プロジェクトを一旦、白紙に戻すとの連絡が入った。
現時点で作業にかかった金額は100万円(プロデューサー分30万円、外部クリエイター3名合計70万円)。それを支払ってほしいと得意先に求めたが、プロジェクトが再開した際は、必ずあなたに仕事を依頼するので、今回は泣いてほしいといわれてしまった。
さて、この状況下で、あなたが得意先、そして外部クリエイターに対して取るべきアクションは?

現場で起こる問題3
お金がからんだとき、「パートナー(外部クリエイター)との信頼関係」と「クライアントに対する立場」の間でプロデューサーはどう立ち回るのか——。
意見は2つに分かれました。
「クライアントに100万円支払ってもらう」とするスタンスですが、もしもダメなら……の場合の対応は「訴訟も辞さない」(堂野)、「今後の取り引きを辞める」(杉山)などさまざま。
また、「クライアントに100万円払ってもらえれば、もちろん外部クリエイターへの70万円も支払うことができますが、払ってもらえない場合はどうするか?」という問いに対しては、「自腹を切ってでも70万円払う」と「実費については自腹で支払うが、ソフトに関する部分については少し負けてもらう」という意見が出ました。
「次回の発注に期待し、今回はクライアントからの要求を飲む」という意見。特に、上得意の場合、クライアントは大事にするということでした。ただ、「次回の仕事をもらったときに、今回の分のうち、いくぶんか上乗せしてもらう」(中川悠)「クライアントに貸しを作っていることを意識させ、付き合うなかで100万円を回収する動きを見せる」(中川裕)など、いずれは今回の損を回収しようと考える人も。
外部クリエイターへの支払いについては「自腹でスタッフに支払う」「泣いてもらう」「値引きしてもらうが払う」に分かれました。
この事例について、話し合いを進めていく中で「相談できる弁護士を持つなりして、日頃から訴訟に備えておくべき」(長尾)との意見が出されました。このようなケースに遭遇する確率はけっして低くなく、対策を立てておくべきなのかもしれません。

出されたお題に対し、スピーカーのみなさんは頭をひねりながら回答し、議論をたたかわせていました。出だしこそ、お互いに遠慮しながら発言をされていましたが、そのうち、我先にと積極的に自分の主張を述べていただき、ミーティングは大いに盛り上がり、あっという間の3時間でした。それぞれの現場での経験をもとに本音でやりとりする様子に、リアリティを感じました。
その後の懇親会は全員出席。お互い、ミーティングで語り尽くせなかったことを懇親会でさらに深め、交流を深めることができました。
公開:2008年08月19日
取材:プレス・サリサリコーポレーション 細山田 章子氏