コミュニケーションとネットワーキングがクリエイターの仕事を変える
2008年2月1日開催


2007年10月から約3ヵ月間にわたって開催された「この街のクリエイター博覧会」。約4千人を動員し、各方面から賞賛の言葉をいただきました。イベントの興奮冷めやらぬ1ヵ月後、各クールのコーディネイターたちが再びメビックに集まり、トークセッションを開催。テーマは「ネットワーキングがクリエイターの仕事を変える」。この街のクリエイターたちがお互いに知り合うことによって起こった素敵な変化について、みなさんにたっぷり語っていただきました。すでに「この街」に関わってくれている方も、まだこれからという方も、各スピーカーの意見を参考に、クリエイター同士のネットワーキングについて改めて考えていただければ幸いです。

日時

2008年2月1日(金)16:00〜19:30

プログラム

トークセッション 16:00〜17:40 交流会 18:00〜19:30

スピーカー
司会

堂野 智史(メビック扇町)

トークセッションレポート

16時という比較的早い時間からのスタートにもかかわらず、会場は聴衆でいっぱい。「この街のクリエイター博覧会」のコーディネイターを務めた10名のスピーカーが着席すると、会場中の視線が集まりました。イベントを大盛況のうちに終わらせた自信からか、スピーカーのみなさんの表情には余裕が感じられます。まずは、「このクリ博」実行委員長の浪本さんがイベントを振り返って概要を説明。クリエイターたちが自主的にイベントを企画・運営することによって、各自の知名度アップ、ネットワークの構築、組織化によるスキルアップなどの成果が生まれたと報告されました。その後、司会者からの質問にスピーカーが答える形式でトークセッションがはじまりました。

司会

今回はテーマの企画はもちろん、参加メンバーの調達までコーディネイターに任されていました。人材集めはどのようにされましたか?

杉山

これまでに仕事をしたことがある人や、以前からの知人を中心に声をかけました。違うジャンルのクリエイターさんと一緒にやりたかったので、フォトグラファーからネイリストさんまで幅広く。今回のイベントへの意気込みを伝え、熱意で口説きました(笑)。

メビックのクリエイティブクラスターで出会った人が中心。フォトグラファーや編集者、マーケティングのプロなどを集め、何度かミーティングを開くうちにメンバー参加メンバーが固まってきた感じです。

司会

スポンサー集めはどのように?

廣瀬

僕は映像を使った展示を企画していたので、機材を提供してもらわないといけなかった。ダメ元で東京の企業さんに声をかけると皆さん想像以上に協力的で、逆に企業さんの持つネットワークまで紹介してもらえたりと、思わぬ収穫もありました。

司会

「このクリ博」はみなさんの中でどんな位置づけだったのでしょう?

藤井

“真剣な遊びの場”です。用意された遊びではなく、自分達で創る遊び。ビジネスではない遊びの時間をほかのクリエイターさんと共有する機会なんてなかなかないですから。そういう意味ではとても貴重な場でした。

上瀬

クリエイターの本性というか、本質的なところが見えたと思っています。そういう部分は仕事上のポートフォリオではなかなかわかりませんから。

報酬をもらう仕事ではないけれど、自分の個展というわけでもない。それが難しかったですね。自分の持つスキルやクオリティはあからさまになるので、ヘタなものを展示すれば「そんな程度か」と判断される危険がありました。正直、お金の絡んだ仕事の方が楽やったかも(笑)。

司会

では、テーマのネットワークについて。みなさん、イベントによってネットワークは広がりましたか? ネットワークが減った、変わらない、2倍、5倍、10倍になった、該当するところに挙手をお願いします。

減った:なし
変わらない:なし
2倍になった:1名
5倍になった:1名
10倍になった:8名

司会

やはり、みなさんは普段からネットワークづくりに積極的なのですか?

芦谷

以前はそうではありませんでした。異業種交流会って胡散くさいイメージがあって(笑)。メビックのイベントなどを通じてクリエイターさんたちと出会い、苦楽をともにできたことで、これまでネットワーキングを誤解していたと気づきました。

司会

ネットワークの広がることによって仕事が変わることは?

廣瀬

たとえばこのクリ博ではテーマクールのほかにオープニングとエンディングのイベントも手がけ、それを見てくれた複数の企業さんからイベント企画の仕事を相談されました。ウチはデザイン事務所なのですが、アウトプットが増えるたびに仕事の幅も広がっていくという予感はあります。

杉山

僕は建築・設計が仕事なので、あまり他のジャンルのクリエイターさんと仕事する機会がなかったんです。だから今回のイベントではさまざまな分野の仕事内容や価値観を知れて、いい経験になりました。共同作業することにより、想像を超えたモノが完成するんです。今後、仕事にも生かしていきたいと思っています。

真柴

普段仕事で関わることがないような人たちとモノづくりをして、「そんな発想もあったんか」というような心地いい刺激を受けました。

浪本

僕はずっと東京で働いていたのに、独立したのは大阪なんです。ネットワークを作らなければ仕事ができない状況だったので、意識的に動くようにしていました。自分の出来ることだけを受注してこなしていくつもりはなく、カメラマンさんやライターさんとチームのような関係を築き、いい仕事をしたいと思ってましたね。

司会

共同作業するにあたり、みなさんはメンバーをまとめるプロデューサー的な役割だったと思いますが。人をまとめるコツはありますか?

真柴

わたしは自分では何もできないので、だからみんなで一緒にやろうというスタンスでした。すると、「そこはもうちょっとひねった方がいいじゃない?」なんて、いろいろな人がアドバイスをくれて。自分が前に出なかったのがよかったのかなと思います。

藤井

クリエイターって自己完結型の人が多いんですよ。自分であれもこれもできるから、ひとりでやってしまう。でもそれを続けると、結局ただの“器用なおっちゃん、おばちゃん”で終わってしまうというか、特徴のない無難なモノしか作れないんですね。クリエイターひとりひとりとコミュニケーションし、相手のやりたいことを上手く引き出しつつ、今回のようなイベントにチームとして参加する。じつはそういう機会を望んでいる人も多いんです。

西村

実は、本当にできるのかどうか、自信がないままコーディネイターになったんです。メンバーと何度も打ち合わせを重ねたり、スポンサーさんのところに足を運んだり、とにかく必死でした。テーマ展の形が見えてくるにつれ、僕らの企画のためにこんなにたくさんの人ががんばってくれてるんだとか、こんなにお金が動いてるんだと思うと怖くなることも。おかげで展示が成功すると、うれしかった反面、物足りなさも感じて。同じくコーディネイターだった杉山さんとも相談して、またやろうと決めたんです。

司会

みなさん、ネットワークはどうやって作ってますか?

デザイナーでもいろんな人がいてて、価値観やノウハウはバラバラ。誰と組んで仕事したいかと考えると、結局は人間性だったりしますよね。僕はポートフォリオで相手を評価することはほとんどないし、自分もポートフォリオだけだったら見せたくないですもん。

芦谷

今回のイベントの準備期間なんかがすごくいい例ですよね。クリエイターといってもそれぞれ背景が違うから、意見が食い違うこともあるし、ケンカになることもある。エネルギーを出し合うこと自体にすごく意味があったと思うんです。あきらかにエネルギーを出し渋ってるのがわかったらおもろくないヤツやなと思ったし、関わった以上は全力でやらなという人はおもろいなと思った。

上瀬

ネットワークは続いていかな意味がないでしょ。相手の本性を知って、「この人は飲み会はいいけど仕事はやめとこ」とか、そういうことはわかりましたね。ネットワークを築ける相手を見る目を養わないといけないかもしれません。

司会

うまくコミュニケーションするコツは?

上瀬

初めて人に会ったときは必ず共通点を探るようにしてます。出身地や会社が近くだったりしたら話がはずむことも。

真柴

おもしろそうな誘いを受けたら必ず行くように心がけてます。行かなかったらそこで終わるけど、行ったら今後おもしろい展開になるのかもしれない。あとは、自分が普段考えていることをブログで発信することですかね。

杉山

仕事では年上の方と関わることが多いので、礼儀は大切にしています。年上だけじゃなく年下の人にも。人によって対応を変える人って信用できないので。それと、これは僕だけかもしれないけど、仲よくなりたい人がいれば、その人のことを好きになるようにしてるんです。好きになると、会ったときに瞳孔の開き方が違うと思うんですよね(笑)。

浪本

自分から汗をかくことです。たとえば誰かに仕事をお願いするときでも、相手にまかせっきりじゃなくて、声をかけた自分自身も一緒に汗をかくようにしています。

司会

「このクリ博」の開催期間に前後して、実際、3つのグループがイベント前後に立ち上がっています。それぞれどんなグループなんですか?

真柴

私たちがコーディネイターをさせてもらった第3クールの「大阪名物★広辞苑」から、有志のメンバーが集まり活動を続けることになったんです。展示のテーマが“2045年の大阪名物”だったのですが、どうせなら2045年まで本気で活動せぇへん?という提案があって。今後はSNSなどを使っていろいろな組織とゆるくつながっていけたらいいなと。ガンガン売り込みにいくとかじゃなくってあくまで楽みながら、展示していたような架空の商品が実現できればいいなと思ってます。

芦谷

今回のコーディネイターでもある浪本さん、藤井さんを含めた3人で、去年の9月に「関西ブランディングデザイン協会」を立ち上げました。ミッションは、デザインを使って企業価値を高めていくこと。関西のメーカーさんと仕事をすると、技術の高さに驚かさせるんです。彼らのすごさをもっと広めていきたい。関西でとはいわず、将来はインターナショナルにブランディングを展開するのが目標です。とりあえず、来年のミラノサローネに出店しようよなんて話してるんですけど(笑)。

西村

僕達も「このクリ博」で生まれたクリエイターユニット「おてがみten」での活動を続けていきます。高いクオリティを持った職人さんやクリエイターさんにスポットを当てて、技術や作品を発信していく場を企業と一緒に作っていく。そこで新しい商品が生まれたりしたら最高ですよね。今後は定期的に企画展やセミナーを開催していく予定です。

司会

今後、ネットワーキングを使ってどういう事業展開をしたいと考えてますか?(抜粋)

杉山

今回のイベントで得たネットワークを今後の仕事にもプライベートにも活用していきたい。

西村

企業、クリエイターさんを問わず、自分が先頭に立っていろいろな人を巻き込んでいきたいと思っています。

芦谷

自分のことは自分でわからなので、客観的な意見をくれる事業パートナーは貴重な存在。違う考えを持つ人たちと仕事して、これまで以上にいいモノを作っていきたい。

浪本

声がかかるような状態をつくっていきたい。売り込みをするということではなく、パワフルで魅力あるチームが作れたら、おのずと声がかかると思うんです。機能するネットワークづくりですね。

このクリ博に関わらず、ネットワーキングなんてめんどくさいと思ったんです。それが今回、実際にイベントを企画してみて、想像以上に多くの人に出会えたし、新しい団体まで発足させることができた。結果的にやってよかったと思ってます。

真柴

今すぐ新しい事業を、とは考えていませんが、今回のイベントを通じてかけがえのない仲間ができました。この絆を楽しむことを前提に、何か仕掛けていければいいですね。

廣瀬

「このクリ博」をきっかけに、この街にはすごく高いポテンシャルを持つ人がたくさんいるんだと知った。みんなで一緒に自己発信を続けていけば、東京や世界にも通用すると思っているんです。

おわりに

トークセッションの終盤、あるスピーカーからメビックの堂野所長にアドリブの質問が。「堂野さんは、何のためにこういうイベントをサポートしているのですか?」

堂野所長は驚きつつこう答えました。

「それはもう、この街のクリエイターさんのためです。今回のようなイベントを続けることで、この街の10年後、20年後が変わればいいなと。今日のみなさんの意見を聞く限りでは、手ごたえのようなものを感じました。やってよかった、本当にそう思います」

公開:2008年03月24日
取材:プレス・サリサリコーポレーション

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