


第2クールは「デザインとつくる現場展」。デザイナーと製造現場の人々がコラボレーションし、双方の持つ知識や技術が結集した作品が並びました。
初日の出展クリエイターたちによるトークセッションでも、デザインする側とつくる側、それぞれの「モノづくり」に対する熱い思いが語られました。
2007年10月16日(火)18:30〜21:30
ミーティング 18:30〜20:00
交流会 20:00〜21:30



今回の「デザインとつくる現場展」は、「デザイナーとファクトリー(製造業)の方々との交流」を中心に企画しました。これは、私と一緒にプロデューサーを務めてくださったランデザインの浪本さんのたっての願いでもありましたよね。
ただの「デザイナー展」でなく、モノを製造する現場の技術を知った上で、デザイナーがデザインするという試みで展覧会を企画しました。デザイナー側と製造の現場側、双方向からの提案がうまく組み合わさって、有意義な制作ができたと思っています。
デザインをするのは私たちデザイナーですが、それを“製品”に変えていくのは製造するファクトリーの技術や力が必要です。デザイナーは、製造が可能かどうかを考えず好き勝手にデザインしてしまうことが多いですが、それを必死になって製品化してくださる方々がいるおかげで、世の中にクリエイティブでおもしろいモノが生まれてくるんだと考えています。
今回の展示には多くのおもしろい作品がありますが、今日を迎えるまでに出展者のみなさんが色々なご苦労をされたと聞いています。そこで、作品ができあがるまでの過程や苦労したエピソードなどをうかがいたいと思います。
コラボレーションされたアヤデザインの重さんとiSenseの下平さんは、いかがでしょう?
展示会といえば“芳名帳”なので、WEBとシステムを使って「デジタル芳名帳」を作りました。苦労した点は、制作期間が短かったところです。
私は芳名帳のシステムを担当しました。今回はMacのSafariというブラウザに対応するシステムをつくらなければならなかったので、そこに苦労しました。普段は一般企業さんを相手に仕事をしているので、Mac OSにあまり慣れていないんです……。
三木さんは、いかがでしょう。
今回はトムソンファクトリーさんとコラボレーションして、壁面に飾ってあるB全サイズのポスターと小型のグラフィックを数点出展しました。最近はコンセプトをしっかり立ててガチガチに固めたものより「意味はわからないけれどなんかおもしろい」というものがウケる「気分の時代」だと感じているので、そんな「なんかおもしろい」が伝わるトムソンファクトリーさんの広告をつくりました。ただ穴をあけるだけでなく穴に色々な仕掛けを組み込んだので、見る人が楽しんでくれる作品になったと思います。
展示場の入り口にあるパテーションをつくってくださったピノデザインの松橋さんとテン工業の岩本さん、お話を聞かせてください。
あのパテーション、実は工業用の養生シートでつくられたそうですね。デザインが入るとあんなに素敵になるなんて、感動しました。
ありがとうございます。素材はテン工業さんにご提案いただいて、それをもとにデザインしました。
苦労したのは、パテーションのパネルの色が限られていたことです。あとはプリントしたものが想像していたより大きかったので、つくりなおしたことが大変でした。
パテーションを出力された岩本さんは、普段からああいう大きなものを扱っていらっしゃるんですよね。
はい。ショッピングセンターの天井にはりつける大型のプリント等を扱っています。今回は、工業用の材料をかなり素敵にデザインしていただいてとてもうれしいです。
松橋さんがお話されていましたが、大きなモノをつくるとき実物を見てみないとスケール感がつかめないですよね。そういった部分を、普段どのように判断されているんでしょうか。
その部分こそ、クリエイターさんに助けていただいているところじゃないかと思います。


では、3Dの加工をしてくださったクリスタル・マジック・ジャパンの加藤さんはいかがですか? あの製品はどんな工程でできるんでしょう。
3Dのデータをもとに、クリスタルガラスの中に細かいドットをほどこして製品をつくります。
苦労したことは、やはり納期が短かったことです。コラボレーションしたREGさんにいただいたキャラクターのデータを、当社のモデラーが一日で仕上げなければ間に合わなかったんです。
みなさん本当に短い納期の中で、いい作品をつくっていただいて感謝しています。
壁紙の素材を使った貼り箱を出展されたデザイナーズフリーの坂口さんと、村上紙器工業所の村上さんはいかがですか。
基本的に壁紙用のデザインは立体の製品になることがないのですが、今回は立体化されたイメージで凹凸も考えなければなりませんでした。箱に貼ることになるので、壁紙の凹凸をいつもより浅くデザインしなければならず、そこが大変でしたね。最終的にはラメを使って光を反射させることで、見る角度によって素材の奥行きを出す工夫をしました。
“箱”は立体なので、空間的な感覚を持っていないとつくれないんですよね。壁紙を貼り箱にするときに、どういった部分に特に注意されたんでしょうか?
箱は紙製ですが壁紙はビニールなどでできているので、厚みも堅さもまったく違います。だから物理的にできるかどうかが心配でした。また、貼り箱の場合は最初から立体物として仕上げますが、壁紙は平面なので制限がかなり出てきたんです。特に角の部分が浮いてしまったら格好悪いので、とにかく角が浮かないように壁紙をつくってくださいと坂口さんにお願いしました。
壁紙の試作品があがったとき、意外にスッキリと箱に貼ることができたので安心しました。ただ、どうしても素材の堅さが残ってしまうので、本のように箱に表紙をつけて開閉ができる仕組みに切り替えました。
邦文社さんとコラボレーションして「ラグジュアリーな名刺」をデザインした石井さん、デザインをするときに難しかった点はありますか?
スワロフスキーや高級な紙を使ったので、商品にした場合の単価が上がってしまうところです。なので、レセプションパーティなどの特別なシチュエーションで、相手にインパクトを与えるためのツールとして使ってもらうことをイメージしました。
邦文社さんには普段から印刷でお世話になっていて、今回のような難しいオーダーでも受けていただき、素材選びから一緒になって手伝ってくださるのでとても感謝しています。
金山さんが名刺作りで一番苦労された点はどこでしょう。
白い紙ではなく色付の紙にプリントしました。だからどうしても色がイメージ通りに出なくて、調整するのに苦労しました。
プリンクスの堀川さんも長い間印刷に関わっていらっしゃいますが、デザイナーからの複雑な要望が出てきた場合、どう対処されていらっしゃるんでしょうか。
とにかくやってみなければわからないですが、やはり色の出し方は難しいと感じています。
特に、紙の色が安定しないクラフト紙に多色刷りする場合や、アルミ蒸着の金紙や銀紙にプリントする場合はとても気を遣います。きれいに色を出すのが大変難しいのですが、そこは長年の経験による“勘”で判断するしかないんです。


プロダクトデザイナーの渡さんは、普段からプロダクトの“最終形”をどのようにイメージされているんでしょうか?
最終形の正確な予測はできません。いくら3次元が普及しているといっても、製品になるまでには色々な工程で多くの人が関わってくるので、最初のイメージ通りになることはほとんどないです。
でも、私はまだまだ経験が浅いですが、経験を重ねるごとにどんな人がどんな工程で関わってくるのかを予想してデザインできるようになってきます。
REGの池田さんは今回樹脂やクリスタルを素材に選ばれましたが、どんな基準で素材を選ばれたのでしょう。
普段から自分が「おもしろい」と思った素材を使っています。今回の素材はもともと完成されていたので、さらにみんながやりたがらない面倒くさいことを取り入れて「困らせてやろう」という思いがありました(笑) グラフィックデザイナーだから平面というこだわりもなくて、素材を見てから「何をつくったらおもしろいかな」と考えることが多かったです。
次はトムソンファクトリーの小川さんにお聞きします。お仕事で色々なデザイナーとお付き合いされていらっしゃいますが、「また一緒に仕事したい」と思えるデザイナーとそうでないデザイナーの見分け方はありますか?
オフセット印刷が多いので、きちんとした完全データをいただける人がいいです。完全データの基準は、アウトラインとトンボ、そして塗りたしがあるというあたりまえのことですが、特に若いデザイナーさんなど、意外とできていない人も多いです。
でもこうして今日までの道のりを振り返ると、デザイナーと製作者たちの信頼と集中力でなんとか作品づくりを乗り切ることができました。会場のみなさんにもじっくり作品を見ていただいて、色々な技術とデザインを楽しんで味わっていただきたいと思います。
そうですね。今回の“モノ作り”を通して、デザイナーと製作者がじっくり向かい合うことができたので、意義のある展示になったと思います。
取材:野上 智美氏 真柴 マキ氏:組立通信・天満スイッち編集室(浪花町)
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