クリエイティブサロン Vol.113 秋元友彦氏

自分が楽しんでいたら、いつのまにか好きなことが仕事になっていたんです。

多彩な事業を展開するロフトワークの社員でありながら、合同会社ワンダーフォーブリッジの代表を務める秋元氏。
「いつも楽しそう」
「どうしたらそんな楽しい仕事ばかりできるの?」
そう言われることが多いという。
実際、手がけているのは、全国の酒蔵を巡る「だめにんげん祭り」や廃業した店舗を使ってオリンピックの公式スナックを目指す取組みなど、誰もが「何それ。ちょっと詳しく聞かせてよ」と言いたくなるユニークなプロジェクトばかり。
「自分が楽しむことを軸に仕事をしていたらいつのまにか好きなことが仕事になっていた」そう語る秋元氏に、ロフトワークでの働き方やこれまで関わったプロジェクトについてじっくり語ってもらった。

秋元友彦氏

「地域」×「アート」を成功に導くスキームを学んだ
学生時代。

まずは簡単な自己紹介からスタート。東京で活動している秋元氏だが生まれは大阪・岸和田市。高校を卒業後、キャリアのスタートは建築の世界だった。きっかけは京都の町家だったという。「すごく暑い日に中に入るとひんやりと涼しくて、しかも外の喧噪が一瞬で消えて…。こんな空間が何百年も昔から残っていることに衝撃を受けました。古い建物を残してそれを新しい価値に変えていく仕事がしたいと思ったんです」。建築会社に入社するも、圧倒的な勉強不足を感じ、千葉大学の建築学部へ進学。卒業後に東京の建築事務所に就職する。すでに29歳になっていた。
大学時代から興味があったのは「地域」と「アート」。所属していた研究室が新潟県の芸術祭「越後妻有アートトリエンナーレ」に出品した際、アートを介すことでこれだけの人が地域に集まるということに衝撃を受けた。その後、「セントラルイースト」という「designersblock」から派生したイベントにインターンとして参加。スタッフのほとんどがインターンで運営しているイベントだけに、学生ながら直接アーティストとやりとりをしたり、すべてを一から作り上げるという貴重な経験をした。そこでほぼ廃墟となった古いビルにアートを挿入することで建物が再生するというスキームが生まれる様子を間近で体感しながら、「地域」×「アート」そしてイベント企画や運営といった、秋元氏の現在の活動の核ができていく。


学生時代、インターンとして参加した「セントラルイースト」

地域とものづくりを繋げる「IID 世田谷ものづくり学校」で
1日で5000人を動員するイベントを企画。

建築事務所を2年で退職し、30歳になった秋元氏は「IID 世田谷ものづくり学校」にボランティアで携わり、組織が株式会社化したタイミングで入社する。世田谷ものづくり学校とは廃校になった中学校を民間企業が世田谷区から借り上げ、再生活用するというプロジェクトで、秋元氏はワークショップの企画から携わり、後に広報、マネジメント全般を担当するようになった。
元々教室があったところをクリエイターのオフィスとして使用し、パブリックスペースでは、ワークショップや展示会などイベントを開催。夏休みには「キッズワークショップ」と銘打ち、毎週子供たちがクリエイターと一緒に本格的なモノづくりを行ったり、海外の映画を仕入れて体育館で上映したり、場を積極的にパブリックに開いていくことで、地域とものづくりを繋げていった。中には1日で来場数が5000人を記録したイベントもある。企画はすべて秋元氏を含むわずか4名のスタッフで手がけた。
「元々は古い建物が街に与える影響に興味がありましたが、ものづくり学校では人と繋がることによって価値が生まれるということを学び、大きな転機になりました。正直それまでは人との関わりなどを重要視しないタイプだったんですが、今は人と関わることしかやってないんです。その素地は間違いなくここで培ったと思います」
次に紹介されたのは「三宿四二○商店会」。廃校だけで街全体を盛り上げるのは難しいと考え、当時のスタッフと共に商店街を立ち上げ、商店会を中心とするさまざまな企画を立ち上げた。中でも日本中のおいしいパン屋が出店する「世田谷パン祭り」は、初回から7,000人を集客し、5回目となる昨年は25,000人が来場。大規模なイベントに成長した。
この企画で最も注力したのはクリエイティブと体験。ロゴやパンフレットなどの各種ツールはすべて信頼のおけるデザイナーに依頼しブランディングを徹底。それは他のすべてのプロジェクトにも共通している。


「IID 世田谷ものづくり学校」のイベント企画は、秋元氏を含むわずか4名のスタッフが手がけていた

「だめにんげん祭り」「世界ふぐ協会」。
さまざまな経験を活かして“すきなこと”を仕事に。

アートイベント「二子玉川ビエンナーレ」や子供たちがデザインやものづくりに触れられる「LLPスケット」など、ものづくり学校時代にさまざまなプロジェクトを経験した秋元氏。そこで学んだスキームを活かして自分の好きなことを事業化していく。
秋元氏の好きなこと。それが「食べること」と「飲むこと」だ。
関西育ちでふぐが大好きな秋元氏は、世界初のふぐの消費者団体に加入。ただふぐを食べるだけの組織にも関わらず「世界ふぐ協会」と名付け、産地に「東京でPRイベントを開催するという条件でふぐそのものを協賛してほしい」と直談判。産地のふぐの連盟や協会とコラボしたり、取り扱い店舗を自分たちで開拓し、東京と産地を繋ぐなど精力的な活動で、今では一般社団法人化を検討するまでに話が広がっている。この取り組みのすごいところは「ふぐが食べたい」という秋元氏の個人的な欲求が伝染し、周りを巻き込み、楽しませながら関わったすべての人がなんらかの恩恵を受けていることだろう。
さらに、日本酒が好きな秋元氏は「だめにんげん祭り」という全国の酒蔵を巡るツアーを企画。24時間ずっと酒気帯びという一見本当に「だめにんげん」な感じだが、きっかけは3.11。自分たちにできることはないかと考えたことからスタートした。さらに日本酒は土地の陶器やガラス工芸、神事とも繋がっているためその地域の文化や産業に触れること、また日本酒を飲む人口が減り、つぶれていく酒蔵の支援もこのイベントの背景にある。ここでも自分の好きなものを使って、地域や人の役に立っているのだ。
このイベントに関してもロゴデザインや「だめにんげん祭り」という参加へのハードルを下げるツアー名など秀逸なブランディングを行い、今では募集するとすぐに定員が埋まるほどの人気企画になっている。

「なにができるかわからないから、面白い」
ロフトワークとの出会い。

その後、秋元氏はものづくり学校を卒業。何か地域に関わる仕事がしたいと考えていたとき、ロフトワークに出会う。「最初に代表の林と話したとき、この人と仕事がしたい!と思いました。あと、ロフトワークってITとかカフェとかいろんなことをやっていて、この会社に入ったときに自分がどんな仕事をするかイメージができなかったんです。だからこそ、いいなって。わかんないから面白そうだって思ったんです」
そんな秋元氏の名刺の部署名は「無所属」。100名を超える組織には明確にディビジョンがあるが、秋元氏はそこを横断しながらときにはプロデューサーとしてプロジェクトに入り、ときにはプロジェクトマネージャーとして全体を仕切るなど柔軟な立場で現場を動かしている。

東京に住む日本人として、「日本での豊かな滞在体験」
を外国人観光客に提供したい。

また現在は、オリンピックが4年後に迫り海外からの観光客が増え続ける中、東京で豊かな滞在体験を提供する「場所と物語」というNPOの立ち上げにも携わっている。
東京都とタッグを組み、「滞在はするけど宿泊はしない」--たとえば銭湯をステージにしたアートプログラムなど、さまざまな可能性を模索中だ。
また、日本の文化を伝えるスポットとして、廃業したスナックを工芸作家の器やガラス作家の食器などを揃えるギャラリー&スナックとして活用し、オリンピック公式スナックを目指すなどオリンピックを4年後に控える東京だからこその、新たな取り組みもはじめている。
「これらはすべて、メンバー全員が仕事という形ではなく、今、東京にいる人間ができる事としてチャレンジしていているので、本当におもしろい。いろいろプランを練り上げている最中ですが楽しくて仕方ないんです」

最後に、いろいろなことを同時進行で手がけながらも中途半端にさせないためのコツは「チームワーク」と語った秋元氏。これまで多くのプロジェクトを手がけ、継続しているものもあれば、力不足でなくなってしまったものもあるという。「振り返ってみると、あのときああしていればと思うこともありますが、当時の自分ではそれが限界だったんだと思います。そういうことも含めて、今の自分があるし、続いているプロジェクトに関しては楽しいだけではなくて、お金も稼げているというのが大きいですね」

イベント概要

クリエイティブサロン Vol.113 秋元友彦氏
とにかく自分が楽しむ 好きな事を仕事にする

「本当にいつも楽しそうですよね」
「どうしたら、そんな楽しい仕事ばかりできるんですか」
これ、よく言われるんです。
でも、世の中そんなに楽しい事ばかりではないですよね。
愚痴だって言いたいし、めんどうくさい事も多いし。
ただ、それをしんどいなぁ、めんどくさいなぁと言う顔をして仕事をしていたら自分も周りの人も嫌になっちゃいますよね。
とにかく自分が楽しむ事を軸に仕事をしていたら、いつの間にか好きな事が仕事になっていた現状までの過程を、事例を交えてわかりやすくお話しできたらと思っています。

開催日時

2016年10月6日(木)19:30〜21:00

会場

メビック扇町 ロビー

秋元友彦氏(あきもと ともひこ)

1977年岸和田生まれ東京在住。
株式会社ロフトワーク。Wonder for Bridge.LLC 共同代表。
建築設計事務所を経て廃校活用施設「IID 世田谷ものづくり学校」の運営会社で企画室長・広報を務める。2014年にIIDを卒業、同年4月よりクリエイティブエージェンシー「株式会社ロフトワーク」に入社。経済産業省を中心に行政、地域に関連する業務を担当。
他にも、イベント・ワークショップ等の企画運営を手がける「LLPスケット」代表。ふぐ食文化を発信する「世界ふぐ協会」理事。日本酒を媒介に東京と地域のコミュニティを繋ぐ「だめにんげん祭り」幹部。「メビック扇町」のエリアサポーター。JAPAN BRANDに携わるあらゆる人々に向けたオープンプラットホーム「JAPAN BRAND FESTIVAL」代表など、数多くのコミュニティに関わる。「世田谷パン祭り」や「二子玉川ビエンナーレ」をはじめ、イベントの立上げや実行委員としての活動も行っている。
株式会社ロフトワーク

公開

2016年12月14日(水)

取材・文

N.Plus 和谷尚美氏

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