
大阪市内で活動するクリエイター同士が互いに知り合い、ノウハウを交換することを目的として開催する「クリエイティブ・クラスター・ミーティング」。前回のミーティングから、会場を各クリエーターの事務所に移し、業種や地域にこだわらず、様々なクリエイティブジャンルの方々に、ご参加いただくことになりました。今回、ミーティングの会場となったのは、天満橋にある『株式会社ファイコム』さん。スピーカー8名にオブザーバーを加え、開催されたミーティング。お互いのスキルアップに繋がる有意義な話し合いができたでしょうか。
2009年10月14日(水)18:30〜21:30

純日本系と外資系の広告代理店で営業に携わる中で、各種企業のコミュニケーション活動をプロデュース。‘05年に独立し、中小企業のブランド力向上を目指して、“自社の想いをちゃんと伝えられる”会社を一社でも多く作り出すためのコンサルティング&セミナー事業を大阪を拠点に展開中。

龍谷大学を卒業後、旅行代理店の法人営業、工業経済系の広告代理店営業を経験する。その後、様々な業務がパソコンへ移行する中、新しいコミュニケーション手段のwebに興味を持ち、1998年にグラフィックソフト会社の子会社タワーズを買収。ファイコムに社名を変更し、代表取締役に就任。現在に至る。携わった主な仕事は、「b-platz press」、「関西どっとコム」、「江崎グリコポッキー友の会」など。

TV出演や自転車での韓国縦断など、様々なことに挑戦した高校時代を経て、専門学校へ入学。卒業後、滋慶学園グループのVISTAARTSに入社し、多種多様の映像制作を行う。7年勤務した後、現勤務先の社長に出会い、GUAMに移住。1年間、GUAM支店の立ち上げを経験し、帰国した後、日本国内で社長と映像制作の部署を設立する。7年間で10支店13セクションまで成長をとげる。現在はUSJ内の映像、関西空港のデジタルサイネージなどの制作を担当。

1985年、産経新聞社に入社。神戸支局(現・神戸総局)、社会部(大阪本社)、文化部(同)の記者、デスクを務め、産経デジタル(東京)などを経て、2007年11月から大阪本社総合企画室に。デジタルメディア担当としてウェブサイト「産経関西」の運営や新聞社の新しいビジネスモデルの模索などに関わっている。

大学、専門学校を卒業後、出版社の編集、デザイン会社のデザイナー、映像製作会社の編集、ディレクターなどを経験。その後、2005年に株式会社ドライブにプランニングディレクターとして入社。現在に至る。

ナローバンド時代(64kbps)より映像配信に携わる。2008年よりイングスグループの一員となり、現在はIP伝送事業にも積極的に取り組んでいる。最近は、音楽関係の仕事にも多く関わり、CDやDVDのプロデュースや音楽イベントの立ち上げ、運営と合わせて、放送の次に来るだろう映像コンテンツへの取り組みも日々増えている。

20代前半はバイクで全国を旅する放浪生活を続け、25歳で好きだった絵の仕事に携わろうと決意。VJ(ヴィジュアルジョッキー)として全国のクラブイベントに出演した後、2002年に独立。現在はWEBや映像制作のディレクター兼デザイナーとして活躍している。VJで培ったセンスや経験を生かした、映像やリッチコンテンツ導入の企画提案が得意。最近では、イベントのプロデュースも手がけている。

イラストレーター。日本児童出版美術家連盟の会員。大阪芸術大学を卒業後、2001年マニフェストギャラリーで初個展を開く。以来、毎年個展を開催。2003年、株式会社ハイベルよりシルクスクリーン版画を発表。2005年には絵本「どうぶつむらのうんどうかい」を出版する。現在は、主に児童書、教科書、絵本、カレンダー等のイラストの制作を手掛ける。

約10年間、ゲームメーカ—のプランナーとしてアーケードゲームの制作に携わった後、フリーのデザイナーとなり、Flashアニメ、ゲームの企画・制作を行う。フジテレビ公式サイト『少年タケシ』のデジタルコミック『浪花実録シリーズ』においては、制作数も 100作を超え、今年9月で連載3年を迎えた。ウリは大阪のローカル色を前面に出したアニメ作りと50本近くの携帯Flashゲームの制作実績。蓄積したノウハウを生かした“ゲーム性の高い”ゲーム制作も行う。
今回も、前回同様、指示カードとクエスチョンカードを用意。指示カードで指名された人、数名が、クエスチョンカードに書かれたテーマに関して、意見を出し合いました。それに加えて、今回からは白紙のワイルドカードが登場。自由なテーマで語るというこのカード、果して使われることはあるのでしょうか。

浅野さんが岩谷さん、鎗山さんを指名し、この3名で「賞」をテーマにトークが始まりました。
最初の質問は「賞」。では、浅野さん、賞についてご自身が思うことを話してください。
僕は、賞なんて必要ないと思いますね。賞を取ったからと言って、その人の技術や感性が素晴らしいという保証にはなりませんし……。それよりは、やっぱり実績を見せたほうがいいかな、と。賞なんか取れなくても、誇れる仕事はたくさんあるはずですから。
なるほど、仕事の世界では賞より実績ということですね。では、実際に賞を取ったという鎗山さん、どうですか?
4年ほど前にフリーになったんですが、当時はアニメーションやゲームの制作をしたいという思いだけで、ツテも何もありませんでした。そこでビジネスの足がかりになればと、コンテストに応募し始めたんです。最初の1年くらいは全然ダメだったんですが、2、3年するとちょこちょこと賞を取れるようになりました。でも、受賞がビジネスに繋がることは一切ありませんでしたね(笑)。名前も広まらないし、仕事も増えない。30万とか50万とか賞金は貰えるんですけど、それだけ。これじゃあダメだと、コンテストに見切りをつけ、メビックのような団体や施設に出向くようにしました。賞を取るよりもローカルな繋がりを強固にした方が、実際の仕事に繋がりやすいんですよね。
国民栄誉賞などのように、人から評価されて貰う賞には魅力を感じますが、自分から応募する賞にはあまり興味がありません。賞って階級を表すバッチみたいなもんじゃないですか。そういうバッチをたくさん並べたい人には重要なのかもしれませんね。

ありがとうございます。ちょっとウォーミングアップも兼ねて、全員にこのテーマで話しを聞いてみましょうか。越智さん、どうですか?
受賞したら映画の制作費がもらえるとか、賞の先に何かご褒美的なものがあれば、応募するのもいいかなぁと思いますけど。仕事としてはどうかなぁ。僕自身はあまり意識してませんね。
僕は、コーヒーショップの「TULLY'S」が開催している絵本コンテストで、ストーリー賞を頂き、手がけた絵本を出版してもらったことがあります。……が、鎗山さんと一緒で、それが直接ビジネスに繋がることはありませんでした。でも、コンテストへの参加が無駄だったとは思っていません。絵本の出版が自分の実績にもなるし、それが武器として使えることもあると思うので。
受賞が実績に繋がることもあるんですね。貰えるものは貰ってた方がいい、と……。
そうですね。イラストレーターの仕事は、忙しいときと暇なときと波がありますから、空いた時間に、コンテストなどに応募する作品を作ったりしています。
ありがとうございます。では、岡崎さんはどうですか?
新聞業界は賞が好きですから、いろいろありますけど、僕の立場から言うと賞は取るというより、取材するイメージが強いですね。受賞ってのは取材のきっかけになりますから。
廣瀬さんは、賞なんか興味ないんじゃないですか?
どこそこに所属しないと参加すらできない、みたいな、狭い範囲で競い合っている賞には、確かに興味がないですね。でも、自分自身の付加価値を上げる手段の1つとして、受賞を狙う方法はありかもしれません。後は、自分の作品や技術が、世の中のどの立ち位置にあるのか、判断する材料としても使えるんじゃないかな。僕自身は、積極的に賞を取ろうとは思いませんが、賞自体を否定することもないですね。
僕は営業なんで、自分が賞を取るってことはありませんけど、懇意にしているクリエイターさんやデザイナーさんが賞を取られると嬉しいですね。そのことで話題が広がることもありますし。
わかりました。では、次の質問に移りましょうか。

見杉さん、越智さん、浅野さんの順に、ブランディングについて話していただきました。
ブランディングという言葉を最近知ったばかりなので、わからないというのが正直な意見ですが……。自分自身で言えば、イラストレーターとしての名前を売るための試行錯誤がブランディングかな、と思いますね。
3、4年前くらいから会社の事業として他社のブランディングデザインを手がけていますが、実感しているのは、言葉として抽象的だなぁと言うことですかね。こちらとしては、相手の良さを引き出して、発信していくってことを中心に取り組んでいますが……。
確かに、今までたくさんのクリエイターさんに会ってきましたが、ブランディングとは? と尋ねて、端的にコレだ! と答えられた人って誰一人いないんですよね。ブランドを作っているのに、なぜ、ブランディングについて答えられないのか。ちょっと皆さんにプレッシャーをかけさせていただきます。浅野さんから、あなたにとってのブランディングとは何か、一言で答えてください。
一言で言うと、個性ですかね。
それはなぜですか?
相手から何かを引き出したり、強みを浮き彫りにしたりするのは、詰まるところ、相手の個性を明らかにすることだからです。そうして全面に出てきた個性をデザインしたり、商品にしたり、広告展開で活用していくんだと思うんですよね。
せっかくなんで、これも全員に聞きましょうか。鎗山さん、どうぞ。
実は、ブランディングって言葉を、今日はじめて知りました(笑)。なので、それがどういうことなのか今は答えられません。僕にとってのブランディングはコレだと言えるようなものを、これから作っていこうと思います。
ブランディングとは、無意識の存在感でしょうか。
それはどういうことでしょうか?
例えば、先ほどの質問テーマ「賞」と聞いて、私はファイコムさんの近所にある象印さんを思い浮かべました。古い話なんですけど、1970年代の終わりから90年代の初めまで同社が提供していたテレビのクイズ番組に“象印賞”っていうのがありましたから。その次に、「ブランド」と聞いて、また象印さんを思い浮かべたんです。誰が何を言ったわけでもないのに、こうして無意識に脳裏に浮かぶということは、その会社が持つブランド力の浸透が凄いからなのかな、と。そんな存在に自社を持っていくことがブランディングなのかなと思いましたね。
シンボル化すること、かな。誰が見ても「これはこの会社だ」と、わかるような共通の記号を作るってのがブランディングってことじゃないですかね。ロゴを作ったり、HPのカラーを統一したり、方法はいろいろあると思いますけど。
確かに、ブランディングしていく上で、ブランドコンセプトがいくつもあるなんてことありえないですもんね。じゃあ、木下さん。
一言で言えば、カラーでしょうか。お客さんと話していると、まずイメージカラーが思い浮かぶんですよ。活発な会社だから赤、とかね。その色合いを我々が形にしてあげるってことがブランディングだと思いますね。
ブランディングする立場から言うと、その会社のことを思って手間暇かけることかな、と。ブランドを作るには、よく知ってあげないとダメなんで……。
ブランディングひとつとっても、それぞれの意見があるんですね。今回の会は、質問の答えを見つけるというものでもないので、次の質問に移りたいと思います。

木下さんが、エサキさんとオブザーバーを指名し、ワイルドカードをチョイスしました。
自分なりによくできたと思っている提案を、クライアントに「全然違う」と突っぱねられ、要望通りに修正していくと、最終的に元に戻ったなんてことないですか? 僕は、そういう経験が多く、どうせ元に戻るなら、と我を通しすぎて、長年付き合っていたクライアントに切られてしまうことがありました。このような場合、自分を殺してもクライアントを大事にするのか。それともクライアントをうまく教育していくのか。はたまた違う解決方法があるのか。皆さんの意見を聞かせてください。
僕も若い頃は、クライアントに振り回されてばかりいました。でも、年齢を重ねるうちに、クライアントをうまく操れるようになってきたんです。何がきっかけなのかと考えたところ、自分の価値を高める努力をしたことが良かったのかな、と思い至りました。それまではどんな仕事でも請けていましたが、自分のステージを上げるために、決まった分野のことしか受けなくなったんです。そうすることで、「あの話なら彼に聞け」と言われるようになり、受け手としての立場も変わってきました。結局は、自分自身の立ち位置次第かな、と。
僕の場合、ブランディングの対象物は、クライアントの物であるという考えを捨てますね。クライアントの所有物だと思うと、どうしてもお伺いを立ててしまう形になるので。この対象物は社会に依存したものであって、クライアントはたまたまこれを経営しているだけ。そして、僕はプロとして同じ立場でこの対象物を羽ばたかせていこうと思っています、と、それを最初に言ってしまいます。
それを理解してくれないクライアントの場合はどうしますか? それでも自分のペースで話しを通すのか、それとも、折れるのか。
折れはしませんね。女性には女性の、頑固社長には頑固社長の、それぞれに合わせた話し方を身につけているので、なんとしてでも先の条件を理解してもらいます。
その後、10分間の休憩を挟み、4つ目の質問に移りました。
岡崎さんが廣瀬さん、鎗山さん、オブザーバー1名を選びました。
本物のクリエイターってのは、0から1を作る人のことを言うのか、この業界で働き、クリエイティブな仕事をしてる人を総称して言うのか。はたまた、ライター、カメラマン、デザイナーに限らず、お寿司屋さんなど、お客さんにサービスを提供している人のことを含めて言うのか……。僕の中では、クリエイターの定義が定まっていませんね。どうとでも捉えられるような気がします。
では、廣瀬さんは、ご自身のことをクリエイターだと思っていますか?
いえ。クリエイティブな仕事をしている人、かな(笑)。
僕の場合は、アニメとゲームを0から作っているので、一般的にはクリエイターなのかもしれませんが、自分自身ではあまりクリエイターだと思っていません。そう言われるのも、好きじゃありませんし。たまたま、フリーで働く上で、アニメやゲームの制作が近道だったというだけで……。
私も廣瀬さんや鎗山さんと同じように、クリエイターだと思って仕事はしていませんね。文章を書くのも、どれだけ単語を知っているかがポイントになってくるだけで、1から作っているという感覚はありませんし……。
クリエイターと言われているのに、クリエイターの意識がないというのは珍しいですね(笑)。いろんな職業があるなかでも、そんな風に思っているのは我々だけじゃないでしょうか。

昔は、もっと作品の雰囲気や仕上がりが顧客満足に繋がっていたと思うんですが、最近のデジタルやインターネットの商売は、どれだけアクセスされたかが大事になっていて、面白い仕事が減りましたね。クライアントの基準も数字=顧客満足に変わってきているし。
TVも視聴率が重視されてますもんね。浅野さんが言うように、そればかりに左右されると、面白いものがなくなっていく気がします。特に、最近は女性目線のTV番組が多くなっていて、僕なんか見ててもつまらないですもん。
岩谷さんはどうですか?
確かに、最近、数字以外で喜びを表すことが減っていますね。皆が皆、目先の数字に必死になっている。それなら望まれたものをタダでやって提供すれば、いちばん満足度は高くなるに決まってますけど、それは違いますよね。数字以外の満足度の方が逆に大切なのかなぁと思いますね。
営業をやってらっしゃると、数字ってのは切っても切れないものだと思いますが、木下さん、数字以外の顧客満足ってありますかね?
いや、やっぱり最後は数字だと思います。(苦笑)
良いか悪いかの判断はクライアントからしてみれば、数字は最終的な判断材料になっていると思います。
顧客満足というのは、結果ではなくて、その過程を言うのかな、と僕は思いますね。「こんな内容にしましょう」と企画を上げ、一緒になって試行錯誤しているだけで、盛り上がれる瞬間ってありますよね。僕だけじゃなくて、社長さんも乗り気になってくれてる、みたいな。その時点で、社長さんはこの企画の進行に満足してくれているわけですよ。そこに結果、数字が伴えば、もっといいんでしょうけど。
岩谷さんが、両隣の見杉さん、木下さんを指名しました。
うわぁ、きついテーマやなぁ(笑)。いろんな取り方がありますよねぇ……。じゃあ、見杉さんから行きましょうか。
僕は、元々、建築パースを制作している会社で働いていて、今もその場所を借りてイラストを描いているんですが、そこの社長がいつも「仕事をもらうには人に会え」と言ってるんですね。技術なんかどうでもいい。その人が何を求めているのか自分の中で消化し、それを絵にできるのが一流のパース屋だって。僕も社長と同じで、仕事をしていく以上、コミュニケーションは欠かせないなぁと考えています。イラストレーターやパース屋って寡黙な職人タイプの人が多いんですけど、それだけじゃいい仕事をすることはできないな、と。
僕、こう見えてすごく人見知りなんですけど、海外に行くと、そんなことお構いなしにいろんな人が声をかけてくるんですよ。でも、日本ではそんなこと滅多にないでしょ。僕も含めてですけど、日本人はコミュニケーション下手なんです。その最たるものが、コンビニエンスストア。レジでのやり取りなんて店員も客も一切目を見てませんもんね。そこで、僕、最近、挑戦していることがあるんです。それは、レジで店員の目を見て、笑顔で「ありがとう!」と言うこと。そういう小さな努力が、少しずつ広まっていけば、いずれは日本のコミュニケーションも円滑になっていくはずなんですよ。このコンビニでのコミュニケーショントレーニング、皆さんもぜひ、やっていただきたい。僕はとりあえず、コンビニに限らず、やたらあちこちの店員に話しかけるようにしています。ヨドバシで客に話しかけて、不審者がられたこともありますけどね(笑)。
私は営業という仕事ですが、営業をしているつもりは全くないです。お客さんとも、会社の人間とも、仕事をお願いしているクリエイターさんとも、コミュニケーションを取っているだけです。このコミュニケーションがなければ、何も生まれませんよね。営業という仕事も、このコミュニケーションが全てだと思います。
結局、こういうミーティングも、コミュニケーションの一種ってことですよね。
キレイにまとめたエサキさんの言葉を最後に、今回のミーティングは終了しました。図らずも難しいテーマが飛び出し、スピーカーの皆さんは頭を悩ませていましたが、その分、十人十色の面白い意見が聞けたと思います。ミーティング中、降っていた雨も終わる頃にはすっかり上がり、それぞれ懇親会の会場へ。浅野さんのお気に入りのお店で終電まで楽しい交流が続きました。
公開:2009年11月16日
取材:プレス・サリサリコーポレーション 國澤 汐氏