クリエイティブ・クラスター・ミーティング Vol.25
2009年2月5日開催

クリエイティブクラスターミーティングとは

ミーティング風景

大阪キタ、天満、扇町、中崎町、南森町界隈で活動するクリエイター同士が互いに知り合い、ノウハウを交換するために開催する「クリエイティブ・クラスター・ミーティング」。今年は少人数制による非公開の座談会という形式をとってきましたが、第25回となる今回は、一般参加もできる公開ミーティングに。50名近い参加者が次々と席を埋めていく様を見ると、今回のミーティングに対する注目度の高さが伺えました。

中小企業×クリエイター
〜異文野ミュニケーションが生み出す新しい可能性〜

中小企業の経営者とクリエイターは、仕事の内容や取り組み方の違いから、互いの考えを理解できず、歩み寄れないと思いがちです。うまくコラボレーションできれば新しい世界が広がるはずなのに、そこには、なかなか埋めることのできない溝があるのです。そこで今回は、その深い溝を埋めるための1つの方法として、中小企業の経営者とクリエイターのみなさんに集まっていただき、互いの胸にわだかまっている思いを本音で語り合っていただきました。BGMにのせて各スピーカーが登場した後、質問と称した自己紹介タイムを経て、話は本題へと進んでいきました。

開催日時

2008年2月5日(木)18:30〜21:30

コーディネーター
  • エサキヨシノリ氏「情熱の学校」校長!&情熱メイキングプロデューサー

    エサキ氏

    純日本系&外資系、両方の広告代理店営業マンとして各種企業のコミュニケーション活動をプロデュース。その後、05年に独立し、中小企業のブランド力向上を通じて、自社の想いをちゃんと伝えられる会社を一社でも多く創りだすためのコンサル&セミナー事業を大阪を拠点に展開中。

スピーカー
  • 和泉 康夫氏「(株)新日本テック」代表取締役

    和泉氏

    大手電気メーカーで開発設計業務を経験後、株式会社新日本テックに入社。携帯電話などの製造に必要な超精密金型や同金型部品の製作を手がける。ダイヤモンドを使用した金型部品や、特許取得の「かす上がり防止レーザー加工」などの独自技術で「微細精密加工の未来を創造する企業」を目指す。

  • 笹尾 恭三氏「(有)こだま製作所」代表取締役

    笹尾氏

    大手自動車メーカーの試作部門で板金溶接作業に従事した後、父親が経営する同社に入社。通常の抵抗溶接の工程では困難とされている、複雑で微細な形状を持つ部品の溶接加工において、独自の手法を開発。現在、同社代表取締役の責務を果たしながら、大阪の製造業活性化にも注力している。

  • 松岡 栄和氏「(株)松岡工芸」代表取締役

    松岡氏

    商業専門学校を卒業し、バンクーバーに留学。帰国後、父親の経営する会社に入社。31歳のとき、代表となる。現在、商業施設などのディスプレイ製作に力を入れている。魅力のあるデザイナーと楽しく仕事ができるよう活動中。

  • 村上 誠氏「村上紙器工業所」代表

    村上氏

    工業高校電気科を卒業後、NHK大阪放送局技術部へ入局、地上波、放送衛星の送信技術業務に従事する。同局退職後、保育士、カナダ在住を経て、同業の貼箱製造会社で修業。その後家業に戻り、2005年より村上紙器工業所代表となる。現在は、クリエイターとの展示会や商品開発、情報発信を進める。

  • 吉持 剛志氏「吉持製作所」代表

    吉持氏

    藤井寺工業高校を卒業後、父親が経営する工場に入社。キャリア40年のヘラ絞り職人。人脈を広げるために交流会への参加やセミナーの受講、独力でウェブサイトを立ち上げるなどアクティブに営業活動を展開している。生野区の異業種交流会「フォーラム・アイ」の代表でもある。

  • 河本 格子氏「日刊工業新聞社」広告局広告部

    河本氏

    2001年日刊工業新聞社に入社。広告局広告部に所属する。遷移バイオ、塗料などの業界を担当後、現在は多くの中小企業を相手に働きかける毎日。新聞での業界特集の企画や提案、企業への個別提案、広告原稿の打ち合わせなどが主な仕事。

  • 長尾 朋成氏「(株)ゼックエンタープライズ」代表取締役

    長尾氏

    大阪府立工業高専を卒業後、(株)ゼック・エンタープライズを設立。セールスプロモーションに関するコンサルティング・プランニングを手がける。企業顧問や役員を含め、プロジェクトマネージャーを多数兼任。現在、経営をセールスプロモーションの観点で総合的にサポートするゼック・グループを率いる。

    「(株)ゼックエンタープライズ」扇町クリエイティブクラスター登録ページ

  • 池田 樂水氏「(株)REG」クリエイティブ・ディレクター

    池田氏

    グラフィックデザイン事務所を経て、2001年よりフリーのデザイナーとして活動。同時にオブジェブランドを作り、アパレルショップなどでの販売をスタートする。2007年、レグ設立。ディレクターとして、ポスターやカタログの制作、ショッププランニング、商品企画などに携わる。

    「(株)REG」扇町クリエイティブクラスター登録ページ

  • 松本 守永氏「(株)ビルダーブーフ

    松本氏

    人がごちゃごちゃと集まった雑多なエネルギーが好き。職人さんのゴツゴツとした手が好き。モノ作りの取材に出かけては、仕事風景や商品、製品に心を躍らせる。作り手の思いを全身で受け止め、読者への橋渡しができるライターを目指す。

    「(株)ビルダーブーフ」扇町クリエイティブクラスター登録ページ

  • 中村 拓哉氏「グラフィックパワー(株)」代表取締役

    中村氏

    グラフィックデザインやパッケージデザイン、3DCGデザインなどをトータルにプロデュースするコミュニケーションデザインのプロフェッショナル。

    「グラフィックパワー(株)」扇町クリエイティブクラスター登録ページ

  • 浪本 浩一氏「(株)ランデザイン」代表取締役

    浪本氏

    大阪のデザイン会社で勤務後、東京の広告制作会社へ。アートディレクターとして企業の広告やウェブ制作を手がける。2005年に独立し、ランデザインを設立。メビック扇町や関西ブランディング協会の活動を通じて出会ったクリエイターや企業とのコラボレーション活動に力を注いでいる。

    「(株)ランデザイン」扇町クリエイティブクラスター登録ページ

ミーティングのルール

スピーカーの皆さんへの質問1

ミーティング風景

製造業とクリエイター、お互いに「ココが変!」と感じる部分を教えてください。

上記の質問に対して1分間のシンキングタイムを設けた後、エサキさんの号令で、スピーカーの方々が一斉に回答の書かれたスケッチブックをオープン。真面目に中小企業の、クリエイターの、ここが理解できないと思う点をあげている人がいれば……。

吉持

吉持氏

ここに集まった面子の中では、たぶん、僕がいちばん変やと思う。会う機会が多いクリエイターの浪本さんと比べても、僕の方が絶対、変やと思うから。(笑)

と、吉持さんのように面白い回答が飛び出ることも。

中村

うちは、デザインの中でも特に映像や3Dを使った表現を得意としてますが、“その技術を使って、商品を第三者に分かりやすく見せたい”と、中小企業の方に相談されることがあります。こちらとしては、分からない分野のことなので、制作に入る前に構造の理解をしておきたいんですが、中小企業さんが提示する“分かりやすく見せるための説明”ってのは、すごく大雑把。こんな感じで、あんな感じでと抽象的な話が多い上、最終的には工場に見に来てくれと言われてしまうんです。見に行ったら見に行ったで、技術についての細かい説明を聞かされ、こちらはチンプンカンプン。それでも自分なりに解釈して作ってみるんですよ。中小企業の方も「イメージでいいから」って言うんでね。ところが、出来上がったイメージを見ると、少しの狂いでも「全然違う」と言われてしまう。イメージでと言われても、いったいどこまでがイメージなのか、って聞きたくなりますね。

エサキ

私もどちらかという中小企業さんをお助けする側に立ってますが、中小企業の社長さんって、確かに「ドーンと儲かるもの作って」とか、「びっくりするようなインパクトで」とか、抽象的なこと言われますよね。分かりにくいことこの上ない要求ですが、その要求に答えるものを考えるのがクリエイターの仕事ちゃうの?! って思ってる方も多いよう。頷いてらっしゃる和泉さん、どうですか?

和泉

実際、自分の仕事をパンフレットに書くとき、私は「ケータイ電話の中の電子部品を作るためのプレス金型の……」と細かく説明し過ぎる感があるんですが、クリエイターの方に言わせると、「そんなのケータイの中心部、心臓部を作っているって言えばいいんですよ」と言われてしまうんですね。なるほどな、と思う部分もありますが、物にはそれなりの機能、働きがあり、自社の仕事をPRしようと思うと、説明を簡単にするだけではいけないのかな、と。いったい、そのパンフレットはどなたに見ていただくためのものなのか。それをまず考えてもらえたらなぁと思いますね。

エサキ

中小企業さんは中小企業さんなりに自社をアピールするというこだわりがあって、それをお手伝いするクリエイターにもクリエイターなりの考えがあると……。では、その中間の立場に立つ長尾さん、いかがでしょう?

長尾

製造業の方も、クリエイターの方もお互いにこだわりがあるんだなぁと言うのはよくわかるんですが、私にしてみたら、何にこだわっているのかが、よくわからないですね。(笑)たとえば、和泉さんがおっしゃった「パンフは誰に見せるのか」って問題を取り上げると、確かに見せる相手によって表現も全然違うものになるだろうし、だからと言ってクリエイターの立場として表現したいと思うポイントがその相手に対してずれていたら、当然違うものを提案することになります。無意味なこだわりを取ってしまえば、さらにいいものが出来上がるんじゃないかと、真ん中の立場に立つ私としては、思ったりもします。でも、私はお互いが分かり合おうとする必要はないと思います。どっちもが自分の仕事に忠実であればいい。それがお互いの技術の革新に繋がるんじゃないですかね。

エサキ

クリエイターの視点で中小企業さんをアピールするとき、何を伝えなきゃいけないと思いますか? 物を伝えるべきなのか、それ以外のものを伝えるべきなのか。

池田

何を伝えるにしても、もっと簡単でいいと思います。ボロ儲けしたいなら、「ボロ儲けしたい」って言ってくれたら、そのためのプランを僕なりに考えて立てますよ。その上で腹割って話し合って、中身を決めていけばいいと思ってます。まずは、その中小企業さんが目指しているゴール地点を教えてほしいですね。

エサキ

池田さんは、こんな風に言ってますけど、逆に中小企業の方はクリエイターさんに何を伝えようと思ってますか?

村上

自分自身の思いを伝えないと始まらないのかなぁと思いますね。ちょうど今、自社のウェブサイトをリニューアルしている最中なんですが、その作業を浪本さんにお願いしています。幸い、浪本さんは僕自身や会社のことをよく知ってくださってるので、内容から何から全部お任せしてしまってますね。あえて伝えることは何もないかな、と……。

エサキ

お任せされた浪本さん。どんなヒヤリングをしたんですか?

浪本

村上さんとはセミナーや勉強会などで一緒になることが多いですし、貼箱のワークショップでもスタッフとして関わったので、事業内容や貼箱への想いについては理解していました。話し合いの中ではウェブサイトをリニューアルして目指す雰囲気、例えば高級感を演出しながらもストイックになりすぎないなどタッチの確認をしました。内容については村上さんの持つ技術以外のアピールポイントを探すようにしましたね。村上さんは物凄くマメで、自己発信できる方なので、ウェブサイトの作りも村上さんが更新していくことでより盛り上がっていくようになっています。村上さんならこう運営してくれるだろうと考えデザインしました。

エサキ

今までの話で見えてきたのは、発注した側も受注した側も相手任せにしてはうまくいかないってことでしょうか。互いに自分たちの責任をしっかり果たし、その上でバランスを保つことが大切なんですね。

そう言って、場をまとめたエサキさん。次の質問に移りました。

スピーカーの皆さんへの質問2

ミーティング風景

中小企業のブランド作りにかかる年間予算は、どれくらい必要だと思いますか?

松本

年間予算は800万。まずウェブサイトを全面的に作りなおさなきゃいけないと考えました。それから会社案内のパンフレットも必要かなぁと、展示会の出展にともなうツールも必要ですね。それで初期的な土台を作って、年間なんらかの動きをしていくことを考えるとこの程度かしら、と。ちなみにウェブサイト単品はその半額の400万もしくは300万で……。できれば、それ以外にも40ページくらいの冊子も作りたいですね。

エサキ

そんな松本さんと750万の差がある吉持さん、いかがですか?

吉持

年間予算は50万。自分自身がしっかりと自分とこのブランディングすればいいんじゃないかなぁと言うのと、もう1つは、相手と僕とこが持ちつ持たれつようなシステムになっているのでお金が発生しない関係になっているのとで、この程度かな、と……。

エサキ

なるほど、うまいシステムですね。自分たちで手間かけて自社でがんばったら、よそに振る必要がないし、たとえよそに振るにしても、うまいことコラボする技があるってことですかね?

吉持

というのもありますけど……。やっぱり一番は自分自身でしっかりと自分とこをブランディングすることやと思います。僕自身、かなり情報発信はしてるほうやと思いますよ。ウェブサイトやブログ、人脈作りにも精を出してますし……。3年間で150回のメディア取材も受けましたし。

笹尾

年間予算は180万。中身はウェブサイト、広告、DMなど。後は知識を身につけるインプットの部分も考えています。最近は、インターネットの普及などで、お金をかけなくてもブランディングができる時代に入っているので、僕もそれを学びながらやってるって感じですかね。

中村

中村さんの回答

中小企業さんに限らず、私たちに対して発注がかかる内容は、割合、広告宣伝費の余ったお金とか、「儲かって税金が余ったからこれ使って」って話が多いような気がする。そういう発注ってのは、なかなか力を注いでくれなかったり、情熱が足りなかったりする気がしますね。

松岡

年間予算は400万円。これは、去年の僕の交際費です(笑)。冠婚葬祭とか飲食費とかも含めてですけどね。担当A社の課長が昇進したとか、葬式の花代とか……中小企業はそういったとこでも色々お金がかかるもんなんですけど、まぁでも、ブランドのためにかけられる金額としたら、僕の場合はここから出すことになるのかな、と……。

長尾

私は内向きに36万円、外向きに1200万円。本気でブランドを作ろうと考えたときに、まずしなければならないことは、月3万円は使って自分が勉強するための費用、社員さんたちと飲みに行く費用に使います。自分の熱い思いを社員さんたちと共有しなければ、何を作ろうとしてもうまくいくはずがないですからね。その上で月100万円くらいは発信していく作業にかけないと、ブランドなんてものは作れないと思いますね。

エサキ

長尾さんが言われたように、社内に対するブランディングをどのように考えていますか? 340万と書かれた和泉さん、金額云々は別として、どうですか?

和泉

社内へのブランディング費用は入れてないですね。うちの商品が売れるか売れないかは、展示会に出展してみないとわからないですから、展示会の出展に50万×2回、それ以外に月20万×12カ月で合計340万。社内での飲み会、たとえば「展示会のご苦労さん会」なんかは自腹ですね。

エサキ

社員教育や社員に対する啓蒙、社長さんの思いを社員に伝えようとしたときに、皆さんはどうしてらっしゃるんでしょう?

和泉

社員には、自分たちの仕事についての情報を発信していくことが基本やと思いますね。どこの会社の社員さんも、「自分とこの会社はたいしたことない」と思ってるパターンが多いと思うんですが、そうではなくて、うちの会社では「こんなことができるんやぞ」ってことを知ってもらうようにしています。その上で、部下を展示会に行かせて擬似営業体験をさせますね。

笹尾

うちなんかは5人でやってる少人数の会社なんでね、日頃のコミュニケーションを重視してますよ。あとは、しっかりと自分の思いを伝えるようにすること。同業者間での自社のポジションはどの辺りにあるのか、自分たちの作っている製品がどこに使われているのかを教えたりもします。

エサキ

なるほど、なるほど。皆さん、本当にいろいろなことを考えてらっしゃるんですね。さて、いい感じで煮詰まってきたと思うので、そろそろ次の質問に移りたいと思います。

スピーカーの皆さんへの質問3

会場の皆さんからスピーカーの皆さんへ質問タイム

会場にいる皆さんが疑問に思っていることを、直接スピーカーの方々に聞いてしまおうという質問タイム。1分間のシンキングタイムの後、エサキさんは会場にいたデザイナーの藤井さんにマイクを差し出しました。

会場

お互いに理解できないという点があったかと思うのですが、実際はどの辺りで関わり方の接点を持つんでしょう。その辺の擦り合わせをどうやってつけるのか聞いてみたいですね。

松本

金額は正直、お客さんの状況に合わせて受けるしかないですね。内容に関して、相手とこちらの思いがかみ合わないとか、思い描いているものが違うってことが出てきたときは、手間だとは思いますが、デザインなら2案のところを3案出してみたり、2回だったのを3回出してみたりしますね。イメージを形にする商売やからこそ、そこに関する手間は惜しまないようにしています。特に製造業の方は、皆で見えるように共有したいと思ってらっしゃる方が多いので、それに対してはこちらも歩み寄るようにして、説明だけでなく実際に形として見せていくように心がけていますよ。

松本さんが熱弁した後、突如、長尾さんが挙手。皆さんの会話を聞いているうち、疑問に思うことがあったようです。

長尾

ブランディングって言っておられますが、クリエイターの方々は、自分のところのブランディングってどのようにしておられるのでしょうか?それからもう1つ、ブランディングという言葉の範囲が広すぎて、何を指しているのか、イマイチよくわからないんですよ。そこら辺りをどう思ってるのか、是非お聞かせ下さい。

エサキ

長尾さんの話、すごく面白いですね(笑)。確かに企業さん側としては「うちのブランド作ってもらうなら、ブランド持ってるところにお願いしたい」と思うはずですよね。「ダサい兄ちゃんに格好よくなる方法を教えてもらっても納得いかない」と。クリエイター4名に聞きます。御社のブランドコンセプトを話してください。

池田

グラフィックをメインにしていますが、それ以外の手段も色々知っていますから、相手に対してタメになるサービスを提供できます。いろんなものを提案として出せますよってとこですかね。

松本

細部までこだわりぬくって言うのが、うちの社内コンセプトです。デザインとかコピーとかの一文字、ほんの僅かな位置、色にこだわると言うのはもちろんですが、お客さんの手間をどこまで省くことができるかということも考えるようにしています。それは、お客さんだけでなく、一緒に仕事してくれるブレーンの方に対しても同じですね。

中村

私に興味を持ってもらうことが大切ですかね。それから自分の仕事を見てもらうようにします。自分のスタンス自体が、ブランドといえばブランドです。

浪本

ブランドコンセプトではないのですが、会社創立当初から「クライアントと直接取引」というルールを決めて、仕事をしてきました。直接ヒアリングをして制作することにこだわったからです。でも、最近はそれでいいのかなという思いもあります。というのも、僕自身のネットワークが広がってきたからなんです。ネットワークを散々広げているのに、仕事はクライアントとしかしないというのでは、代理店の方やデザイナー、ライターから声をかけていただいたときにどうするの、という相反する問題がでてきます。そこは悩みどころですが、ともかく直接話を聞くということが会社のスタンスともいえます。

エサキ

では、中小企業の方々にお聞きします。御社が考えるブランドとは?

吉持

僕と浪本さんが作った商品が200年後にイタリアの片田舎に飾られていて、それに興味を持った人が、そのルーツを辿ったら日本に辿りついた、みたいなロマンスがいいかなぁ、と……

エサキ

200年後も生き続けるようなブランドこそがブランドだ、ということですね。村上さんはいかがですか?

村上

僕は、自分のブログに「夢は貼箱界のフェラーリ」と、すごい大風呂敷を敷いたタイトルをつけているんですけども……。フェラーリって1台2500万から3000万とかする上に、注文してから2、3年待たなきゃいけないんですよ。それと同じように、安いから買われるんじゃなくて、高くても、待ってもいいから「お前のところから買いたい」と選ばれるような物作りを目指せたらなぁと思っています。

松岡

私の場合、受注依頼があった物をデザイナーさんたちと練りこんで形にしていくわけですが、「あそこの会社がやったんじゃないかな」という色を出していけたらベストですね。万人ウケしなくても、同業者さんに「ここの施工かな」と言われるようなものを作っていきたい。

笹尾

製造業なので、今までは図面をいただいて物を作っていましたが、最近はお客さんの層も変わり、建築デザイナーなど技術系の方が尋ねてこられるようになりました。どうやって作ればいいのか、材料はどんなものを使えばいいのか、そのプロセスを皆さん知りたがります。それに対応する手段として、作り方や合理性などを伝えていく相談窓口として存在を、うちで確立していこうと思ってるんです。ブランディングと言う意味では、ただ単に作るだけじゃなく、創り上げているというのをコンセプトにしてやってますね。

和泉

「微細精密加工の未来を創造する企業」。それが我が社のグランドコンセプトです。うちの会社は金型部品などを取り扱っていますが、これといった製品を持っているわけでなく、お客さんの図面、予算に応じて金型を作っています。ときには、困っているお客さんにアドバイスをし、不具合の出ないようなアイデアを提供することも……。その点を考えると、うちが売っている商品は、金型部品やパンチ1本だけではないんです。新日本テックで部品を買ったら、いろいろ面倒を見てくれるし、付加価値があるんだなぁと思ってもらえること。それこそが我が社の商品なんです。もはや目に見えるものだけを売っている時代ではないんですよね。

エサキ

新聞社の立場として、今までいろんな企業さんを取材なさったと思いますが、製造業さんの「これがブランドだ!」と思った所はどんなところですか?

河野

社長が目指していることを感じ取り、全社員が共通して、それに向かって邁進しているようなところですかね。社長のキャラが、社員のキャラになっているというか……。

エサキ

会場からの質問に対して、強引にまとめるようですが……。もしかしたら、「会社=社長」なのかもしれませんね。そこの社長というキャラなり存在をいかに伝えられるのか。社長の思いも含めていかに「会社=社長」というものをキャッチできるのか。クリエイターの方がキャッチしたいと思っているのは、社長の人間性やキャラクターなんでしょう。そこの擦り合わせができたときに、折り合いが付くんじゃないかなぁと思います。

スピーカーの皆さんへの質問4

ずばり、どんなクリエイターさんと仕事をしたいですか?
ずばり、どんな製造業さんと仕事がしたいですか?

ミーティング風景

ミーティング風景

浪本

浪本さんの回答

目指す想いがあって、それを共有し一緒に目標に近づいていく、そんな会社さんと仕事をしていきたいです。そこには単に受注、納品を繰り返すだけの関係だけではない、充実感があると思います。

中村

人と人とのコミュニケーションがとれるかどうかが大切だと思います。予算やテーマ、ブランディングの方法などいろいろありますが、それが失敗しようが、成功しようが、コミュニケーションで分かり合う仲が築けているかどうかじゃないでしょうか。逆に、言いだしっぺなのに途中で投げ出すような人は一緒に働く上で大変ですよね(笑)。それこそ、コミュニケーションが取れてない証ですから。

松本

将来をイキイキと語ってくれる社長さんと仕事をすると、こちらが楽しくなりますね。そんな人になら、自分の技術を提供し、一緒に物を作っていこうという気になります。

池田

僕たちの意見も取り入れてくれて、対等に仕事ができる相手がいいですね。最終的な方向を一緒に決められる家族のような関係で、長い付き合いができる会社がいいかな。そういう関係を作るには、その会社の中で僕自身がしっかりとポジションを確保して、マメに社長の人柄や社内の気質を知ろうとすることが大事やと思います。

長尾

クリエイターさんは、営業力が弱いというイメージがあるのですが、そんな場合、一種のコミュニケーション方法として下ネタを話すことがあります。場を盛り上げるためにやっていることですが、そういう話題になったときに嫌そうな顔をされると、私としては付き合いづらいなぁと感じたりしますね(笑)。製造業さんに関しては、お金を払ってくれない人が辛いですね。私たちの仕事はプランニング——モノを考えるロジックを作る仕事なんですね。打ち合わせをしているとき、自分たちのノウハウを出し惜しみすると仕事にならないですが、かといって出しきってしまうと、言い切りで終わりってしまうことがあります。そこは自分たちも反省すべきところではあるのですが、本当ならノウハウを披露した時点でお金がかかってると思ってほしいですね。

河野

人の話をよく聞いてくれるクリエイターさんがいいですね。企業側の思いや人柄をうまく引き出せるような、話の裏側を読み取れるような人がいいです。

和泉

展示会で偶然であったクリエイターが、わざわざうちの会社まで来て、パンフレットにアドバイスをくれたことがありました。そのときに、「直接会って話ができるのはいいな」って思ったんです。僕らは表現者じゃないので、アイデアがあっても表現できません。周りには、表現してくれる方がたくさんいますが、本当でこの人でいいのかどうか、お会いしなきゃわからないですよね。そういう意味でも、直接、営業に来てくれるクリエイターさんとはうまくやっていけると思うんです。

笹尾

一緒にやっていきたいと思えるようなクリエイターさんは、スキルに対する信頼性があり、プロ意識を持って意見してくれるような人。遠慮なしにバンバン言ってきて喧嘩になるぐらいでちょうどいいんです。

松岡

100か0か。成功報酬でどうですか?ってことですけども。これはいつもクリエイターさんに言われることなんですよね。「デザインコンペに参加したいんです。受かれば受注来ますよ。どうですか?」って(笑)。そのためにサンプルがほしいというので、5万、10万かけて作るんですけど、結局予算が出なかったからってことで無償サンプルになることも。製造業でも作ったものがお金にならないことはあるんです。でも、そこでお金を出したのは、うまく行けば成果になると思ったから。中小企業さんはお金を出さないと言われがちですが、歩合制やロイヤリティの面がしっかりしていれば出すと思うんです。それを売りにしているクリエイターさんがいればいいなぁと思いますけどね。

村上

うちは紙のパッケージを作っているので、どちらかと言えば、クリエイターさんから受注を受けることが多いんですよ。その立場で言うなら、以前、うちが作れるものやノウハウを提供させてもらうことで、相手のクリエイターさんが思いを形にし、いい商品が生まれたということがあったので、やはり思いを共有することができる相手が一番ですね。

吉持

志と波動を持った人。一緒にいて居心地のいい人がいいですね。

エサキ

ありがとうございます。

ミーティング風景

ミーティング風景

ミーティング風景

最後に、オーディエンスの方々に感想を求めたエサキさん。オーディエンスからスピーカーへ。スピーカーからオーディエンスへの割れんばかりの拍手で約2時間の公開ミーティングは幕を下ろしました。

終わりに

大勢のオーディエンスが参加した公開ミーティング。いつも以上にテンションが上がったエサキさんの“エグい”質問にタジタジされる一面もありましたが、中小企業の方々も、クリエイターの方々も、それぞれにこだわりや独自の強い思いがあり、初っ端から濃い本音トークが炸裂しました。
終了後は、ロビーで親睦会が開かれ、オーディエンスを含めたディスカッションの場に。皆さん、飲食も忘れて夢中でお話されていました。

公開:2009年03月17日
取材:プレス・サリサリコーポレーション 國澤 汐氏

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