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クリエイティブクラスターイベントレポート

大阪キタ、天満、扇町、中崎町、南森町界隈で活躍するクリエイター同士が互いに知り合い、ノウハウを交換する場「クリエイティブ・クラスター・ミーティング」。いつも通り、コーディネーターとスピーカーにオブザーバーを交えただけの非公開形式ではありましたが、今回は20名以上ものオブザーバーが参加した特別版。開始時刻が近づくにつれ、ミーティングを目の当たりにしようとオブザーバーを希望した若手クリエイターたちが会場の席を埋めてゆきました。

ひとつのプロジェクトをゴールまで導くために、スタッフとクライアントの間でどう上手く立ち回るか。それは、クリエイターやデザイナーにとって永遠のテーマともいえます。特に、大きな期待と責任を負った案件の場合、クリエイティブワークだけに没頭するわけにはいかず、ときには対クライアントの営業窓口となり、ときには企画・政略プランナーとなり、また、プロジェクトに関わる人たちのモチベーションをあげるムードメーカーの役割を果たさなければなりません。
そこで、現場での経験値を共有すべく、大阪を拠点に活躍するクリエイターのみなさんが、3つのシチュエーションへの対応策について意見交換します。今回スピーカーとして参加してくれたのは、ベテランクリエイター10名。貫禄たっぷりのスピーカーたちが席に着き、いつもより少し緊張した雰囲気のなかミーティングはスタートしました。
2008年12月5日(金)18:30〜21:30

純日本系&外資系、両方の広告代理店の営業マンとして各種企業のコミュニケーション活動をプロデュース。その後、05年に独立し、中小企業のブランド向上を通じて、自社の想いをちゃんと伝えられる会社を一社でも多く創りだすためのコンサルティング&セミナー事業を大阪を拠点に展開中。

同志社大学工学部卒業後、(株)映像館入社。数多くのVP制作に携わり、取締役大阪事業部長を経て1996年に退社。1997年、各種メディアの交配をめざしてクロスメディア・コミュニケーションズを設立。映像ソフトの企画制作からテレビ番組、テレビ・ラジオCM企画制作、デジタルコンテンツ企画制作などを手がけている。

開西学院大学卒業後、社員教育企業へ入社して教育用の映像制作を経験。1986年、映像企画を主業務とするクリエイティブハウスおくむらを立ち上げ、企業のPRビデオなどの企画制作を多数手がける。2000年に制作したコンセプト映像『六甲の山荘 在Be』が海外の映像祭で受賞するなど、作家としての活動にも力を注ぐ。

専門学校卒業後、編集プロダクションやデザイン事務所を経て独立し、1988年、コピーライティング専門のプロダクション「なかよし字務所」を設立。その後、イラスト、デザイン、撮影と事業を拡大し、事務所名を「スリーピース」に変更する。現在は、クリエイター集団「アーティストバンクジャパン」をプロデュースし、広告制作を中心に活躍中。

大学卒業後、デザイン事務所へ就職。その後、独立して1993年にケイプラントを設立。以来、ポスターやチラシ、企業の広報誌の制作や、本の装丁など幅広い仕事を手がけてきた。「取り扱うジャンルは何でも来い、デザインのスタイルはボーダレス」という姿勢で、日々おもしろいデザインを追求している。

大学卒業後、(株)大阪宣伝研究所へ入社し、コピーライターとしてのキャリアをスタートさせる。2年半で退社し、フリーを経て1979年にコピー制作室を立ち上げた。これまでに千趣会、ニチイ、ビブレをメインに、百貨店や各種メーカーなど、さまざまなクライアントとの仕事を経験。個人的に好きな仕事は人物取材とエッセイ。

大学卒業後、コピーライターとして(株)市田意匠宣伝部、(株)新光美術アートセンターで勤務。その後、(株)大広神戸支社を経て独立し、CRマネジメントを設立。コピーライターとして言葉を重視した広告を多数企画し、キャッチフレーズやスローガンの開発から、ネーミング体系の構築などに携わる。現在は、「コンパクト・ブランディング」で中小企業のブランド開発を展開中。

大学卒業後、さまざまな職を経てフリーライターに。以来、20年以上にわたって東京・大阪の雑誌をメインに企画、ライティング、編集を手がけてきた。現在は、編集記事制作に携わり続けた実績とメディアネットワークを武器に、中小企業のコンサルに着手。広報活動をブランディングと捉え、「パワーニュース」を展開中。

大阪芸術大学写真科在学中より多数の写真家のアシスタントを経験。卒業後、イメージハウス・メディア、中田耕志デザイン室を経て、26歳でフリーランスのフォトグラファーに。1984年、大阪・アメリカ村にスタジオエポックを開業。現在は、大阪市北区を拠点に、広告や雑誌、WEBなど幅広い媒体で活躍する。

デザイン専門学校在学中より広告代理店にて広告制作をスタート。複数のデザイン事務所を経て、デザイナー集団「クリエイティブ・アド」に参加。企業のブランディング、販促、商品開発などに携わる。その後、印刷会社におけるグラフィック事業の総合プロデュースを行う。現在は、企業の広報物の制作をはじめとするブランディングを手がけている。

高校1年生のころからデザイン制作に携わり、高校卒業後、デザイン事務所へ入社。以後、大手デザインプロダクションなどを経て独立。グッドデザインを設立し、2006年には事務所を中崎町へ移転。“消費者の目線”を大切に、業種を問わずさまざまな企業の広告制作を手がけている。
あなたは外部スタッフ数名とともにネットワークチームを組織し、新規事業に取り組んできました。
その事業は将来の利益を生み出すための(新規顧客を獲得し、メンバー全員のWin - Winに繋がる仕組みづくりの)先行投資的なものです。
当初はスタッフの士気も高く、盛り上がっていましたが、事業の結果が出にくい状況になる(利益に繋がりにくく、商品・宣伝費や毎回の会合など時間とコストだけがかさんでいく。おまけにメンバー間で作業量にバラつきがある)と、スタッフたちのモチベーションはダウン。
さて、この現場を改善するため、プロデューサーとしてのあなたの選択は?

現場で起こる問題1
まず僕はそういうことしませんね。仕事じゃなく、趣味の延長のように思えます。ダメだということに気づいたら、高い月謝だったと思って潔くやめるべき。ただし、自分が言いだしっぺやったら、メンバーにお金を払って納得できるまで続けるかも。みんなでお金を持ち出して、なぁなぁになってるんやったらやめる。クライアントがあったら別やけどね。
自分が本当にやりたいことであればたぶんやめない。ですが、ビジネス目的だというのが前提であれば何のメリットもないのでやめると思います。
同じようなことはしょっちゅう経験してます(笑)。だいたい内輪受けするものばかりというか、クリエイターの独りよがりだということが多い。自分たちにとっては魅力的な事業でも、外から見たら価値はゼロ。それに早く気づいてやめるか、時間がたってからやめるか。いい夢見させてくれてありがとうって、それだけの話じゃないですか。
「ごくろうさん会」でも開いて終わりにする。基本的に飲みの席で始まる類の事業でしょう。入潮さんの言うように、自分のやりたいことであれば続けますけどね。
モチベーションが下がってきたということは、結果が見えて、みんな嫌気がさしているということ。続けてもうまくいかないと思います。自分がプロデューサーであり言いだしっぺであるからこそ、責任を取るという意味でも傷が浅いうちにやめる。思い入れのある事業や自分のやりたいことであれば、ダメなった経緯をドキュメントっぽく記録してメンバーに渡すしてからやめようかな。やってきたことを無かったことにはしたくないので。
すぐにでも撤退するということを前提にして、どう事態を収縮させるか話し合う。自分が言いだしっぺなら、多少の出費は覚悟してメンバーに謝る。もし自分のやりたいことならやめないって意見もありますが、本気でやりたいならこんな中途半端ことはしないで、自分の会社の金で、メンバーには外注としてお願いします。自分が責任とらないつもりで言いだしっぺになるのがそもそもの間違い。会社を共同経営して失敗するとか、よくあるパターンですよね。
みなさん事業のあり方に否定的ですね。では、何で上手くいかないんでしょう?
営業マンがひとりでもいれば違うかもしれないけど、クリエイターばかりが集まっても事業として成立しない。「商品はできたけど、誰が売りにいくの?」ってなっちゃう。
誰にも責任がないのがいけない。御前会議みたいになりますよ。そのくせ、会議を重ねているうちに本気でやってるつもりになるからタチが悪いんです。利益率とか、現実的なところをツッこまれたら何も言えなくなるくせにね。この世界はデカイ話が多いから。
私もよく経験しますが、みなさんとは少し意見が違います。私の場合はビジネスだけではなく、自分の好きなことという感覚でしているから前提が違うかもしれないですね。たとえば誰かに出会って、「あっ、あの人の映像撮りたい」ってふと思ったことからスタートするプロジェクトだってあるんです。そういうときはスポンサーやクライアントは後回しで、とりあえずスタッフを集めます。ギャラのメドが立たなくて、手弁当だけで撮影してもらうなんてこともありますよ。タイミングを逃さないようにしたいので。期間が長くなってメンバーのモチベーションが下がると、プロジェクト開始時の初心を確認し合うんです。モチベーションを保つという意味では、プロジェクトの期限を明確に決めるのもいいかもしれませんね。
私は、まずメンバーに謝る。こういうことって、普通は仲がいい人たちと一緒にしますよね。商品が売れる見込みがあろうとなかろうと、続ければ仲が悪くなるのがわかってるから、めちゃくちゃ謝って解散します。そして、お金で解決。打ち合わせや企画にかかった料金を払って、「すんません」って(笑)。
とりあえずお休みしてみようかと。言いだしっぺが自分でも、みんなでやっていたのなら他のメンバーにも責任があると思うんです。実費が発生するなら、毎月精算するなどしてお金の問題はクリアにしておくべき。その上で、どうしても今すぐやめなあかんもんなんだろうかと思いますね。もしかしたら1年後、2年後にひっかかるかもしれない。だから休みます。「いつか時代が俺らに追いつくから、ちょっとの間は寝かせとこか」とか言って(笑)。
条件によって結果はさまざまですけど、こういうケースは山ほど経験しました。ウチは大手の代理店とか挟まずにメーカーと直接仕事をするから、「こんな商品作りたいんだけど…」っていう発注でななく相談レベルの話はゴロゴロ転がってる。安易な気持ちで他人は巻き込まないですけどね。まずはひとりで動いて企画を熟考して、ビジネスになるだろうと見極められたらそこで外注します。とりあえず、お金にならない話でも乗っかりますよ。やめるってのは本当に最後の手段ですね。
実は今、まさにチームで新事業に取り組んでいるところ。来年の夏あたりには金持ちになってると思うんですけどねぇ(笑)。現状、コストはまだかかっていません。僕はコピーライターなので企画やコピーを、デザイナーはデザインという技術を、それぞれお互いに持ち寄ることになる。すぐお金の話になるようだとそういう組み方はできないですよ。
じゃあ、こういうネットワーク組織を作るときに、これだけは押さえなアカンってポイントはありますか?
メンバー全員がプロであることですね。アマチュアではダメ。それと、想いや熱意を共有できること。コミュニケーションがとれていないといい物はできないんです。でも、ナァナァになってはいけない。仕事と趣味は違うので、ビジネスでプロジェクトを進めるときはそれなりの気持ちで臨まないと。
熱意だけで仕事はできないけど、やっぱり熱意も大切なんですよね。若い人ってノリだけでチームを作ってしまって、事業がうまくいかないと仲間内で訴訟…なんて悲惨なことも。お金目的だけじゃなくて、そのほかに何か大切なことがないとダメなんでしょうか?
僕はクリエイティブに“お友だち”を持ち出すのはどうかと思う。好きなコト・モノで共通言語を持つのはいいけど、お互いプロとしてやっていくからには友だちごっこじゃダメ。もしクライアントがいる仕事の場合、3ヵ月で結果出なければ切られるっていうシビアな世界なんですから。
経済力も大切だと思います。このケースによく似た経験をしたことがあって実感しました。私の場合は3人のチームで、メンバーそれぞれの経済力や価値観がバラバラだったんです。みんなでミーティングして、その後でご飯食べにいくのを楽しみにしている人もいれば、そんな余裕なんてない人もいるわけで。そんな中で結果が出ないとなり、3人の輪を維持できなくなって崩壊しちゃいました。持久力って経済力のことでもあるんだと思った。
みんな貧乏で、これから何かが起こるかもしれないけど保証はないって状態は辛いですよね。永江さんと福川さんは一緒に事業を進めているようですけど、何が大切ですか?
僕らの場合は「このままでは食べていけない」っていう生き残り戦略ですから。切実だし、それがモチベーションとしてはいちばん大きいかな。
ビジネスならビジネスとして、予算組みして、各々の役割も決めて、プロデューサーがスポンサーを見つけてくるというスタイルが理想的なんじゃないですかね。
みなさん、興味深いご意見ありがとうございました。事業をやめるべきという意見が大半でしたが、だからといってそれが正しいわけじゃないんです。やめるか、続けるか。みなさんが想定する動機や状況によって答えは変わりますし、人それぞれ。いろいろな意見を聞いて、何かの参考にしていただければ幸いです。
ここで、第1問が終了です。ベテランスピーカーの方々のせいか聴衆のせいか、開始直後はコーディネーターのエサキさんもいつもより緊張気味でしたが、すぐに本来の調子を取り戻した様子。時間の経過とともに、個性的なスピーカーの方々に負けない仕切りっぷりを見せてくれました。

ある日、上得意先から「スタッフの1人が気に入らないので担当を外してほしい」と、一方的に電話がありました。事情を聞くと、「複数の提案がほしかったのに、キメ打ちで押し切ろうとしてきた」とのこと。そのスタッフAは、たしかに得意先に対するコミュニケーション能力には少々問題がありましたが、腕はよく、この仕事に対するモチベーションも高い。なにより、あなたの唯一の右腕です。他に、スタッフが2名いますが、彼らはそれぞれ別の作業を担当しているため、Aの代わりはできません。
さて、この状況において、得意先を納得させるためのプロデューサーとしての選択は?

現場で起こる問題2
スタッフAと僕、クライアントと僕というふうに、まずは個別に話を聞きます。そのあと、3人で話をする。そこで和解すればよし、もし和解しなかったらAを裏方に回して、得意先にはAを外したと伝えるでしょうね。
まず、Aとクライアント両方を説得。解決する方法を模索します。模索してもダメな場合は、やっぱりお金で解決(笑)。スタッフAにはお金を払って外れてもらいます。お金の話になるとヤラシイかもしれないけど、基本的に仕事で執着するとこってお金でしょう? ビジネス=お金なんですよ。お金で解決できへんことがいちばんしんどいので、私は常にお金で解決するようにしています。「お金じゃないんですよ!」なんて言ってくる人はダメですね。「ビジネスじゃないんです!」って言うのと同じですから。
両者と別々に話して丸く収める方法を探します。ふたりを直接会わせない。それで解決しなかったらスタッフAには降りもらう代わりに別の仕事をお願いします。クライアントとスタッフ、両方の顔を立てるにはそれしかないでしょう。
たまたまクライアントの機嫌が悪かったってこともあるからね。そんな場合は日時を変えて出直す。これで上手くいくこともあります。
私の経験でお話すると、一緒に仕事しているデザイナーにクレームが来たことがありました。彼はたしかに少し難しい人で、クライアントにバンバン意見したりとか、あまり人好きのするデザイナーじゃなかったんです。でも私は、この仕事は彼じゃないとダメだと判断しました。「すごくいいデザインをするんです」とクライアントを説得して、そのぶんいい仕事で返そうと。先方だって、いい仕事をしたら文句は言えないでしょう?
僕ならAを外します。というか、そもそもプロデューサーである自分がクライアントとコミュニケーションできてへんとちゃうかな。ヒアリングってすごい大切なんです。膨大な時間をかけてクライアントの想いや要望を聞いてあげないといけないのに、それができないAを右腕にしたプロデューサーが悪いと思いますよ。
同感です。私からすると、このプロデューサーは間抜けでしかない。信じられないくらい(笑)。でもまぁ、関係がこじれてしまったら、まず両者を和解させようと努力します。Aはモチベーションも高いし能力もあると、クライアントに伝えて説得。それでもダメだったらAを隠して裏で使います。最後の選択紙として「クライアントを外す」もアリです。
私も同じような経験がありますが、クライアント第一だと思ってスタッフを変えました。もちろん、クライアントに理由を聞いて、納得した上でのことですが…。途中で降りてもらったスタッフには打ち合わせに何回も行ってもらっているのでお金を払わないといけないけど、代わりに別の仕事をお願いしました。
こんなプロデューサーありえないです。クライアントが複数案欲しいって要求してるんだから、普通に考えて何か出さないといけないでしょ。スタッフAが人格的に問題アリだったとしら、そもそもクライアントの前に連れていったことが間違い。そうじゃなくて、たまたま好みで嫌われたというのであれば、Aのせいではないし、クライアントも悪くない。「Aの代わりに僕がすべての窓口になるから、それでいい?」って提案しますね。
クライアント第一だと思うから、Aを外せと言われたら外すしかないでしょう。クライアントの担当者を外せるんだったらいいけどそんなの無理だろうし。僕は外したことも外されたこともありますよ。「メガネとヒゲが嫌だから連れてこないで」って言われたこともあるし、ちょっとした失言で外されたこともある(笑)。
僕はスタッフを外せませんね。自分がフォトグラファーなので、右腕のスタッフってのはスタイリストとかヘアメイクになります。「今回のこの仕事にはこの人」って選んだ以上、途中で代えることなんてできない。クライアントや担当者に向けて広告を打つんじゃなくて、消費者に評価されてナンボなわけだから、変なスタッフでも外せないです。
結局のところ、プロデューサーに必要な資質って何なんでしょう?
感じよくないとダメやと思う。同じこと言っても、感じよくて笑い取れる人とスベる人がいるじゃないですか。プロデューサーって、感じいい人かどうかにかかってると思う。言い方ひとつで全然印象が違ってくるし。私は感じよくない方なので(笑)、感じいいことがどうやったら感じいい人に近づけるかをいつも観察してますね。
プロデューサーがダメで、私もダメで、クライアントと大喧嘩したことがあって、それが今も心の傷になっている。お前はダメやとプロデューサーに引導を渡されたとき、担当者が途中で変わって、すべての否定するようになった。どういう方向でいきましょうってなったとき、さぁ〜わかれへん、それを考えるのがあなたの仕事でしょと言われる。クライアントには指示する責任があると思う。きちんとしきっていただければここまでにならなかったんだろうなと。違うと言われたら100でも200でも出すのがコピーライターの仕事やと言われたんやけど…。
以前、代理店の営業マンと一緒に仕事をしていて、みんなでクライアントにラフ持っていったんです。それまでは僕らのラフをベタ褒めしていた営業マンが、いざクライアントに怒られると、僕らの方見て「お前ら何やってんだ!」って激怒。めちゃくちゃ驚いたけど、彼は彼なりのやり方でずっとクライアントといい関係を築いている。そういう芸当ってすごいなって感心しました。
あ、そういう話いいですね〜。ひと昔前の、神がかった仕切りをする営業マンのエピソードなど、ベテランのみなさんから若い人たちに教えてあげてほしいんですよ。
代理店の営業マンで、ナショナルとか大きな会社相手に仕事してた人の話なんですけど。ああいう人って、北新地とかで接待する日々なのでお金かかるんですよね。すごい華やかな人やなぁって思ってたんですけど、ある日、彼がベロンベロンに酔っ払ってしまって家まで送っていくことになったんです。タクシーの中でも眠りこけてたのに、家の近くまで来たら急に起きて「ここで下りる」って言い張る。結局は家まで送ることになったんですけど、実は彼、ボロボロの文化住宅に住んでたんです。家具もほとんどなくて大量のスーツと、あとは冷蔵庫だけ。僕はまだ若かったし、カルチャーショック受けましたよ。彼曰く、「こういうのはひとつの芸、営業マンは演技せなあかんねん」とのこと。富裕層と付き合っていこうと決めて、その考えを貫き通してたんでしょうね。
じゃあ僕は舞台プロデューサーの話。東京で舞台関係の撮影があって、有名演出家のA氏と一緒に仕事したんです。翌週にまた別の舞台の撮影があったんですけど、タレントの撮影って難しいんですよ。どの人を大きくするかとか、どっちを上に持ってくるかとか。プロデューサーがタレント本人に許可を取りに行くのに同行して、まずは某大物タレントのところへ。その人はミュージシャンでもあったから、音楽業界では有名な人を連れていくんです。その件に関係ないのに(笑)。
無事そちらの許可を取ると、次は売れっ子の若手タレントのところへ。道中、急に六本木の居酒屋へ寄って「お前ら飲め」ですから。プロデューサーは一滴も飲まず、なぜか僕らだけ酔っ払った状態でタレントの事務所へ行ったんです。で、タレントのマネージャーに会って開口一番に「こいつらAさんに飲まさちゃってね」と言う。そのタレントは売れてたけどまだ若かったから、実力者であるAさんから認められてるスタッフの仕事なんやって思わせたんですね。居酒屋に入る時間まで綿密に計算してんやろうなって思うと、感心しました。
いいですねぇ〜。こんなエピソードを待ってたんです。意見交換の途中ですが、今回はこのテンションのまま第3の問題へ進みたいと思います。

ある日、大阪街づくり計画(想定)の一環として、大規模な『大阪ブランド化5年計画』が発表され、各界から、大阪出身著名人(行政担当、政治家、公告代理店、スポンサー企業、建築家、音楽家、デザイナーなど総勢20名)がプロジェクトメンバーとして収集されました。その中に、デザイナーのひとりとして選ばれたあなたは、後日、企画会議とされる初会合に参加。
しかし、会合が始まるやいなや、大きな不安がよぎります。新聞発表がなされたプロジェクト(メンバー名も掲載)であるにもかかわらず、ほぼ白紙の状態。さらに、メンバーの顔ぶれからしてまとまるはずのないチームだと察知したのです。
自分の武勇伝で机上の空論を語るだけの巨匠たち。自社の利害しか考えていないスポンサー企業、おべんちゃらでお茶を濁す広告代理店。自分のポジションばかり気にする政治家、そして、彼らの狭間で場を仕切れず、アタフタしているだけの行政担当者。
さて、うまくいけばあなたの名前を世に知らしめることができる、しかし、失敗すれば…というビッグプロジェクトの関係者となったあなた。
この機会をどのように捉え行動しますか。
(1)このまま参加し続ける
(2)辞退する
(3)別の選択肢
それぞれの選択と理由、そして立ち回り方を教えてください。

現場で起こる問題3
参加します。プロジェクトは嫌な感じやし、ぜったいに成功しないやろうけど、あえてそこに挑みます。挑んで暴れます。お金もらえて、しかも何してもいいやんという絶好の機会。自分のスキルアップのために、好き勝手なことを試して勉強させてもらうと思います。
参加します。著名人と同じテーブルに並ぶ機会がないので、彼らはどんな発言をするのか、どんな生態なのか観察したい。その間しっかりメモをとって、後日小説にして大賞を獲るとか…。プロジェクトが失敗しても、話のネタには困りません(笑)。
参加します。そこでいろいろな人脈を作りたいですね。10年前ならつまらないって辞退してたかもしれないけど。
辞退します。どうせ参加するんだったら成功させるために参加したい。大阪大好き人間なので、『大阪ブランド化5年計画』自体にはすごい興味がありますが、最初から失敗するとわかっているのなら参加する意味がないし、時間のムダですよね。大阪の役に立つとはっきりわかれば参加します。
参加します。これだけの巨匠ばかりなので、自分も参加して巨匠の列に加わる。プロジェクトが失敗したとしても、失敗したのはプロジェクトであって、私の失敗じゃないですし。
参加します。巨匠の方々がいて、烏合の衆になってるんだったらひとりであがいても無力。軽い気持ちで深入りせずに参加するのもいいと思います。これじゃダメだとみんなが危機感を持って、テコ入れを始めたら「よっしゃがんばろう」と張り切ってみる。状況を見ながら、おいしいポジションをキープしたいです(笑)。
参加します。流されるとこまで流されてもいいんじゃないでしょうか。ギャラが発生しなくても、プロジェクトが失敗に終わっても自分にデメリットはないですし。
参加します。きっとこれも御前会議ですよ。誰にも責任ない。みんな自画自賛するんじゃないですか。失敗しても、いずれ話題から消えて風化していくやろしね。
いちびって参加します。これだけの多業界の言語が飛び交う様を見てみたいんですよ。
失敗しても自分に影響ないと思うし、著名人と横並びになれるし、いいことだらけじゃないですか。仕切れずアタフタしてる行政担当者と裏で仲良くなって、「僕がみんなと話つけてきますよ」って、巨匠たちの窓口になるなど、暗躍して後で評価されるほうが楽しい。
みなさん、プロジェクトが終わった後まで見据えて判断してらっしゃる。そこまで考えられるのは経験地の高い方ならではやなと感じますね。
では、もしみなさんがメンバーを仕切らないといけないのなら、どうやって仕切る?
めちゃ暴れます。大阪のプロジェクトやのにまったく関係ない山形の人連れてくるとか。だってほら、大阪の人が大阪のこと考えたらロクなことならへんから。
プロジェクト終了後、次につなげる方法は?
とりあえず自分を広報するときの資料には「大阪ブランド化5年計画に参画」と明記。
僕は暗躍するはずなので、それぞれのメンバーと飲みにいったり遊んだりすると、別にアピールしなくてもその人脈で当分は食えるんじゃないかなと。たとえば仲良くなった政治家に「先生の選挙ポスター作らせてくださいよ〜」とかお願いしたり(笑)。
みなさん、ありがとうございました。まだまだ聞き足りませんが、時間が来たのでこれですべての問題を終了します。今日は大勢のオブザーバーの前でミーティングを開くという、僕にとっては初めての試みで、最初はめちゃくちゃ緊張しました。経験値という意味ではみなさんにいろいろな話きけました反面、考え方や価値観という点では年齢やジャンルは関係ないと思ったのが正直な感想です。これも、みなさんが今も第一線で活躍されているからなのでしょうね。今後もこの街のクリエイターへのご指導、よろしくお願いいたします。


開始当初の緊張感はどこへやら、最後はこれまでにないほど打ち解けたムードで3時間におよんだミーティングは終了しました。途中、オブザーバーも巻き込むなど、エサキさんの仕切りも絶好調。2月の公開ミーティングの開催が今から楽しみです。
経験豊富なクリエイターの方々ばかりに参加していただいた今回のミーティング。どの問題に対しても、「自分がこの状況におかれたら…」と想像するより実際の体験に基づく意見が多かったのが印象的でした。辛辣な意見がポンポンと飛び出した一方で、おもしろ発言も過去最多。若手クリエイターは、ユーモアのセンスも見習うべきかもしれませんね。
終了後は、恒例の懇親会へ。スピーカーの方々にオブザーバーの方々も加わり、世代を超えたクリエイターたちの交流は夜更けまで続きました。