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クリエイティブクラスター(株)井上模型製作所×組立通信
先端の5軸加工機を駆使し、高精度な試作品を短納期で仕上げることに定評がある井上模型製作。立地や規模だけをとらえれば「町工場」かもしれないが、その内実は大企業に勝るとも劣らない。同社の改革と成長を最前線で指揮する常務取締役の井上佳宣氏に話をうかがった。


5軸加工機、模型、3次元加工…。私たちクリエイターからすると、とても難しそうな世界に感じるんですが、まずは御社のお仕事について教えてください。
「模型」って、確かに、プラモデルなどの模型をイメージさせる言葉ですよね。子どもから「模型を作ってほしいんです」って電話がかかってきたこともあるんですよ。「おっちゃんとこでは作れないし、作ったらびっくりするぐらい高いよ」って答えました。
私たちが社名に掲げている模型とは、量産品に対する試作品のことです。今でこそ試作品、試作品製作会社という言葉は一般的なのですが、当社の創業時はその言葉がなかったんです。そこで、模型という言葉をあてました。
扱っているのは、家電製品や自動車の部品、それにルアーなどの試作品。メーカーが新商品を開発する際、図面レベルで設計が煮詰まってきたら、次のプロセスとして実物で動作の確認などを行う必要があります。このとき、私たちの作った試作品が活用されているのです。取引先の業種が幅広いこともあり、扱う素材も多種多様です。アルミやプラスチック樹脂を使うこともあるし、木材を使うこともあります。
これらの素材を、四角い塊から製品の形に削りだしていくために用いるのが、専用の加工機です。中でも当社の最大の特徴となっているのが5軸加工機。従来の加工機は3軸加工機といって、タテ・ヨコ・前後という3つの軸に刃物やワーク(加工される素材)などを動かしていました。この3軸に加え、ワークを傾けたり回転させたりできるようになったのが5軸加工機です。
四角いワークを削っていく場合、5軸加工機は、ワークを固定するために機械に接している面を除き、5面のどの方向からも削ることができます。ところが3軸加工機ではこうはいきません。別の面や斜め方向から削るためにワークを機械にセットし直さなければならないのです。この手間が大きいんです。というのも、私たちが扱う製品の精度は1/1000ミリ単位。これだけの精度で加工しようと思えば、機械へワークをセットする位置にズレなど許されません。微妙な調整を重ねながら所定の位置にセットするのは、大変な作業なのです。この回数を減らせるので、5軸加工機は加工スピードが上がるのです。
また、微妙な調整を重ねる機械へのセッティング作業は、どんなに人と機械の技術を駆使しても、回数を重ねればズレが生まれてきます。つまり、セッティング回数の多い3軸加工機は精度ミスのリスクが高いのです。対する5軸加工機はセッティング回数を少なく抑えられますから、必然的に加工精度が高まることになります。どの業界でもそうでしょうが、試作品業界でもスピードと精度は、顧客の大きな関心ごと。これらに高いレベルで応えられることが、お客さんに選んでいただいている理由だと思います。

高性能な機械を取り入れるという経営は、早くから取り組んでいたのですか。
そうですね。5軸加工機は同業者でもまだまだ利用していないところが多いですから、業界では早め早めの取り組みをしてきたと言えますね。
これは社長の考え方であり、私も引き継いでいる考えなのですが、作業環境など、工場内のつくりは会社の顔だと思うんです。だから積極的に投資しています。例えば工場内の温度管理。加工精度は、朝や夕方の気温が低いときと日中とでは、素材の伸び縮みなどで1/100ミリずつずれが生じます。1/1000ミリレベルの仕事をしようとしているのに、これでは話になりません。そこで私たちは、常に気温を一定に保てる温度管理システムを導入しています。ところがいわゆるシャッター工場の中には、温度管理が必要なほどの精度が求められる仕事をしているにも関わらず、この点に注意を払いきれていないところもある。もちろんこう言った会社も、熟練の技でズレを解消し、納品時には高精度に仕上げています。しかし、スピードが求められる時代において、大きなハンディを抱えてしまっていると言わざるを得ません。

また、音への対策も早くから行いました。大きな機械を動かして鉄などを削る仕事ですので、とにかく音がうるさいんです。これが社員のストレスになっていました。ストレスがたまった状態ではいい仕事なんてできません。そこで、工場内に防音機能を備えた部屋を設置。そこを設計などのデスクワークスペースにすることで、気持ちを落ち着けて仕事に集中できるようにしました。金属加工の仕事をしていると、音の影響で夕方には疲れて仕事どころじゃなくなってくるんですが、当社の社員は、夜になっても元気いっぱいですよ。

プロモーションはどのように取り組んでおられるのですか。
まず、2年前に作ったホームページがあります。SEO対策に力を入れて取り組んだおかげで、しっかりと機能してくれていると思いますよ。
展示会にも積極的に出展しています。最初は共同受注グループの一員として参加し、そこで展示方法などを学びながら、今では単独で出展できるようになりました。展示会に独自参加できるようになるというのは、社員みんなの自信が深まるという効果もありますね。もちろん、出展費用とその効果のバランスが納得いくからこそ、「次も出そう、次はどんなふうに出そう」という意欲や工夫が社内でふくらんでくるんですけどね。

ただ、課題も感じています。試作品業界を含め、中小製造業の世界では機械化が進んでいます。当社はたまたま時流を先取ることができましたが、高性能な機械は今以上に一般的になるでしょう。そうすると、極端な話、どの会社で作っても同じものが同じ納期でできてしまうようになるんです。かつてのように職人の手作業に頼り、個人の能力差が明らかだった時代では考えられないことです。つまり、他社との差別化が難しい時代になっているのです。
ここで大切になるのがプロモーションだと考えています。同じ設備を持ち、同じコストで仕事ができるとしても、それを顧客に伝えられている会社と伝えられていない会社では、当然のことながら前者が選ばれます。また、伝えるべき情報の質の変化にも対応が必要だと感じています。これまでは「5軸加工機があります」という情報がアピール材料になりますが、最近は、「今、5軸加工機は使える?」という問い合わせが増えてきました。顧客のこの問い合わせに素早く的確に応える、もっと言えば、問い合わせなくても疑問を解決できるような情報の提供が必要なのかもしれません。また、同じような仕事をする2社のどちらに発注するかを悩んだとき、「おもしろい会社」などといったメンタルな要因も意思決定を左右します。人間ですからこれは仕方ないことですし、当然のことです。この心の機微に入り込めるかどうかは、まさにプロモーションの力ですよね。
目標とするのは、当社に対するいい評価を独り歩きさせてくれるような仕組みを作ることです。たとえば、ロゴマークを一目見ただけで「これは井上模型だ」「井上模型といえば、いい仕事をするあの会社だよね」といった具合です。これが新たなホームページになるのか、看板になるのか、あるいは会社の外装になるのかはわかりません。もしかしたらトータルで考えないといけないのかもしれませんね。この点に関して、私たち自身では思いもつかないようなアイデアや戦略をともに考えていただけるクリエイターさんに期待しています。

ありがとうございました。
大阪市北区池田町1-43
2008年10月23日(木)
組立通信LLC. 真柴 マキ氏
(株)ビルダーブーフ 松本 守永氏