「クロスポイント」は、プロモーションやブランディングに関心がある市内中小企業に対する、この街のクリエイター取材班によるインタビュー記事です。
ジム工芸は、ありとあらゆる工業製品の試作品を、直接メーカーの担当者、あるいはインダストリアルデザイナーから受注し、モックアップ(製品の外形を実物そっくりに創る模型)からワーキングモデル(製品の内部機構や技術的な要素まで検討された模型)まで、こと細かい作業まで対応している。二代目で会社の営業を一手に引き受けている営業管理室の東川室長を株式会社ゼック・エンタープライズの長尾さんがインタビューした。

今では営業アスリート、東川さん
この取材のきっかけになったのは、メビック扇町のセミナーで講師をしているエサキヨシノリさんの中学時代の同級生が東川さんだったというつながりから。しかし、それぞれ学校では有名人だったが、当時は出会っていない。というのも、エサキさんは今を髣髴とさせる「トーク力」でとにかく目立つ存在だったのに対し、東川さんは「脚力」で、3000mでは全国2位の地位まで上りつめた実力。後に、1500m走では3分56秒で、都大路の駅伝も出たホンマモンのアスリート。そのため学生の頃は接点が無く、東川さんは友達から中小企業の応援事業をしているエサキさんの評判を聞いて、紹介してもらうことで再会した。
目下、東川さんの今の悩みは、自社のホームページのブログが思いのほか進まないこと。
35年前の創業ですが、どんな仕事をされているのか、私はまったく分からないのですが、うまく教えていただけますか?
平たく言うと電気屋さんに並ぶ前の、新製品としてこれから未来に発売される製品を実際に「カタチ」にするサンプルを手作りで作っています。デザイナーさんが作りたい製品をモデリングされた3Dデータから、実際作ったらこんなモノになるという実物大の試作品を作る仕事なんです。
カタチのスペックがすでにメーカーで決まったデータをそのままもらって作るのですか? たまには、製品のデザインもジム工芸でされるのですか? ここにボタンを付けた方がいいとか言うときはあるんですか?

ええ、ほとんどはメーカーさんやデザイナーさんが3Dでデザインしたデータをいただいて、それを元に試作品を作ります。稀に、構造的にどうしたらいいのか聞かれる場合があるので、その時は一緒になって考えます。家電や車関係、イメージとしては製品の金型まで作って最終製品までやっていそうな感じを受けられると思いますが、ウチは試作品までの作業になります。その試作品で様々な実験や検討を経てメーカーさんは最終決定をされ製品の量産に入ります。こういった試作品は量産前のイメージを掴むために必用で、実際に手で触れてみたり、角度を変えて表面に印刷されている文字を見たり、色を確かめることができます。
ボタンの押し心地などの再現もしている?
そうですね、クリック感なども含めて作ります。デザイナーからの指定色にも対応し、表面に操作関係の文字を印刷して、中身が無いだけで見た目は完璧です。さらに、営業サンプルとして10個から50個ぐらい作ることにも対応しています。金型を起こしていてはコストが合わないので、ウチでは、真空注型(しんくうちゅうけい)というシリコンゴムの型を作って、それに樹脂を流し込んで複数個作成します。サンプルがありますので触ってみてください。


同行取材班のメンバーは初めて見る人ばかりだったので、そのぷにょぷにょの触感の物体にひたすら感心してしまった。そのカタチがまた細かい。
ジム工芸の強みは、ゴム型がゆえ、本来きっちり寸法を出しにくい真空注型(しんくうちゅうけい)で寸法通り成型できることです。さらに、塗装の付着しない樹脂に特殊な加工を施しきれいに仕上げることも得意です。作業の工程は全て金型と同じですが、唯一違うのはアンダーといって覆いかぶさっている形状でもゴム型なので「無理ヌキ」ができるのです。入れ子になっている構造でも意外と簡単に再現できるんですよ。
ところで今後、この業界はどうなっていくのですか?
いや、厳しくなっています。施設的・技術的に参入障壁が低いため、競合が増えているからです。ライバルが増えたので、真空注型(しんくうちゅうけい)は「寸法がでない」とか「塗装がうまくのらない」などの悪い評判がメーカーさんに伝わっているなど、誤解されていることも少なくありません。中国、東南アジアが安価で受注していることも影響しています。
じゃ、目立つために「踊れる技術集団」なんかどうですか?
ウチはまじめですからね。(笑)
他社と差別化するために固定した担当者が、継続して同じお客様の仕事をしています。離職率もものすごく低いのでベテランが多いのも強みです。担当が代われば仕上がりが微秒に変化しますから。

ベテランがプラスチックで作ったロゴ入りティッシュのミニチュア。技術力をしっかりPR。
新規営業はどうされています?
飛び込みも含めて、私が率先して営業しています。また、紹介してもらうことも増えていて、つながりの大切さを感じています。現社長の時代には同業者の交流はほとんど無かったと聞いています。でも、最近は「2代目同士仲良くやろうや」といった動きもあります。
もともと創業当時はデザイナーさんと直接仕事をすることが多く、夜通し横につかれてあれこれ散々言われて作業をしたそうです。今はメーカーの開発担当者からの発注中心ですが、当時から意匠についてこだわっていた経験が、ジム工芸の技術のベースになっています。
ジム工芸の名前の意味を教えてください。ロゴのデザインもいいですね。
「ジャパン・インダストリアルデザイン・モデル」の頭文字をとってジムです。ロゴタイプも当時から使用しています。現社長が作りました。小学生の頃から見ています。
最近、モデルチェンジが激しくて、もしかすると、デザイナーの思い入れが少なくなるということは感じられますか?
それはありますね。でも市場でモノが売れないと、新しい製品がでませんよね。そして、売れるモノを作ろうと思わないと開発費が抑えられ、機能を削るとかデザインを流用するとか私達にとって悪循環になります。ウチはiPodのような手のひらサイズのモノが得意です。かつて、ある家電で提案した奇抜なカラーが別な会社で採用されて、悔しい思いをしたことがあります。冒険するデザインや色にもこだわったものづくりに関わって行き、それが世に認められるとうれしい。そして、従業員が笑っていられる会社にもしていきたいです。

あらゆる要望に対応するため
材料をストック
インタビュー後、工場の内部を一つひとつ回って説明いただきました。それぞれの職人が得意な持ち場で、自信を持って実にいい仕事をされていました。長時間、ありがとうございました。

メビックの企業同士のマッチングにも興味を持っていただきました。工場での長尾さんと東川さん。
(株)ゼック・エンタープライズ 長尾 朋成氏
文:(株)ファイコム 浅野 由裕氏
クロスポイント Vol.3 公開:2008年09月10日
大阪市北区豊崎2-10-22