「クロスポイント」は、プロモーションやブランディングに関心がある市内中小企業に対する、この街のクリエイター取材班によるインタビュー記事です。

帽子一筋75年。時代の流れに合わせて緩やかに変化しながら歩んできました。
田口帽子(株)×(株)ゼック・エンタープライズ

大阪市中央区玉造にある田口帽子株式会社さんが帽子を作り始めたのは、今から75年前。昭和8年創業の老舗帽子メーカーです。帽子を作り続けてきた長い歴史と時代の変遷、これからの展望について、三代目社長・田口好幸さんにざっくばらんにお話を伺いました。聞き手は、大阪市北区で独自のSP事業を展開する株式会社ゼック・エンタープライズ社長、長尾朋成さんです。

長尾

うわー!帽子、たくさんありますね!有名なキャラクターがたくさん!

田口

うちは現在、子どもキャラクター帽子を中心に、オリジナルブランドで子ども帽子とレディース帽子を作っています。これは半シーズンのものですよ。今年の秋冬ものです。ここにあるのはすでに商談済みのものばかりで、今は来年の春夏ものに向け商品を企画中です。最近の流れとしては春・夏・秋ものにキャップやハット、それと冬物のニット帽や厚い素材のものという感じで、1年2シーズンで回ることが多いですね。4月頃から暖かくなり、10月頃まで暑いでしょう。春もの、秋ものがいらないんです。温暖化の影響ですね。

長尾

生産は国内工場ですか?

田口

国内にも工場はありますが、ほとんどが海外での委託生産になっています。理由は二つあります。一つはもちろん生産コスト。もう一つは国内で生産・縫製する人の高齢化です。作業員の高齢化のために工場の生産量が下がったり、跡継ぎがいなくて廃業されるケースもあります。寂しいんですけどね。

長尾

昭和8年創業…長いですよね。時代の移り変わり、とくにファッションの流行などが商品の内容を左右してきたのですか?

田口

そうですね。創業は祖父の代なのですが、当時は紳士物の帽子が多かったと聞いています。パナマ帽などのハット類ですね。子ども向けキャラクター帽子を始めたのは先代からです。その内容も少しずつ変わってきていますけれど。

長尾

というと?

田口

当時はキャラクター帽子というと、野球チームの帽子がメインでした。でも最近は野球帽をかぶっている子ども、少ないですよね。現在、野球帽は球場の応援グッズとして売っているのがメインです。同時に子ども向けキャラクターの種類が増えてきたというのも、大きな変化ですね。20年ほど前は、人気のあるキャラクターはせいぜい3種類ほど。テレビ番組から生まれていました。でも最近はテレビ以外にも例えばゲームなど、キャラクターの出所が多様化し、種類も増えています。必然的にアイテム数が増えるわけですね。

「キャラクター帽子=田口帽子株式会社」から脱皮することが目標

長尾

これだけ種類がそろっていると、「子どものキャラクター帽子といえば田口帽子さん」というイメージがあると思うのですが、そういう戦略も考えていらっしゃるんですか?

田口

いや、逆にそこから脱皮したいと考えているんです。従来、メーカーは主に問屋と取引をしていました。なので「キャラクター帽子なら田口帽子に」…逆に言うと「それ以外ならよそのメーカーに」となっていたわけです。しかし最近は取引形態も多様化し、メーカーも小売業者と直接取引することも多くなってきましたので、キャラクター帽子以外にもいいものを作れば、小売業者から買ってもらえるわけです。

長尾

取引形態の多様化はどの業界でも進んでいるようですね。

田口

そうですね。問屋がメーカーを通さずに自分のところで海外生産して小売業者に卸していたり、帽子業界以外の業者が雑貨などの一部として帽子を海外から入れて卸したり…と様々な形態が出てきています。

長尾

その中で田口帽子さんは、今後どのような方向をのばしたいと考えていらっしゃるんですか?

田口

「キャラクター帽子=田口帽子」のイメージから抜け出したい、そんな考えでオリジナルブランドの子ども・レディース帽子を作っています。特にレディース帽子は今後シェアを伸ばしていきたいと考えているところです。

長尾

オリジナルブランド商品のデザインは誰がしているのですか?

田口

社内に企画部があり、そこで企画・デザインしています。また委託加工先でアイデアを出してもらって製品化したりということもあります。ただ、社内の企画部に関しては、長年キャラクターをメインに作っていた関係で制約が多かったので、改めて色やデザインに関して自由な発想をするのが難しいと感じるところはありますね。今後オリジナルブランドを展開していく上ではデザイン力は必須なので、これからの課題だと考えています。

クリエイター×田口帽子株式会社=新しい帽子スタイルの提案?

長尾

帽子というと機能商品でありながら、ファッション性、デザイン性の高いアイテムですよね。そういう意味ではクリエイティブ産業だとも言えると思います。一方、大阪にはたくさんのクリエイターが活躍しています。そんなクリエイターと田口帽子さん、何らかの形で関わり方があるのかなと思うのですが、どんな可能性があるでしょうね。

田口

帽子のデザインコンペなんか面白いかなと思いますね。キーワードというか、コンセプト、条件などをこちらで決めて、それに沿ってクリエイターさんたちに新しい帽子のアイデアを出していただく。それがよければうちで作らせてもらうというような…。

長尾

そうですね。すでに販路をお持ちですからクリエイターさんたちにとっても魅力なのではないでしょうか。ぜひやりましょうよ!例えばどんなコンセプトが考えられるでしょう?

田口

例えば…帽子といえば女性や子どもはよくかぶりますが、男性の使用シーンが少ないですよね。休みの日のスポーツ、趣味などのシーン、また一部の限られた職業のユニフォームなどには使われていますが、一般のビジネスマンは普段あまりかぶりません。男性の新しい帽子の使用シーンなどを含めた提案などがあれば面白いかなぁと…。昔はビジネスマンもスーツに帽子をかぶっていた時代がありました。それに学生帽やベレー帽など、男性の一つのスタイルとして帽子が生活に入り込んでいたと思います。今でもおしゃれな若い男の子がかぶっているのはよく見かけますが、帽子ってファッションアイテムの中でも、なんとなくその人の「人となり」のようなものを表す部分がありませんか?また、機能的な部分を考えても、夏の暑さ対策・冬の防寒対策にも、帽子は有効なアイテムです。ビジネスマンの方々にもぜひ帽子を活用していただきたい。そんなふうに考えると、これからの時代に合った「男性の帽子スタイルの提案」というのも、一つの切り口かなと思います。

長尾

奥が深いですね!こんなに帽子について深く考えたのは初めてです。帽子一つにも時代の流れがあり、スタイルは変化し続けている。クリエイターにとってもいろいろな可能性を感じさせる分野だと実感しました。今日はどうもありがとうございました。

取材班

(株)ゼック・エンタープライズ 長尾 朋成氏

文:(株)ランデザイン 岩村 彩氏

クロスポイント Vol.1 公開:2008年08月07日

田口帽子(株)

住所

大阪府大阪市中央区玉造1-18-6

URL

http://www.taguchi-cap.co.jp/

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