(株)サカタ×情熱の学校

OEMから発信力のあるメーカーへ進化を目指すブランディング。

1960年に創業し、レディースの鞄、ハンドバッグ、財布など革製品の製造メーカーとして、ものづくりを続けてきた株式会社サカタ。Made in JAPANにこだわり、職人の熟練の技が冴える細やかな仕事で定評のある会社だ。同社の2代目、坂田茂雄さんが今後を見据えてブランディングを依頼したのは、情熱の学校 代表のエサキヨシノリさん。昨年からスタートしたプロジェクトの内容や、その成果について語っていただいた。

坂田氏とエサキ氏

自分の足元を固めて、次の世代に繋げていきたい。

坂田

坂田氏

そもそもブランディングをしようと思ったきっかけは、今までなんとかやってきたけれど、私も40代の後半になって、これから5年、15年先を見据えた時、動くなら今だなと思ったんです。うちは大きな商売もしていませんし、今から急成長することも望んでいません。ただ日々の仕事に忙殺されて、自社の強みや弱みも分からなくなっている。そこで、自分の足元をしっかり固めて、良い形で次世代にバトンを渡せる体制を整えたいという想いがあって。しかし私たち製造業の人間は誰に相談していいかわからない。そこで知り合いから、エサキさんを紹介していただきました。

エサキ

お話を聞いて、コンセプトからつくりましょうと。それが2012年の2月くらいです。これまでOEM供給が主体の事業体だったサカタさんが、発信する側のメーカーになっていく、というのが大きなポイントだと思いました。

坂田

私たちの基本はBtoBで、これまでのお客様は問屋でしたが、現在は取引先の7〜8割が小売店に変わってきました。かといってBtoCではない。この状況で私どもは何ができるか、何をしていくべきかといった根本的な考え方を、エサキさんに引き出してもらった上でのブランドづくりというのをやっていただきました。

エサキ

エサキ氏

坂田さんとお話をして、すごく素敵な考えを持ってらっしゃる方だなと思いました。ぼくはブランディングをする時に、つくられている商品はあまり見ないんです。商品にはいろんな事情がつまっていたりするでしょ。それより実際に話をして、本人すら気づいていない熱いものが見えた時に、そこの会社の良さも見えてくるんです。

坂田

私たちは“Made in JAPAN”にこだわるものづくりをしてきましたが、海外の廉価商品と比べられた時、どちらも単なる物入れとして見られたら、価格競争で負けてしまう。これは自己満足かもしれないですけど、見えない細部までとことん追求して丁寧につくることへのこだわりや、自負のようなものはありました。でも自分ではそれを上手く表現できなかった。それがエサキさんとお話していくうちに、自分の考えも整理されていきました。

出発点となるコンセプトは
「彼女のシーンに、物語をタグ付ける鞄ブランド」。

エサキ

ブランディングに中小企業が取り組まれる場合、予算の問題もありますし、大きなことをたくさん描いても意味がない。私のやり方は、ゴール=終着駅を明確にせず、始発駅、つまり現在のポジションから列車(企業)が、どれくらいの早さで走れるかとか体力を見極めてから、その列車が走るレールを考えて、そこから2つくらいの停車駅までを見せるんです。実際2つ目の停車駅に近づけば、おのずと次に進むべき道は見えてきますから。そこに至る最初の停車駅となるのが、コンセプトづくりなんです。

坂田

実はこれまでオリジナル製品をつくっても、コンセプトをつくったことはありませんでした。エサキさんからコンセプトを聞いて、こういう表現の方法があるのかと感心しました。

エサキ

サカタさんの場合、いくつかのステップに基づいてターゲットやニーズを決めて、それに対して提供できる価値や約束ごとをつくって進めました。そして最終的に出てきたコンセプトが、「その日、その時、その場所で、彼女の気持ちに+STORY(プラスストーリー)を提供し続けるハンドバッグ」。ターゲットとして設定させていただいたのは、エレガント路線のセレクトショップに近い店で、そこのちょっとこだわりがある店長が、選んでくれるようなもの。

坂田

BtoBだけど、BtoCに近い考え方ですよね。

エサキ

単なる入れ物としての鞄ではなく、そこに付加価値をつけることを考えました。ターゲットの先にいる消費者のイメージは芦屋界隈に住む若い主婦。彼女たちの毎日のシーンに鞄を通してストーリーを描いてあげるようなものにしようと。

坂田

次にブランドを知らしめるために、名刺とブランドのポストカードをつくってもらいました。そうやって進めていただいている間に、私のほうが国内外の展示会に出品する機会が増えまして。お客様と話す時間がわずかしかない展示会で、この販促ツールが役に立ちました。

エサキ

コンセプトをつくる時に大切なのは、必ずその人らしい言葉や表現を使うこと。自分の言葉でプレゼンできるようなものをつくっておかないといけない。坂田さんの場合は2代目ですから、原点すなわち先代にまで遡っても、生きた言葉でないと。また社長兼営業でもあるので、名刺ひとつとっても、書体、色、写真まであくまで坂田さんらしいと思えるものにすることが重要なんです。

坂田

今ではエサキさんにつくってもらった言葉が、あたかも自分で考えたかのように思えています(笑)。コンセプトをつくることで、同時に向こう側にいるお客様もようやく見えてきました。

販促ツールが効果を発揮。
今後目指すべき方向も見えてきた。

坂田

実際、今回の展示会で新規の注文が2件取れました。京都の老舗草履屋さんには近鉄ハルカスのお店用に別注をいただき、大手商社のコロネットの事業部からはオリジナル商品を受注しました。どのバイヤーも限られた時間内に各展示をまわられるので、「うちはこういうブランドです」と言い切れるものをつくってもらえたのが、良かったと思います。

エサキ

段階があると思うんですよ。まず1番がブランドイメージをつくるための情報や考え方を前に出すこと。次に現実的に何ができるの?となった時に、もっと営業よりのキーワードを出していくと。多くの会社が、安さや早さといった2番目に出すべき言葉を最初につくろうとするから、みんな似た感じになる。まず最初に考えたものを表現した上で、次にその根拠としての技術であったり、スペックであったりを出すことで、オリジナルな表現が出てくるし、納得もさせられるんです。

坂田

ここまで順序立ててやってもらえるのはラッキーだと思っています。エサキさんで良かったとつくづく感謝しています。

エサキ

具体的なアウトプットとして、次の展示会では、“+STORY”というものを軸に、商品のつくり方やその技術力を見せ、ここが売りですよというものを際立たせたブースをつくって、それをホームページと連動させていきます。さらに将来的な話をすると、消費者=“彼女”である方々が、どんな毎日を送っているか、そこにどんなシーンがあって、だからこういう商品が欲しい、という声をいろいろな形でいただいて、商品化する。そういうやり方を、先にお話したレールの中につくっていくことも考えています。

坂田

エサキさんにそういう話をしていただいて、視点が変わった気がします。長い間この仕事に携わりながら、これまでは消費者のことをまったく気に留めず、単純に数字だけを追ってばかりだったなと、反省しきりです。BtoBではあっても、その先で実際、手にされるのは一人。この方に、より良いものをお届けすれば、その周りの方も未来のお客様になっていただける可能性があることにも気づかなかった。ここ1年でずいぶん変わったと思います。お客様からの信頼感は増した気がしますし、私たちの目指すべき方向も分かってきましたから。まだまだこれからですが、少しずつ楽しみながら前に進んでいます。

作品

作品

(株)サカタ

住所

大阪市阿倍野区昭和町2-20-8

URL

http://plusstory.jp/

クロスポイント Vol.42

公開

2013年08月02日(金)

取材・文

町田佳子 町田 佳子氏

取材チーム

情熱の学校 エサキ ヨシノリ氏
株式会社Meta-Design-Development 鷺本 晴香氏

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