(株)サンエムカラー × G_graphics

『こだわり』『高品質』『瞬発力』、関西発のモノづくりが一流としのぎを削るために必要なもの。

国宝級の絵画や古文書の複製に定評のある印刷の株式会社サンエムカラー。1984年の創業以来「芸術の工業化」を目指し、その高い技術を磨いてきた。木村伊兵衛写真賞、造本装幀コンクールの受賞も多数、その実力の証左である。卓越した技術力は「職人の心」なしには語れないという。そんな同社社長、松井一泰氏は関西から全国に向けて『モノづくりの価値=感動』を発信しようと模索中である。どんな未来を見据えた事業展開を目論んでいるのか、G_graphics代表でアートディレクターの池田敦氏が、お話を伺った。

取材風景

クオリティの差はこだわりの強さ

池田

平和紙業さん主催の展示会『PAPER FIELD -IRO IRO-』では、お世話になりました。

松井

こちらこそ、ありがとうございます。大阪のクリエイターさんと交流することができ、いい勉強になりました。

池田

サンエムカラーさんというと、マッチ&カンパニー、赤々舎など写真集や美術書を数多く手掛けていらっしゃいますが、関東のお仕事は全体の何割くらいですか。

松井

美術関連では7割8割が関東のお客様です。関西発のプロジェクトを増やそうと、いろいろやってはいるのですが、結局、関東発になってしまうんです。たとえば京都の出版社、青幻舎さんと東京のミヅマアートギャラリーさんとの間を私どもが取り持ち、現代アートの作家さんをフィーチャーしようといった試みなんかもそうです。

池田

大阪にサテライトオフィスを開設されたのは販路を広げることが目的ですか。

松井

ビジネスとしては当然そういったことも視野に入れています。大阪の市場規模は京都の10倍ですから。しかし、まず、大阪に拠点をおくことでクリエイターのみなさんやお客様に弊社のことを知っていただき、しっかりとした信頼関係を築きたいと思っています。京都、大阪を拠点に関西発のプロジェクトを発進させたい。価格競争に巻き込まれない『高品質なモノづくり』という価値提供が、印刷業界への、また、クリエイターさん、企業のお客様、そしてエンドユーザーのみなさんへの貢献になると信じています。

池田

東京のお仕事が多いということですが、大阪と東京のクリエイターの違いはなんでしょう。

松井

東京では、たとえば日本デザインセンターさんなどは、仕事に対して一切の妥協がないですね。関東のみなさんはこだわりの強さが違うように感じられます。

私たちは関西発というスタンスで後世に残る仕事をしたいと思っています。打倒関東といったら語弊がありますが、よりいいモノをつくりたい。ただ実際、関東はスゴイです。クオリティが高い。でも勝ちたい(笑)。

関西のクリエイターさんや企業さんも「いい武器」をもっているはずなのにアピールの仕方があまり上手じゃないのかもしれませんね。その点、関東のみなさんは『宣伝』に長けているように思います。もちろん実力が伴っていますが。

一流の仕事に対応できるだけの瞬発力

松井

いま弊社では製版に20名ちょっとおりますが、その中で8名くらいは画像を操作することができます。普通の製版会社ではあり得ない人数構成だと思います。というのも一流の写真家の先生やアート系の書籍などでは高度な技術が要求されます。それらのニーズに対応し、また、24時間体制で仕事をされている関東の製版会社さんに負けないためにも、そのような体制にならざるを得ませんでした。コストのことを考えると厳しいのですが、それでもいいモノをつくるため、競争力をキープするためには必要不可欠な布陣だと考えています。

池田

地域に関係なくいいモノをつくるための『こだわり』は、個々人がレベルアップする中で培われていくものなんでしょうね。

松井

もちろん、ただこだわればいいというものではなくて、その先にあるクオリティを担保したものでないと意味がありません。最近の事例でいえば、ミシマ社さんの『透明人間 再出発』が第46回造本装幀コンクールで「経済産業大臣賞」と「出版文化産業振興財団賞」をダブル受賞しました。他にも写真界の芥川賞と呼ばれる『木村伊兵衛写真賞』を4年連続通算5回受賞しています。これも写真家さんのアイデア、クリエイターさんのこだわり、そして作品に適した印刷方法それぞれが上手く響き合った結果だと思います。


上段左・第36回2010年、下薗詠子「きずな」 / 上段中、右・第35回2009年、高木こずえ「MID」「GROUND」
下段左・第34回2008年、浅田政志「浅田家」 / 下段中・第33回2007年、岡田 敦「I am」
下段右・第29回2003年、澤田知子「ID400」

私たちの仕事は『宝物』を後世に残すこと

松井氏

池田

いま何に力を入れていらっしゃいますか。

松井

現代アートの作家さんの作品をもっと世の中の人に知っていただきたいと思い注力しています。束芋(たばいも)さんもそのひとりです。他にも木あるいはプラスチックの板を書籍の表紙に使用したり、1mm厚の紙に印刷するなど、かなり挑戦的な仕事もしています。クリエイターさんには、「どんなリクエストにも応じてもらえるので、より自由な発想でモノづくりが出来る」といった嬉しいような、困ったような評価をいただいています(笑)。

新しいことへのチャレンジや難易度の高い仕事というのは、現場も引き締まるしスキルアップにもつながります。結果、私どもの存在価値を高めることになるのだと捉えています。

池田

出版不況といわれ久しく、また、電子書籍の台頭など新しい変化の波が押し寄せてきています。今後どのような事業展開をお考えですか。

松井

ネット全盛の時代です。京都には印刷通販の大手2社があります。デジタルの勢いは止まりません。しかし、だからこそ私どもは対面営業など人と人が直接コミュニケートする現場を大切にしたい。その結果として産まれる『後世に残る印刷物=宝物』にこだわりたいのです。ただビジネス的に成功すればいいというのではなく。

創業者の父が築き上げた路線は守りながらも、新たな挑戦もしていきたいですね。モノをつくるだけではなく継続的な『売れる仕組みづくり』を。出版社、クリエイター、書店のみなさんといっしょに形作っていくこと、それが今後の課題だと思います。そのためにも『宣伝』をもっと上手にしていきたいです。

池田

本日は貴重なお話、ありがとうございました。ボクたち関西のクリエイターはサンエムカラーさんのような技術力や現場力をお持ちの企業さんとコラボできるだけのスキルを身につけなければならないと思います。そして精神的にも、もっともっと貪欲になる必要があると強く感じました。

(株)サンエムカラー 大阪サテライトオフィス

住所

大阪市都島区網島町12-11

URL

http://www.sunm.co.jp/

クロスポイント Vol.39

公開

2012年12月20日(木)

取材・文

Lua Pono Communications 赤瀬 章氏

取材チーム

株式会社ジーグラフィックス 池田 敦氏
株式会社明成孝橋美術 孝橋 悦達氏
株式会社マチック・デザイン 松村 裕史氏

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