森田アルミ工業(株)×PROCESS5 DESIGN

デザインをロジカルにとらえて、先の見据えた「ものづくり」を。

アルミ素材を使って、デザイン性の高い階段やエクステリアの商品を製造する森田アルミ工業。1972年に森田社長の父(現会長)が創業した同社は、住宅用のアルミ製外部階段の製造で事業を拡大させてきた。その後デザイナーとのコラボレートによる製品を開発をスタートし、その多くがグッドデザイン賞を獲得受賞。現在はエクステリアにだけでなく、インテリア、オフィス家具など、機能とアートの融合した独自の製品開発に取り組んでいる。いち早くデザインに目を向け、ヒットに結びつけた、その成功の秘訣について語っていただいた。

取材風景

デザインが会社を危機的状況から救った。

吉澤

ものづくりをされてる会社がデザイナーと組んで商品開発やコマーシャルをして物を売っていく。それが上手くいっていない現状があります。そういう状況で、森田さんが優れたデザインのヒット商品を出しているのは、どういうきっかけがあったんでしょうか。最初に手がけられたムラタ・チアキさんとのコラボ「METAPHYS」のプロジェクトが元になっているのですか?

森田

弊社の主力製品に外部アルミ階段があって、大手メーカーのOEMで15年以上つくっていたんですが、2002年にメーカーの方でつくることになりまして。売り上げの約20%を占める商品がなくなるうえ、これまで大切なお客さんだったところが、突如ライバルになる大変な事態です。階段づくりに関するノウハウを生かしつつ、急遽新しい展開を考えなければならなくなったんです。私の中で自社商品は、意匠性に欠けるという思いもあったので、プロダクトデザイナーにお願いしようと。それで東京の倉田裕之さんに依頼することになったんですが、同時期にムラタ・チアキさんと出会って、結果的に倉田さんは階段の「TAS」を、ムラタさんのメタフィスでアルミのパーテーション「falce」を作り、ほぼ同時に出しました。

吉澤

会社の厳しい状況もあって、新しい展開を迫られたんですね。反響はどうでしたか?

森田

デザイナーの倉田さんが建築事務所をされていて、TVの『劇的ビフォーアフター』でリフォームするにあたり、「TAS」を使っていただけて。社名や制作過程が全国に放送されたんです。村田さんもメタフィスをスタートする直前に「falce」を出せたので、メディアにも良く取り上げていただきました。それでグッドデザイン賞に出してみたら、中小企業庁長官賞をいただきました。そういったことが重なって、社員の製品に対するモチベーションが上がったと思います。


「最小限の部材による構成」というコンセプトのもと制作された、アルミ室内階段「TAS」は、アルミの形状美を最大限に活かされている。さらにガラスの透明感が空間に明るさをもたらし、照明効果によってさらに豊かな表情を生み出す。

デザインをロジカルにとらえ、商品開発から販促ツールまで自社制作。

吉澤

それが次のステップに繋がったのですね。

森田

なんとなく自分たちの新しい方向性が見えてきたところがあったし、それが公の評価をいただけたことが自信に繋がりました。

吉澤

それ以前はデザイナーと組んで、ものづくりをすることはなかったのですか?

森田

まったくなかったですね。デザイナーといえばファッション界の人というイメージで。

吉澤

商品開発といえば、社内で技術職の人間が集まって、つくられていたのが普通だったと。

森田

これまでの商品は、現場加工がしやすいとか強度がしっかりしている、という評価の一方、「見た目が良くない」という声もあった。エクステリア自体、どうしても大型になりますし、屋外に取り付けるため、耐腐食性のある素材となるので形状の自由度が制限されてしまうんです。

吉澤

機能的なところが重視されて、デザインの入る部分が制約されてしまうと。

森田

それを業界自体が言い訳にしてきたところもあります(笑)。室内設置の階段やパーテーションを出したことで、国内のインテリアの展示会やミラノ・サローネにも行ってみて、エクステリアの世界との違いに愕然としました。しかしその感覚を自社に取り入れることによって、エクステリア業界の中では差別化が図れると思いました。

吉澤

現在はほとんどの商品を自社でつくられてるそうですが、パンフレットも社内制作ですよね。商品づくりはもともと主力の仕事だけれど、販促ツールまで自社でつくられていることに感動しました。これが通る会社のスタンスも素晴らしい。社内で反対意見とかはなかったのですか?

森田

弊社はエンドユーザーまで間に数社入るので、伝えたいことが上手く伝わらないもどかしさがあって。でもカタログがコンセプトに沿ったつくりになっていれば、きちんとこちらの想いをエンドユーザーまで伝えることができるかなと。コンセプトを具現化するのがデザインだという確信がありましたので、イラスト、フォント、余白に至るまですべて意味がある、と。そういったロジックを整理しながら進めていたからか、反対は まったくありませんでした。


METAPHYSブランドのひとつとして登場した、アルミラウンドパーティション「falce」。事務的な間仕切りとは一線を画す柔らかな曲線デザインをもち、新しいイメージの空間作りを可能にしてくれる。

ものづくりにおいてデザイナーに求めるもの。

吉澤

社内でデザインできる環境を整えながら、今も外部にも発注するのはどうしてですか?

森田

自社のデザインの幅を広げていくために、まだまだ必要かなと考えています。ムラタさんとの仕事も継続していますし、現在も女性のデザイナーと新しい商品を進めています。男性的なエクステリアの世界に、女性の視点やナチュラルさ、優しさを取り込みたいということもありまして。

吉澤

森田さんがデザイナーに求められるものって、どういった部分なんでしょうか?

森田

外部のデザイナーを定期的に登用することでいい刺激が生まれます。コストや技術に課題が生まれた場合、社内なら諦めるところでも「デザイナーさんが言っているし頑張ろうよ」となる。心が折れてしまいそうな時の支えになるんです。皆さんアプローチの仕方も違って面白いし、勉強になります。コミュニケーション能力というか、話の巧みさに学ぶことも多いです。

吉澤

デザインしている側からしても、会話の仕方でデザインできるものって変わってくるんで、コミュニケーションは重要視しています。クライアントとのコラボで、考えてもみなかった化学変化結果が起きるんですよ。こっちは論理的にいくんですけど、お客さんの方でこんな感じがいいんじゃないの、って言われたものに意味を付けると具体性を帯びて面白いものができたりして。

森田

その面白さはあります。でもデザイナーに依頼したから、あぐらをかくのではなく、自分たちで売るんだという覚悟は必要。商品が売れなくてもデザイナーの責任ではなく、それを選択し、売ることができなかった自分たちにあると考えているので。


エコマーク認定商品「ARaco」は、数年で廃棄されることが多いグランド整備用木製トンボを、アルミでつくることで軽量化。先端の整地プレートには再生プラスチックを使用している。木製の伝統的な使用感を踏襲しつつ、長期間の使用に耐えられるプロダクトに。

明確なコンセプト=「計画」の重要性。

森田氏

吉澤

ものづくりをされる上で、いちばんこだわってらっしゃるのは、どういう点ですか。

森田

この数年、弊社が大事にしているのは「計画」です。はじめる前にどれだけコンセプトを明確にするかが大事ですよね。誰にどういう風に売っていくか、会社をどう変えたいか、どういう売上構成を目指すのか、それぞれの施策を誰がいつまでに終了させ、いくら儲かるか、といったところまで具体的に立てていく。

吉澤

話をうかがっていると、デザインに対するロジカルさをかなり意識されているようで。クライアント側の森田さんから、そういう話を聞けるのは新鮮です。クリエイター感があるというか。

森田

そう言っていただけると嬉しいです。ロジカルな考え方、コンセプト、計画があって進めるというのは、プロダクトデザインだけでなく、工場の生産など、組織で仕事を進める上では必須だと考えているので。

吉澤

最後にお聞きしたいんですけど、森田さんにとってデザイナーってどういう存在ですか。

森田

コンセプトを明確な言葉に置き換え、それを実現するためのアイデアを出す存在ですね。匠、とか、先輩、先生のような。

吉澤

横に並ぶイメージなんですね。依頼する側・される側の立場ではなく、一緒に歩いてもらうけど、一歩か二歩先を行っててくれる存在というか。今後の展開はどう考えてらっしゃいますか。

森田

今後は、中国で同じような商品が安くて高品質で作られた時に、負けない企業体質をつくっていかないといけないと考えています

吉澤

実際、コストで競争できるものなのですか。

森田

できると考えています。加工費だけでなく、アルミや樹脂などの素材の分野に入り込んでいければ、さらにコストダウンが図れるし、プロダクトデザインの幅も広がると思います。そういった部分も含めて自分たちの成長を図りたいですね。

森田アルミ工業(株)

住所

大阪府阪南市尾崎町530-1

URL

http://www.moritaalumi.co.jp/

クロスポイント Vol.36

公開

2012年08月30日(木)

取材・文

町田佳子 町田 佳子氏

取材チーム

PROCESS5 DESIGN 吉澤 生馬氏
有限会社ユース 植田 由貴子氏

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