緑屋紙工(株)×(有)ガラモンド

既成概念にとらわれない“別注オリジナル封筒”でショウブ。

薮野氏

1957年創業、大手封筒メーカーなどからの“別注オリジナル封筒”(※以下、別注封筒)下請け専門からはじまり、封筒ひと筋50余年。約5年前からは、新たなオリジナル窓付封筒の需要を掘り起こすべくネット販売を開始し、お客さまのアイデアをカタチにするモノづくりにも着手。今後はクリエイターとのコラボも模索中という。封筒業界の革命児的存在・薮野社長と営業の辰巳氏に、印刷手法や体裁にこだわりを持つガラモンド代表・帆前氏が興味津々にインタビュー。

ビジネスのヒントは、現場ではなく人にあり。

工場風景

帆前

早速ですが、ネット販売を始める転機はなんだったのですか?

薮野

きっかけは、ごく単純です。下請けだけでは繁忙期と閑散期の差が激しく、とくに受注が少ない夏場は経営者として毎年不安で。それが5〜6年前の夏、ふと、数枚しかない受注伝票をめくっている自分を客観的に見て、とても寂しい光景やなと。会社としては売り上げが伸びているときでしたが、反してダイレクトメールが少なくなっている時代、このままではダメだと思ったのです。

帆前

普通、そう思っているうちにまた繁忙期がきて落ち着いてしまうもの。でも薮野社長はそこで行動を起こされたのですね。

薮野

工場風景

それまでは現場から全然出ませんでしたが、そうと決まれば、まずは現場から出ると宣言。職人みんなのサポートのおかげで、封筒業界以外の人とも交流する時間ができ、たくさんのことを勉強しました。大阪産業創造館の「うりうり教習所」というネットショップ支援コースにも通い、そこで卒業生である『挨拶状ドットコム』の社長の講演に触発され、本格的にネット販売にチャレンジしようと決意。挨拶状でありなら封筒もありだと。

帆前

それで『封筒屋どっとこむ』を立ち上げたんですね。

薮野

工場風景

弊社では、既製封筒とは違う路線“小ロットの別注”を強みにネット販売を開始。別注封筒のネット販売は、当時では珍しかったんじゃないでしょうか。おそらく弊社が先駆者的な立場にいるかと思います。

帆前

私の理解不足ですが、別注封筒は印刷会社か封筒メーカーにお願いするものだと思っていました。大半のクリエイターも同意識かもしれません。正直、御社のような封筒専門会社の存在は知りませんでしたし、ましてやネット注文できるなんて。

薮野

クリエイターの方とは少し遠い位置にいたかもしれません。印刷会社が封筒を受注した場合、既製・別注に関わらず封筒メーカーに印刷込みで再発注するところがほとんどのはずです。それが別注封筒ともなると、さらに封筒メーカーから弊社のような封筒専門の下請けに依頼が舞い込みます。そういった業界の流れも含め「別注封筒とはなんぞや?」という勉強会を、クリエイターの方に開きたいと思っているのです。そこを理解していただけたら、制作の幅が広がるのではないでしょうか。

帆前

その勉強会、ぜひやってください。今のお話だけでも興味津々、まだまだ知らないことがいっぱいなのでしょうね。

お客さまのアイデアをオリジナル商品化。

工場風景

帆前

ホームページには、お客さまの作品事例をたくさん掲載されていますね。会社内容もあり制作意図がよくわかって参考になります。あとはシルクなのかPP貼りなのかの印刷手法があれば嬉しいです。それにしても、みなさん満足度が高いようですね。

薮野

工場風景

下請けだけの時代は、正直、お客さまは見ていませんでした。メーカーからクレームのこないモノづくりだったんです。ですがネットを通じてお客さまの要望を直接聞くようになり、発想の面白さに感動すら覚えて。まずはお客さまのアイデアをカタチにすることからはじまったんです。あと、カタチそのものにこだわる方も多く、それを改善するために封筒のトムソン抜き型も自社で持ちたいと思っています。印刷やトムソン抜きの知識も身についたことで、新たな仕組みもできつつあり、お客さまには本当に感謝しています。

帆前

お客さまに育てられ、当初の“別注”という強みにより厚みがでてきたということですね。

薮野

はい。新しい技術も生まれました。ひとつは、既製封筒の頭部分のベタ印刷に関しての技術。普通、既製封筒の頭部分にベタ印刷をすると、どうしても裏が汚れてしまうんです。それがここまでキレイに印刷できるのは、おそらく日本で弊社だけ。下請けとしても封筒メーカーの方に喜んでいただいていると思います。

辰巳

社長もですが、弊社の職人は新しい機械や技術に敏感で、「できない」と終わるのではなく「できるんちゃうか」というチャレンジ精神が旺盛のようです。それぞれにアイデアを出し合い構想を練り、実機で試作を重ねてようやく完成した技術なんです。

薮野

ふたつめは、弊社で一番チカラを入れている窓フィルムへの印刷技術です。

帆前

あの、住所が見えるように封筒に貼られた窓枠のフィルムのことですか?

薮野

はい、あれです。あるお客さまから「窓フィルムに印刷できないの?」という問い合わせがあったんです。私にはない発想だったのですが、なるほど面白い、これはぜひ!と。

辰巳

辰巳氏

窓フィルムへの印刷そのものは、ロール状のフィルムを引き出して通常印刷をするだけと簡単。ですが、封筒へフィルムを貼り付ける加工は、ロール状のまま機械にセットして行われます。つまり印刷したフィルムをもう一度ロールに戻す手間が必要になってきます。さらに透明のままのフィルムと違い、印刷済みフィルムだと一枚一枚の位置合わせがかなり難しく、最初に0.1mmでもズレると、何百枚も貼り付けていくうちに大きなズレになるんです。

薮野

工場風景

フィルムをロールに戻すのは協力会社のおかげでクリアしました。弊社では、再び職人たちと試行錯誤しながら、位置合わせのために機械を改良。これも日本では弊社のみの技術です。現在、窓フィルム印刷に関して実用新案申請中で、今後一般に売り出す準備をしています。

クリエイターとのコラボで狙う集客アップ。

帆前

どんどん厚みが増していきますね。薮野社長のことですから、すでに今後の展望もお持ちなのでしょうね?

薮野

次はもっとリアルな集客として、クリエイターとのコラボレーション展開を考えています。

帆前

クリエイターとのコラボ、メビック扇町でも声をかけたら集まりそうですね。

薮野

それはぜひ実現していきたいです。さきほどの窓フィルム印刷は、すでにイラストレーターの方とコラボして商品化。窓からのぞくのが住所だけとは限らないんですよ。面白いでしょう。これは実際にロフトや東急ハンズに置いていただけることが決まっています。デザインごと欲しいという小売店もありました。今後は、そんなお客さまの要望をもとにデザインする制作部門の立ち上げを進めていきたいんです。弊社からもデザイン提案できるという“強み”をプラスしていけたらと。

オリジナル封筒 オリジナル封筒

帆前

“お客さまのデザインをカタチにする”だけでなく、“自社オリジナルデザインをお客さまへ”と言う相互フォローの立場の確立ですね。

薮野

オリジナル手紙セット

さらにはクリエイターの方とコラボしてオリジナル商品を試作し、大手アニメ会社や観光施設などへ持ち込み営業をかけたいとも思っているんです。手始めに作った観光レターセットシリーズは、奈良などで販売されます。普通は、ダイレクトには行かないでしょうけど、ダメもとでも、弊社は全然違う営業方法でいきたいんです。そうやってルートづくりをすることで、クリエイターの方たちにもメリットが生まれればと。

帆前

アグレッシブですね。クリエイターとしてもやりがいがあると思います。

薮野

ほかには弊社で10人のクリエイターの方と契約して、ネット上でそれぞれのクリエイターの部屋を作るんです。そこからお客さまが好きなクリエイターにフルオーダーしたり、テンプレートから選んだり。

帆前

薮野氏と帆前氏

それはよいアイデアだと思います。社用やショップ封筒にしても、個人封筒にしても、変わった封筒を作りたくても自分でデザインできないという方もいらっしゃいますものね。 私は別注封筒を作るさいは、カタチより紙やインクに凝ろうとしていました。でもきっと、どこまでオリジナルで作れるかを知らなかったからですね。窓に印刷できるとか、一般的な紙でもここまで面白いことができることがわかれば、新しいアイデアも生まれそうです。ぜひ、冒頭でおっしゃっていたクリエイターのための封筒勉強会を実現してくださいね。

薮野

きっと今まで気付かなかった、知らなかった封筒の知識を身に着けていただけるはずです。クリエイターのみなさまのご参加お待ちしています。よろしくお願いします。

緑屋紙工(株)

住所

大阪市平野区喜連東5-16-15

URL

http://www.futo-kobo.com/

クロスポイント Vol.30

公開

2011年12月20日(火)

取材・文

hi-c 石田 多美氏

取材チーム

有限会社ガラモンド 帆前 好恵氏

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