インプリージョン×arbol

観光のプロモーションにはクリエイターの柔軟な発想が不可欠。

取材風景

大手旅行代理店の大阪着地型観光商品の開発のほか、観光プランニングを行う株式会社インプリージョン。同社社長でツーリズムプロデューサーとして活躍しているオダギリサトシ氏は大阪市内を走り回り、町や店を独自の視点で分解し観光コンテンツに組み立て続けている。今回はそのオダギリ氏を設計事務所arbolの堤氏がインタビューしました。

発地型から着地型の観光へ

最近の観光にはどのような傾向があるのでしょうか?

オダギリ

日本人はもともと観光好きで、江戸時代からお伊勢参りや日光に旅するなどの娯楽があったわけで、自分の住んでいる場所から遠方に旅に出るという観光スタイルですが、ここ10年ぐらいで新しいスタイルがうまれてきたんです。

つい最近新しいスタイルができたのですか?

オダギリ

インターネットが一般の方に普及して、旅行に行く前からいろんな情報を簡単に仕入れることができるようになりました。今までガイドブックに書いてあった情報が、簡単に無料で手に入る時代がきました。その結果、消費者のニーズもだんだんとより深い情報、詳しい情報を求めるように変わっていったんです。名所や旧跡を見学するだけでなく、地域ならではの生活や文化を知ろうというニーズができてきたんです。

確かにblogやtwitterなどのSNSでも地元の方の情報が簡単に手に入るようになりましたね。

オダギリ

オダギリ氏

そうですね。それに宿も簡単にwebで予約できるようになって、旅行会社に頼らずに旅行する人が増えてきています。その結果、旅行会社のあり方が変わってきたのです。旅行者を送り出す従来型の仕事だけでなく、旅行者を地元に呼び込むという観光スタイルに変わってきました。こういうスタイルを着地型観光と呼んでいます。対して従来型のものを発地型観光と言います。ただ、今でも旅行会社の商品の95%は発地型です。着地型はまだ5%に満たないところですが、今後増えていくと思いますし、このスタイルの観光プランニングを提案するのが当社の仕事になります。

どの地域もプロモーションに対するクリエイティブな発想が足りない。

地域が情報発信していくべき時代がきているということなんですね。

オダギリ

オダギリ氏

そうなってくるとネックになってくるのが、地域プロモーションです。うちの地域はこんな魅力的なことがありますよ、とぜんぜん知らない方に伝えることなんて容易ではない。パンフレットやwebをつくるところまではできても、「魅せ方」が下手なところが多いですね。そういう魅力的に伝えるという意味でクリエイティブな発想がないとダメです。

いろんな地域でキャラクターが生まれたりしていますね。

オダギリ

かわいいものをつくったり、かっこよくするだけが良い方法ではないと思います。この地域のターゲットはどこにある? この町の魅力を知ってもらうにはどこ? と考えたときに、実はつくったものがミスマッチかもしれない。マーケティングとデザインが今の着地型観光には最も足りていないところです。どの地域も苦戦していますよ。

そういう意味ではメビック扇町のイベントなどを活用していただいて、たくさんのクリエイターと知り合っていただきたいですね。

オダギリ

クリエイターの方に依頼する仕事はたくさんあります。ですが、地域とクリエイターのマッチングが難しい。マッチングできればいいのですが、なかなかその力は今のところ達成していないですね。ある地域でうまく集客できたデザインを他の地域に持っていってもうまくいかないこともあります。

観光につなげるツールをつくるためにはどんなスキルが必要ですか?

オダギリ

コピーをどうするか? ライティングでどう表現するか? 写真をどう見せるか? などで、その地域に行きたい、行きたくないが変わってくると思います。観光のプロジェクトは地域の企業や学校や協会やさまざまな意見をもったところとお話する機会が多くなるので、アイデアがぐわーとなっている(笑)のを最後にうまくまとめてみせる必要があり、うまく組み立ててみせるクリエイターが絶対に必要ですね。日々変わってゆくアイデアの中からツールをつくりあげてくれるパートナーがほしいですね。

観光というスキームを通じて、地域の価値を高めていきたい。

なるほど。そもそも何がきっかけでオダギリさんは今の仕事をはじめられたのですか?

オダギリ

自動車販売の営業マンをやっていたのですが、仕事をしながらビジネススクールに通い、経営の勉強をしていました。そこで学ぶ中で、地域貢献ビジネスをしたいと考えるようになりました。同時期に、自分の住んでいた上本町の飲食店の経営者の方から、近辺の会社がなくなるなどで街から人が減った、ということを聞き、これこそ社会貢献ビジネスだと、様々な取り組みをはじめました。インターネットを使って上本町周辺の地域情報を発信していましたが、その取り組みが新聞にとりあげられ、活動が広がっていきました。1年ほどは自動車販売の仕事と地域を紹介する仕事の二足のわらじをはいていましたが、どちらも中途半端になるのが嫌なので、最終的には自動車販売の仕事を辞めて、街を盛り上げるほうをとったんです。

すごい転身ですね!

オダギリ

はい(笑)独立後は日銭を稼ぐために貸し自転車屋を開業し、自転車を借りた人に地域の見どころを案内する商売をはじめました。そのうち自転車を貸し出すだけではなく、いっしょに街に出て直接案内しようといろんな大阪の地域の街歩きツアーをつくりました。私のミッションは観光というスキームを通じて、地域の価値を高めていくことだと考えています。

今後の展望を教えてください。

オダギリ

大阪には観光客を受け入れるための施設というか集えるようなスペースがないなあと思っています。将来的にそういうセンターが大阪に必要だと思っています。それと同時に、大阪でのノウハウを活かして全国の集客に悩む地域のお手伝いをやっていきたいと思っています。

今日はどうもありがとうございました。

(株)インプリージョン

住所

大阪市阿倍野区阿倍野筋2-4-48
金村ビル3F

URL

http://impregion.jp/dom/s/

クロスポイント Vol.28

公開

2011年12月05日(月)

取材・文

狩野哲也事務所 狩野 哲也氏

取材チーム

arbol 一級建築士事務所 堤 庸策氏

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