(有)山添×(株)ランデザイン×(株)ファイコム

クリエイターと共に、新しい表現方法を模索するパートナーに

プロローグ
創業約30年 激変する印刷業界を目の当たりにしてきた

城東区・京阪野江駅近くにある有限会社山添は、創業約30年になる印刷会社だ。静かな住宅地の中にたたずむ会社の2階におじゃますると、活版印刷機と大小取りそろえられた金属活字が堂々と鎮座していた。
「昔ながらの活版印刷機も健在ですし、現在はCTPも取り入れています。その他、特殊加工も含め、様々なニーズに対応しています」という2代目社長・野村いずみ氏。「多くのクリエイターと知り合って、仕事の幅を拡げたい」と、今回メビック扇町にコンタクトをとったという。

従業員は7名。一般企業や個人商店、役所や学校にまで、幅広く仕事を行っている野村氏であるが、現在に至るまでの道のりには迷いも多かった。
「印刷業界の変遷を目の当たりにしてきました。短大時代から、アルバイトで仕事を手伝ってはいたのですが、会社を継ぐつもりはなかったんです。それで短大卒業後、グラフィックデザイナーになりたいとデザイン専門学校に行きました。ところが専門学校でデザインを勉強するうちに気づいたんです。あれ?これってうちの仕事と同じやんって(笑)。それからですね。本格的に家業に関わるようになったのは」。

飄々と語る野村氏であるが、その節目節目で自分の道を模索しながらの道のりだったであろうことは想像にかたくない。卒業後は(有)山添で、デザイン部門を立ち上げたり、デジタル機器を導入したりと、専門学校で得た知識を活用して尽力してきた。
「現在は自分でデザインをすることはなく、営業に専念しています。経営することの責任を感じると同時に、仕事のおもしろさを感じてきたのは、ここ2?3年のことかもしれません。最近扱う仕事にクリエイティブな印刷物が増えてきたこともあって、もっと多くのクリエイターに出会えたらと思っているところです」

デジタル媒体が増える中、紙でこそ伝えられるもの、紙にしか伝えられないものがあるはずと語る野村氏。そんな野村氏と「これからの印刷業とクリエイターの関係」をテーマに、北区で広告企画会社を経営する(株)ファイコム代表・浅野氏、同じく北区でグラフィックデザイン会社を経営する(株)ランデザイン代表・浪本氏が対談した。


今ではなかなかお目にかかれない活版印刷機と金属活字。
主に名刺の印刷に使用しているという。

対談
クリエイターと印刷・加工業者のよりよい関係作りとは

浅野

今までの経緯をお聞きしていると、野村さんは印刷業界の営業も知りつつ、現場も知りつつ、さらにデザインも知りつつ…業界について幅広くご存知ですよね。それは強みになると思うのですが。

野村

ここ最近、印刷のおもしろさに気づきはじめたんです。たまたまクリエイティブな印刷物の受注をしたことがきっかけで、その後も同じような仕事が増えてきて…。印刷って奥が深いなぁと、今更ながら思っています。

浪本

クリエイターの中には印刷の仕上がりにとてもこだわる人もいますよね。なかなかOKがもらえないとか、無理な要望をされることもあるのではないかと思いますが、そんな中での仕事の魅力ってなんでしょう?

野村

やはり受注から仕上がりまで、印刷や加工など何人もの人たちが関わって、一つのコラボレーションのような形で仕事ができることですね。仕上がったものはクリエイターの「作品」とよばれるものですから、私たちも要望に応えようと一生懸命になります。仕上がると達成感がありますね。それにそのような仕事を通して知り合う方々も、個性的な方が多くて…それも魅力ですね。

浅野

確かに印刷や加工次第で、仕上がりが全く変わることもありますよね。仕上がりを満足してもらうためには、野村さんの方もクリエイターについてよく知っている必要があると思います。それに印刷だけでなく、素材や加工方法についても知識を深めないといけないでしょうね。

野村

そうですね。クリエイティブな仕事に関わりはじめると、ただ安くすればいい、早く仕上がればいいという印刷物をこなしているだけでは物足りなくなってくるんです。もちろんやったことがない加工や、ちょっと無理じゃないかなという要望をお願いされることもあります。だけど、そこで「うちはやっていません」とか「それは無理です」と簡単に言うのはもったいない。何とか要望に応えられるように、可能性を探るんです。それは知識や人脈が拡がるチャンスですから。それが実績となって次につながればいいなと思っています。
今後は、方法や設計をこちらから提案できるような印刷会社になりたいですね。「こんなものが作りたい」という漠然とした要望に応えられるような仕事ができればと思っています。そういう仕事に協力してくださるクリエイターの方に、ぜひ出会いたいと思っています。

浅野

なるほど…。ではなおさら、いいクリエイターとの出会いは大切な要素ですね。

浪本

私たちクリエイターの仕事の本質は、クライアントの要望に対して、いかに提案ができるかということですから。ぜひ輪の中にどんどん入って、新しい表現の可能性をいっしょに探るような仕事をしてほしいですね。

野村

世界が拡がりそうですね!逆に聞いてみたいのですが、クリエイターさんたちは加工業者や印刷業者と、どのような関わりを求めていらっしゃるのでしょう?

浪本

単なる受発注の関係だけではおもしろくないですよね。私の周りには、積極的にクリエイターと関わろうと、意欲を見せるもの作り系の業者さんがたくさんいらっしゃいます。こちらから「こんなものが作りたい」と要望を出す。すると業者さんからも「こんなこともできます」とアイデアが来る。「だったらもっとこうしたい」と要望を出す…。両者が「アイデア」と「技術」のギリギリのせめぎあいの中で、いいものが生まれるのです。反対に、もの作り系の業者さんから「こんな素材があるけれど何か新しい表現に使えないか」と聞かれることもあります。そこでこちらもアイデアを絞って提案する。お互いにビジネスの新しい可能性を探っていくんです。そうして生まれた関係は、信頼関係を生み、長く続くと思っています。

野村

信頼関係は大切ですよね。現在関わっているクリエイティブな印刷物は、仲介業者さんからの仕事が多いのです。お付き合いの長い仲介業者さんからは信頼もいただいていますし、それは一つのビジネスのやり方だと思うのですが、クライアントの要望が直接伝わりにくいという難点があります。今後は、クリエイターの方と直接関わり合うな仕事を増やしていきたいと思っています。印刷会社の営業というより、印刷コーディネーターのような存在になれたらいいなと。

浅野

それは今後の野村さんのビジネスのあり方に大いに影響しますね。私たちクリエイターの立場からすると、色々な要望に対応してくださる業者さんを知っているというのは、強みにもなります。そうとは言っても、今までのお客さんからの仕事、つまり量をこなすという仕事もやめるわけにはいかないと思うのですが、そのバランスが難しいですよね。

野村

そうなんです。量をこなす仕事と考えれば、自社のHPを立ち上げてネットで受注というような可能性も考えられます。そうではなくて、何かに特化していった方がいいという考えもあります。どんな業界にも当てはまることではあると思うのですが…難しいところだと思いますね。ただ、今日こうやってクリエイターさんとのつながりのきっかけができたので、それは大いに活用したいと思います。「このクリ博4」にも参加しますよ。

浪本

ぜひいっしょに盛り上がりましょう!そして今後もクリエイターのみなさんといい関係を作っていってほしいと願っています。

浅野

私たちにとっても、心強い味方が増えるのは嬉しいことです。今後のご活躍に期待しています。今日はどうもありがとうございました。


使い込まれた機械類が所狭しと並ぶ。
「簡単な機械であれば私も使って作業するんですよ」と野村氏。

エピローグ
クリエイターからの視点


これから積極的にクリエイターの方と
関わっていきたいと語る野村氏

「いかにいい発注業者を知っているか」。これは分野に関わらず、クリエイターにとっての一つの生命線だともいえる。それは相手、つまり発注業者に「いかに自分の意図するところを理解してもらっているか」を意味し、それが「作品」であれ「仕事」であれ、成果物のレベルを左右する要素の一つとなるからだ。今回対談に参加した浅野氏・浪本氏は「大切なのは信頼関係」と口をそろえる。よいものを作りたいという想いは同じ、ただ立場が違うだけなのだと。先行きが厳しい印刷・広告業界。その中でより新しい表現を探るためには、クリエイターと業者の関係も今までのような受発注の関係だけでなく、共に方法を模索するパートナーへと変わっていかなければならない。今回会った野村氏も、そのことを理解し、クリエイターに歩み寄ろうと努力を重ねる一人。そんな人たちといかにつきあうか。同じ“ステージ”の上でいかに“共演”できるのか。私たちクリエイター側の真価が問われる一場面であることは確かだ。

有限会社山添

有限会社山添ロゴ

住所

〒536-0007
大阪市城東区成育3-11-8

URL

http://www.yamazoe-p.jp/

代表者

野村いずみ

クリエイティブクラスター掲載ページ

印刷, 活版印刷, 名刺, 軽オフセット, 紙雑貨
「有限会社山添」

クロスポイント Vol.17

公開

2009年10月26日(月)

取材・文

株式会社ランデザイン 岩村 彩氏

取材チーム

株式会社ランデザイン 浪本 浩一氏 / 株式会社ファイコム 浅野 由裕氏

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