ておりや×(株)ビルダーブーフ

原動力は「ひらめき」。ハンドクラフトをテーマに30年、独自の活動を続ける

大阪天満宮にほどちかいビジネス街にたたずむ一軒のビル。3Fの木製テラスには緑があふれ、ウインドウには糸車やフェルト製のオブジェ達が顔をのぞかせる。まるでヨーロッパの街角からやってきたようなこのビルが、今年創業33年目を迎えた「ておりや」だ。1F店舗には色鮮やかな糸たちが、所狭しとならぶ。ここで織物・ニットをはじめとするハンドクラフトをテーマに、幅広く活動する加藤淳子氏。今回は編集・制作を手がける(株)ビルダーブーフ、久保氏が話をうかがった。


熱心に語る代表・加藤淳子さん


後ろに並ぶ織り機は、教室で使用されているもの

久保

よくこの道を通るので気になっていたんです。ここで何をされているんだろうって。

加藤

カフェとまちがえてやってくる人もいるんですよ。店の前に来て「なんやちがうわー」って(笑)

久保

ここで営業されて、もう長いんですか?

加藤

30年くらいになりますね。1Fはご存知のように店舗、2Fは手織り・ニット教室、3Fは事務所になっています。3Fの事務所には、グラフィックデザイナーも数名いるんですよ。

久保

ておりやさんが出されている冊子や広告は、どれもきちんとレイアウトされていて、力が入っているなぁと思っていたんです。そういうことだったんですね。そもそも加藤さんが、この手織りやニットでビジネスを始められたきっかけは、やはりご自身が織りものが好きだったからですか?

加藤


数百種類あるというておりやオリジナルの糸

そうです。興味を持ったのは高校生の頃。そのころは何も分からず、紙を細く手で裂いてそれを織ったりしていました。一本の線が重なり合って面を作っていく。そこから様々な表情が生まれる。そこに惹かれたんです。社会人になって、本格的に織りものを学びたいと思ったのですが、学校や教室には行く機会に恵まれず、独学で学びました。組織図の見方すら解らないので、アメリカの織りの参考書から一番難しいそうな組織図を選び、ひたすら眺めて見方を解明したりね。

多くの人に支えられ、教えられながらの30年でした。

久保

それがお店をしようという発想につながったきっかけは何なのですか?

加藤

当時、私が織りをしようと思ったときに、材料や道具が一度に手に入るお店がなかったんです。だったら自分でお店をすればいいじゃないか、というのがそもそもの思いつきです。店をオープンしたものの織機や道具の知識もさしてない私は、西陣(京都)の機屋さんへ、夕方店を閉めてから何度も通い、織機や道具類のことなどたくさんのことを教えて頂きました。機屋さんのおばあちゃんが話してくださる昔の西陣の様子など、とても楽しく興味深いものでしたよ。

久保

思いつきでスタートはしてみたものの、なにもかも勉強するところから始められたのですね。

加藤

それまで一度も商売なんてやったことなかったですから、すべて手探りです。はじめは自分でいいと思った糸を仕入れてきてとりあえずお店に置いてみることから始めました。友人のお店の片隅を借りて…。当時からハンドクラフト誌に広告を出してみたり、媒体をうまく使っていこうという意識はありました。そのうちに問い合わせがくるようになり、糸屋さんが出入りするようになり、徐々に軌道に乗ってきたという感じです。このビルに移ったのは、お店を始めて3年目くらいのことです。

久保

そんなに早くに! 順風満帆の滑り出しだったんですね。

加藤

いえいえ、決してすぐに軌道に乗ったわけではありません。とてもマニアックな商売ですので随分大変な時期もありました。この33年の間に2人の子供の子育てもありましたし、自分のやっていることが中途半端に思えたこともありました。でもやめようと思ったことは一度もなかったんです。紆余曲折ありましたが、いろいろな方に支えられ、みなさんのおかげで今までやって来られたと思っています。

久保

それが今では、オリジナルの糸を展開されて、織機・道具は国内だけではなくアメリカから輸入販売。織りとニットの教室をされたり、北欧のクラフトを中心とした、オリジナル旅行の企画までされているんですね。

加藤

本当にみなさんに支えられてなんですよ。ておりやオリジナルの糸は、現在数百種類の素材や色のバリエーションがあります。各ロットの色に忠実に染色してくださるのは、京都の染屋さんです。旅行の企画については、毎回現地のスタッフと綿密に打ち合わせをし、一般の旅行会社では企画できない、ておりや独自のアイデアでツアーを作っています。教室については、私は技術を教える「先生」ではなく、それぞれの方の感性をどう表現するかについてお手伝いをさせていただいているつもりです。「ておりやで過ごす時間は、いつでも楽しい時間」をテーマにしています。

久保

素晴らしいですね。それに昨春はグランキューブ大阪で、ておりや創業30周年記念イベントをされたと伺いました。

加藤

30年間この地でお商売をさせていただいていて、何か恩返しをしたいと思いましてね。ておりやに関わりの深いスウェーデンの作家の中から、3人の作家を選び、日本では公開されたことのない素晴らしい作品を展示し、セミナーも開きました。また、他のスウェーデン講師によるワークショップをも企画しました。同時に、手織りをされている方たちの励みになればと思い、国内外から作品を募集した公募展も同時開催しました。会場には、子供たちからご年配の方まで楽しんでいただける手作り広場を設け、指で織るベルトやポンポン作りの実演もしました。たくさんの人に楽しんで頂くことができ、2日間でのべ2500名もの来場者があったんですよ。イベントは、ておりやのスタッフ女性12名だけでやったものですから大変でしたが、予想を上回る来場者数でとてもうれしかったですね。私ができる社会への還元と恩返しでした。


1F店舗には様々な素材が並ぶ


ておりや発行の季刊誌 “ておりや通信「て」”

自分も楽しみながら、人にも喜んでもらいたい。そんな気持ちが人と人をつなぐのです。

久保

2500名とはすごいですね。準備も相当大変だったと思います。そのイベントをはじめ、いろいろと幅広く活動されている原動力は何なのでしょう?

加藤

ひらめきかな。

久保

ひらめき…ですか?

加藤

私はどんなことでも「ひらめく」ということは、機が熟したときだと思っています。ておりやの活動も、私一人ではできません。みんなスタッフやお客さんなど相手あってこそできること。時期が来たら考えがひらめくし、ひらめいたらそれを自然体で受け止めて行動に結びつける。そうすると、人とのつながりやタイミングなど、全てが不思議とうまくつながるんです。そして一度やると決めたら、一生懸命にやる。それが大切です。

久保

なるほど…。加藤さんの、その気負わない自然な雰囲気もそういうところから来ているんですね。

加藤

だからストレスもないんですよ。そもそもストレスなんて、物事の受け止め方一つだと思っています。つまり自分の意識の持ち方一つで、どんなこともポジティブに受け止められると思うのです。たとえ嫌なことでも考え方や思いようひとつで楽しくなる。楽しい事を見つけるのはいつでもできますよね。そうすると何でも楽しいんです。そんな毎日の積み重ねが、その人の「生き方」を形づくると思いませんか?人が喜んでいるのを見ると自分も楽しい。一生懸命やっていると、自然と次につながっていくんですね。

久保

考えさせられる言葉ですね。

加藤

これからも創業以来拠点としてきたこの大阪の地から、私たちなりにいろいろな情報を発信していきたいと思っています。規模も小さく、ささやかな活動ではありますが、関西の文化を少しでも豊かにするお役に立てればいいのかな、と考えています。

久保

今後の活動に期待しています。今日はどうもありがとうございました。

「ておりや」外観

ておりや

住所

大阪市北区天神橋2-5-34

TEL

06-6353-1649

URL

http://www.teoriya.net/

クロスポイント Vol.16

公開

2009年08月25日(火)

取材チーム

(株)ビルダーブーフ 久保 のり代氏 / (株)ランデザイン 浪本 浩一氏
組立通信LLC. 真柴 マキ氏

ライター

(株)ランデザイン 岩村 彩氏

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