被写体に隠された魅力を引き出すプロフェッショナル
福永 幸治氏:スタジオエポック フォトグラファー

中学時代から憧れ続けたプロカメラマン

福永 幸治さん
福永 幸治さん

スタジオ
スタジオ

カメラマンへの憧れは中学時代から持っていた。ギターやスポーツ、プラモデルと、いろんなことがある程度はすぐにできたが、カメラは違った。「SLブームの時、線路際まで近づいて走ってくる機関車を撮影したんです。でも、その迫力が全く写真で表現できていなくてショックを受けたのを、今でも覚えています」。その悔しさがバネになり、大阪芸大へ進学。「学校で写真の知識を学ぶより、プロのカメラマンに現場を学んだ方がいいと思って、10人以上のカメラマンのアシスタントをしましたよ」。朝早くスタジオに行って、スタジオのセッティング。スタジオから学校へ行き、再び仕事場へ。夜は暗室で現像をして、気が付けば朝方。一生懸命になれることが仕事としてある。どれだけ厳しくても、福永さんはそれを楽しみに変えていた。そして、大学卒業と同時に広告制作のプロダクションに就職。しかし、25歳の時、ヘルニアを発症し、独立をせざるをえなくなった。初めての誰も守ってくれることのないフリーランスという立場。厳しいギャラでの仕事もしたし、飛び込み営業も経験した。「カメラマンを辞めたいと思ったことは一度もないですね」。その下積みがあったからこそ、独立から20年以上経った今でも、プロのカメラマンとして仕事を続けることができている。今では、広告、雑誌、ダンスや演劇の広告物のメインビジュアル、ギャラリーでの個展など、幅広い世界で活躍。第一線のフォトグラファーとして評価を受けている。

被写体に隠された魅力を引き出す

仕事風景
仕事風景

ダンスイベントポスター
ダンスイベントポスター

人でも物でも、被写体の中には必ず魅力的なものが存在する。だからこそ、相手を見てライティングを決め、シャッターを切る一瞬に全てをかける。「限られた時間と決められたギャランティーの制約があったとしても、被写体とコミュニケーションを取り、最大限の魅力を引き出すのが使命だと思っています」と福永さんは話す。フォトグラファーとしての強いこだわりが、人や物、風景など、現場の状況に応じて変化する対象物に、真摯な態度で臨ませてくれる。「自分が撮る写真は、どれも納得した出来映え。でも、本当はどれも不納得だったりするんです」。作品や仕事に対してのこの謙虚な姿勢があるからこそ、彼のプロとしての向上心は尽きないのだろう。

次から次へと生まれる表現方法を試していきたい。

作業環境

ブランドコレクションカタログ
ブランドコレクションカタログ

アナログ写真からデジタル写真へと、カメラの世界も変化しはじめている。広告も雑誌も、その他のメディア媒体でも、次から次へと新しい技術が生まれ、古いものが捨てられていく。「新しいものが生まれていくからこそ、次々に生まれる表現方法を試していきたい」。デジタル処理の煩わしさに愚痴をこぼすカメラマンが多い中で、技術の進歩は、福永さんのプロとして、カメラを愛する者としての表現への貪欲さを刺激してくれるのだという。「広告物を見たときに、その写真を見て僕が撮影したものなんだとわかってもらえれば、それが一番うれしいですね」。写真はサービス業であり、裏方である。だからこそ、広告1つにしても、見る者にとってみれば誰が撮ったかなんてわからない。それでもカメラマンがわかるということは、カメラマンの個性が引き立っているということだと言えるのだろう。「まだまだ、たくさんの写真を撮り続けたい」。彼のクリエイティブな意欲は、時代の変化とともに加速し続けている。

福永さん作品

中川 悠氏

公開日:2007年01月23日(火)
取材・文:中川 悠氏