おもしろくて誠意あるイベント企画運営を重ね、業界の指針になりたい
伊藤 勲氏:(有)あい おふぃす

イベントの企画運営、ポスターやチラシの制作など、企業の販促をプロデュースするあいおふぃす。企画書がうず高く詰まれるオフィスを訪問し、代表の伊藤さんに話をうかがった。気のせいか、伊藤さんは少し眠たそう。
そのことを指摘すると、「すみません、昨日も徹夜で企画書を作ってたんです」と笑う。やっと完成したという企画書を見て感心した。フルカラーのぶ厚い企画書には、わかりやすいイメージ画像付きでありとあらゆる企画案が並び、まるでどんなアイデアでも飛びだす打ち出の小槌だ。

事業内容よりハコを優先して独立

伊藤さん

会社を設立したのは平成15年。最初にオフィスを構えたのは中津だった。

「大学卒業後、デザイン会社に就職してコピーライターをやってたんです。その後、転職した広告代理店でイベント企画に携わるように。さらに、販促専門の制作会社を経て独立しました。成り行きですね。どうしてもイベント企画会社を作りたかったんじゃなくて、自分の事務所を持ってみたかっただけなのかも。学生時代から漠然と思い描いていたことですし」

これまでに手がけてきた仕事は、メーカーの商品の販促イベントや記念パーティー、式典などさまざま。代理店の下請けに甘んじるのではなく、クライアントと直接契約する案件が多いのが同社の特徴だ。

「もちろんお付き合いのある代理店もありますし、代理店は通さないと意気込んでいるわけではないんです。ただ、代理店からの依頼はコンペが多いので、数週間かけて企画書を作っても、採用されなければ売上げはゼロ。その点、クライアントと直接やりとりすると、仕事が流れるリスクはほとんどないので、そっちを重点的にと意識してきましたね。同じクライアントと付き合ってると仕事の幅が広がらないので、一長一短ではありますけど」

設立6周年を節目に、新しい事業展開を

企画書

2004年にメビック扇町に入所し、3年後、堂島のオフィスビルに移転。ひたすら走り続けて、気がつけば設立6周年を迎えていた。頑丈な基盤を築いたように見えるが、伊藤さんはまだまだ気を抜こうとしない。

「ほんと、この業界は先が見えないですから。案件の数が不安定だし、報酬もマチマチ。同業で上場している会社なんて、日本でひとつあるかないかですよ。業界のシステムを変えない限り、どの会社も大きくならないでしょうね。ウチはなんとか設立6年目を迎えられたので、今後はイベントだけではなく、別の事業にも着手していくつもりです。もっと会社の引き出しを増やしたいと思っています」

“なくてもいい”付加価値を大切に

事務所風景

伊藤さんの目標は会社を大きくすることや上場させることではない。一見、胡散臭いと思われがちなイベント業界で、きちんとした仕事を続け、“あいおふぃすブランド”を確立することだという。

「ブランドっていっても大げさな話じゃなくて、相手を思いやるような仕事をして、業界の指針のような存在になれたらいいなと思ってます。あと、もうひとつささやかな夢は、カフェを作ること。オフィスの1階がカフェで2階が事務所とか、憧れるなぁ。必要性はないんだけど、趣があるというか。僕らはイベントをはじめとする企業の付加価値を商品にしているので、そういう無駄に素敵なことを大切にしていきたいですよね」

伊藤さんの打ち出の小槌からは、イベントのアイデアだけではなく、未来の事業計画までが溢れ続ける。絶やさぬ微笑と、次から次へと湧き出る理念に裏づけされた展開。やっぱり、伊藤さんは打ち出の小槌をもった大黒天なのだ。

公開日:2008年04月15日(火)
取材・文:岸良 ゆか氏