いいと思ったことは諦めない
廣瀬 圭治氏:キネトスコープ社

驚きと感動の企画を進行中

廣瀬さん

「この街のクリエイター博覧会2007(通称:このクリ)」の実行委員であり、12月11日からスタートするテーマ06「観て聴いて触って、感じる展」のコーディネイターでもあるキネトスコープ社の廣瀬さん。開催目前の準備が忙しいさなかにお話をお伺いした。

観て聴いて触って、感じる展フライヤー

このクリの最終クールはどんなことをするのだろうか。「箱(場所)をあたえられて、好きにやってくれと言われた。それならば純粋にクリエイターとしてやりたいことをやってやろうと」。その内容を伺うと想像しただけでもスゴイと感じた。たとえば壁一面に設置したスクリーンに森の映像が映し出されている。その前にあるタッチパネル上の台風のマークに触れると、一転して画面やサウンドが変わり、まるで台風に遭遇しているような疑似体験ができる。言葉にすれば単純だが、実際体験すると驚きと感動につつまれることは間違いない。

資料

そんなスゴイ企画はどのようにして生まれるのか。「普段からアンテナを張り、いろんなモノを観て、引き出しの中にどれだけ素材があるか。アイデアは、その引き出しの中にある素材をコラージュすることではないでしょうか」。さまざまなことを経験してきた廣瀬さんの言葉には説得力がある。

放浪の果てに見つけた、進むべき道

事務所風景

20代の頃、オートバイにまたがり全国を放浪していた廣瀬さん。お金がなくなるとアルバイトに精を出した。ビルのメンテナンスからゴルフのキャディ、コンサートのスタッフ、鮭工場、飲食業など業種は多様。そしてお金が貯まるとまた旅へ。「自分探し」をしていたと振り返る。「この先何をやっていくのか真剣に考えた」なかで出した答えが、「絵に携わる仕事がしたい」だった。そしてグラフィックデザイナーへの道を歩み始める。その一方で映像にも興味がありVJ(ビジュアルジョッキー)として全国のクラブにも出演。やりたいことに全力で挑んでいく姿勢は、この頃から培われていた。それらの経験が廣瀬さんの引き出しの中に納められ、必要な時に形を変えたり、組み合わせたりすることでスゴイアイデアとして構築される。

だからどんなことも恐れずにチャレンジできるのだろう。

廣瀬さんがフリーランスになったのもまさにそうだった。グラフィックデザイナーとして経験を重ねていたにもかかわらず、フリーになるなら「Web屋をやろう」と考えた。「不特定多数の人、ましてや世界中に発信できるという媒体に魅力を感じたし、グラフィックデザインと映像を扱っていた経験が発揮できる。未経験でもまだまだつけ込む余地のある分野」。そして独学でみごとに「Web屋」になったのだ。この考え方と行動力が廣瀬さんの大きな強みであると確信した。

情熱やプロ意識が、まわりに連鎖していく

事務所風景

「やりたいこと、いいと思ったことは最後までキチンとやる」という廣瀬さんの姿勢や情熱は、プロ意識が強い人たちに伝わり、行動へと変換される。「観て聴いて触って、感じる展」に関してもそうだ。「クリエイティブと技術、ハードが融合するとこんなにスゴイ空間ができる」という廣瀬さんの頭の中にあるビジョンを形にするためには、ハードだけでも一千万円近くかかる。それを各企業が無料で貸してくれるということは、もちろんメリットを感じていることもあるだろうが、廣瀬さんのプロとしてのこだわりに共鳴したからであろうと推測する。また「ナショナル ジオグラフィックの美しい映像を壁一面に映し出したい」とこの企画の発端となった映像を扱っている東京の会社に赴き、映像提供を依頼。なんらかの形で協力してくれるという。

取材を行った時点で「観て聴いて触って、感じる展」のハード面は固まっていた。「あとは中身をどうしていくか? を考えていかなくては」そういいながらも廣瀬さんの中にはビジョンがしっかりとあるように思えた。

こだわりがつまった「観て聴いて触って、感じる展」が間もなくスタート

事務所風景

イベントにかける廣瀬さんの情熱はこちらにも強く伝わった。「これまで最高だと思える仕事はない。がんばった仕事やお客様に喜んでいただいた仕事はたくさんあるけれど。だけど、このイベントが成功すれば『最高の仕事をした』と言えるかもしれない」。廣瀬さんにそう言わせる「観て聴いて触って、感じる展」が今からとても楽しみだ。

最後に将来の目標を尋ねてみた。すると「タコ社長」と間髪入れずに答えが返ってきた。名作『男はつらいよ』に登場する社長なのに邪魔扱いされるキャラクターだ。「自分のマインドを受け継いだ人が仕事を動かしてくれたらいい」そして自分はのんびりするという。その意見には大いに賛成したい。

三島氏

公開日:2007年12月04日(火)
取材・文:株式会社レグ 三島 淳二氏