WEBサイトの価値を分かっていただいた時が
お客さまとの関係のほんとうのスタート
坂倉誠氏:OKデザイン株式会社

板倉氏

WEB制作のプロデュースとディレクションを行うOKデザインの坂倉誠さん。坂倉さんが出会いたいと思うクライアントは「WEBサイトのことをホームページと呼ぶようなお客さん」。そのコトバには、中小企業の経営者にこそWEBサイトの真価を存分に活用してもらいたいという、坂倉さんの熱い思いがある。クライアントと直にお会いして、じっくりとお付き合いし、WEBサイトを作って良かったと実感していただけたところから、ほんとうの意味でのお客さんとの二人三脚が始まるという、坂倉流の仕事への思いなどについて伺った。

クライアントの真意を汲みとり、
一歩先の希望を叶える。

坂倉さんがWEBサイトの企画制作や運営サービスの仕事を始めたのは43歳の時。システム機器販売会社の営業部長として腕をふるっている最中さなかだった。仕事は自社製品のプロダクトマネジメントや、ソフトウエアの受諾開発などにもおよび、やり甲斐はあった。そしてそれに比例するように社内営業や部署間の調整など、組織のための内向きの仕事にまみれている自分に対し「このままでいいのか?」と、胸の奥に積もっていくものもあった。そんな折、東京のWEB制作会社から引き合いがあった。元上司が起業した会社の、大阪オフィス立ち上げのオファーで、受託開発などクライアントのニーズを汲んだ坂倉さんの仕事ぶりを見込んでのことだった。
一念発起の転身は東京での半年間の研修で始まるはずだった…が、実際には一週間の飲みニケーションがあっただけ。「お前のビジネス経験とこれまでの販路があればできる!」と、大阪に送り返された。前職での坂倉さんの手腕を知っているからこその対応だったのだろうが、今振り返っても冷や汗ものだった。しかし船はもう港を出ていた。坂倉さんは大阪に戻ると、大阪市が運営するインキュベーション施設・イメディオにオフィスを構え、顧客の開拓に動き始めた。
お前ならできる!と背中を押した上司のコトバどおり、坂倉さんは新たな顧客を開拓していった。クライアントへのヒアリングを重ね、何をどう伝えるのかの設計図を作り、WEB制作のスペシャリストとクライアントの橋渡しをするのが、坂倉さんの仕事だった。
営業職として重ねてきた経験で、クライアントの要望や、まだ顕在化していない次のステップの希望を読み取ることができた。お客さんと、じっくりと対話を続け、真意を汲みとり、それを叶えるためのモノづくり、仕組みづくりをすることは、WEBサイトの企画制作にも通じることだった。業種が変わっても、仕事のキモが変わることはない、そう確信した坂倉さんは、自社内での制作にこだわらず、協働できる協力会社を探した。クライアントの要望に応じるために、価格、品質、機能、アフターサービスなど、案件にフィットするご提案を生む。顧客の開拓と並行して、クライアントの希望を叶えるための最適なチームを作りうるネットワークづくりに奔走した。


クライアントとの打合せ。お客さまサイドに立った目線でのヒアリングが、WEBサイト企画制作のスタートだ。

クライアントと直に顔を合わせて話をする

WEBサイトは目的ではなく方法だ。クライアントと、その先にあるエンドユーザーとのコミュニケーションを助け、関係を繋ぐためにある。WEBサイトというカタチをつくって、はい、できあがり、というものではない。だから、「非常に広いWEBの世界、1社だけで実現できるレベルには限度があると、WEBについて知れば知るほど思うようになりました」。クライアントの多様な要望に応え続けることは、自ずと協働ネットワークの充実に繋がった。
大阪拠点開設から5年経った2013年、東京本社への赴任を打診された。新たな部署を設立するにあたって、その責任者にならないかという話だった。「たしかに魅力のあるオファーでした。しかし…そうなると、これまで関係を築いてきたお客さんと直にお会いする機会がなくなるんですよ。それでは、お客さんが喜んでくださる顔が見えないし、お客さんの先にいらっしゃるエンドユーザーの姿も見えなくなる」。そう思った時、心は決まった。独立だった。
「お客さんと直にお会いして仕事をするのが好きなんです」。中小企業でWEB担当者のいないような会社の経営者や社員の方たちと一緒に、どんな人に何を伝えていくか、コンセプトづくりから取り組む。アクセス解析を続けて、ほんとうに役に立つWEBサイトづくりをサポートし続ける。ともかくもお客さんと顔と顔を合わせて、じっくりお付き合いすることが、坂倉さんにとっての仕事のキモだ。「そういうことをコツコツと続けるうちに、お客さんがホームページってこんなに使えるもんやったんやなあ…」と、WEBサイトの価値を実感してくださる。そこからさらに、WEBサイトでできることを、お客さんと一緒に考えていく。「お客さんが喜んでくださっているのを感じながら仕事をするのが楽しいんですよ」と、独立を決めた自分流の仕事に、坂倉さんもまた喜びを感じている。


株式会社朋友


日繊商工株式会社

コンセプト作りから手がけたWEBサイトの中から。

人の力を繋ぐプロデューサー

クライアントと膝を突き合わせて話をし、WEBサイトを活用して何をするかというコンセプト作りから始めるのが楽しいという坂倉さん。「ホームページって、こんなに使えるもんやってんなあと、お客さんが嬉しそうに言ってくださった時が、やっぱり何よりのヨロコビですね」。正直、不安もあったし、今も不安はあるというのが、独立の道を選んだことへの本音だ。だからこそ、クライアントの笑顔に出会うために力を尽くし、多様な案件に対応するためのネットワークづくりを怠らない。咄嗟に思い出すだけでも、デザイン、写真、映像制作、フォトレタッチ、ライティング、ブランディング、マーケティング、ネット広告…と、多岐の分野に渡ったプロが坂倉さんを囲んでいる。
「父親がね…大工の棟梁だったんですよ」と坂倉さんはポツリと言った。「施主さんからお話をいただくと、棟梁は材木屋さん、土建屋さん、瓦屋さん、建具屋さん、水道工事屋さん、電気工事屋さん、左官屋さん、設計士さん…と、施主さんのご要望に合わせて、各分野のプロを呼んできてチームを組んでいました。いま思えば、大工の棟梁というのは、プロジェクトを束ねるプロデューサーでもあったんですよね」。
分野こそ違うが、父親と同じことをしている。自分の選んだ仕事のスタイルについて、そう思い当たった時、とても嬉しかったと坂倉さんは言う。施主と、施主の周りに集まる人の笑顔を思って、それぞれの仕事に誇りを持つ職人たちと家づくりをする大工の棟梁。それは、人と人との関係づくりを土台において、クライアントとその先にあるエンドユーザーの笑顔が見える仕事がしたいと選んだ、坂倉流仕事スタイルの原風景ではないだろうか。

OK!といえる仕事、OK!といえるヨロコビ

さて、仕事においても自分がやっていてよかったと思えるスタイルを守る坂倉さんは、楽しむことが好きだ。プライベートではバンドでギターを弾いている。バンド名は「Passion Lives Here Band」。中小企業で働く40代、50代のオヤジたちの応援団として、工場を会場にして、関西を中心に年に2~3度ライブを開いている。バンドのメンバーはそれぞれパッションネームを持ち、坂倉さんのそれは“Passion OK!”。「OKっていうコトバが好きなんです。響きもいいし、誰でもわかって、覚えやすくて、言いやすい」。会社名のOKデザインは、なんとこのパッションネームからのものだ。「ホームページのNOT OKをALL OK!へ」を合い言葉に、お客さんとの関係を育てていくことへの思いは、ますます熱くなっていく。


「Passion Lives Here Band」のファクトリーライブで弾ける、「Passion OK!」。このほとばしる情熱で、人の力を繋いでいく。

公開日:2015年07月15日(水)
取材・文:フランセ 井上昌子氏
取材班:メイクイットプロジェクト 白波瀬博文氏、graphic design studio Einsatz 吉田透氏