空間デザイナー+ディレクターとして更なる飛躍を
山中 広幸氏:アッシュデザインオフィス

山中 広幸氏

大阪を拠点に商業店舗デザインを主に手掛けるHDO/ache design office(アッシュデザイン)。シャープで洗練された美空間の中にどこか温もりを感じる…そんなデザインが印象的だ。限られた条件の中でも“クライアントの思い描くイメージをカタチにする”のが空間デザイナーの仕事だと語る山中氏に仕事の流儀を伺った。

信頼関係がより良い仕事へと繋がる

飲食店や美容室などのデザインを得意とするアッシュデザインでは、イタリアンレストランやバーなどのデザイン設計をオーナーから直接受けることが多い。だからこそ仕事には信頼関係が重要な鍵となる。「オーナーさんと気になる店を巡って実際のデザインやインテリアなどを見ながら話を詰めていくということもよくあります」と山中氏。初めてお店を始めるというケースが多いので、クライアントも漠然としかイメージを持ってない場合が殆ど。イラストや写真では分からない部分も、実際の店舗に足を運ぶことでより具体化していく。「そういうことができるのは個人でやっている強みですね。また、高額のお金が動く仕事ですし、そこでも信用が大切になってきます。ですから紹介で仕事の依頼を頂くことが多いんです」。他にも、空間デザインのみならず家具や装飾品の相談に関しても、細かい希望にも応えられるのが大きな強みとなっている。

実績 実績 実績

目標を持たせてくれた社長との出会い

高校を卒業して、専門学校のインテリア学科に在籍。卒業後は数社の設計会社を経て28歳で独立。独立を目指したきっかけは、勤務していた会社の社長の影響からだった。「とても尊敬できる社長だったので、何歳で独立したかを調べたんです。それが、僕が独立した歳。この年齢で独立していないと、その方の様にはなれないと思った」。誰よりも働いていたという社長は、殆ど不眠にも関わらず生産性も高く、人間的にも素晴らしい人物だった。怒るときは怒るが根底には優しさがある。陰で苦労もしてきたが、そのようなところは微塵も見せない。「まさにターニングポイントな出会いでした。デザインセンスにも影響を受けたと思います。今でも、お会いすると緊張しますね(笑)」。

ディレクションを視野に入れた姿勢で

「男性的なデザインだとよく言われます。それが自分の持ち味だと思いますが、将来はアパレル店舗も手掛けて、デザインにおける“女性らしさ”というのも課題にしていきたい。色々な面で自分がどう変わっていくのか、これからが楽しみなんです」と話す。そんな山中氏の仕事とはどのようなものなのだろうか。

「デザインだけでなくプレゼン、クライアントや業者とのやりとりなど、様々な業務があります。プレゼンではゆっくり話すように心掛ける。完成予想図はパースが基本ですが、手描きとCGで作成します。特に手描きのパースは特別感を出すときにアプローチします」。また、工事を進める際に細かい変更にも目を光らせる。「施工中もクライアントから意見を求められるのですが、感覚的なことはあまり言いません。例えば、飲食店の場合、光りの入り方によって食事の見え方が異なり、売り上げまで変わってしまう。ですから、この光を無くして欲しいと言われても、理論的に説明して納得してもらうようにしています」。

デザインのこだわりに加え、経験値からのアドバイスも欠かさない。そして、試したいものはどんどん提案していく。そのような姿勢がアッシュデザインのカラーを決めているようにも感じられる。

氏にこれからの展望を伺うと和やかに「数名のスタッフを育てて、トータルでディレクションができる会社にしていきたいと考えています」という答えが返ってきた。
「空間デザインの会社をずっとやっていてもディレクター業までできる人はかなり少ないと思います。僕も基本プレイヤー気質ですから、なかなか難しいのかも知れませんが、プレイヤーとディレクターの中間ポジションのような形ができたら面白いと思うんですよね」。

打合せ風景 平面図

仲間との活動は、柔軟な姿勢を育む

「plants house」看板

アッシュデザインとは別に活動しているメビック扇町からの発信で関わることになったブランディングチーム、+728(ナニワ)。グラフィック、インテリア、ライター、イラストレーターなどといった様々なジャンルの人間が集まり、商品のブランド力の強化を図る。「ジャンルが違うので、自分では思いつかないアイデアがあったり、仕事のスピード感に刺激を受けたり。まだまだ課題もありますが、頑張って動いていきたいですね」。

学生時代の友人が発端となった“植物屋”plants houseでは、ビルの屋上を利用し、週末に営業している。植物を育てるところからスタートし、実店舗として経営。営業日はローテーションで店頭に立ち、販売や仕入れにも携わる。「ほぼ手作りで、自分たちの手で店を育てている感じが楽しいですね。屋上緑化にも貢献でき、今後、色々な可能性を秘めているのではないかと思っています」。ネットショップも視野に入れながら、鉢のデザインを考えたりするのも楽しいという。
“植物の見せ方”をデザインする姿勢で取り組むplants houseのこれからにも注目していきたい。

公開日:2014年11月13日(木)
取材・文:Phrase 久保 亜紀子氏
取材班:HIROMINAMI.DESIGN 南 大成氏、株式会社ライフサイズ 南 啓史氏