顧客と対話し、一緒に歩み、成長する。そういう仕事をしていきたい。
池田正人氏:アジュール アジーレ

池田氏

2013年8月に南森町に新オフィスを構え、業務を開始した株式会社アジュールアジーレ。始まったばかりの会社だが、代表の池田正人氏の業界歴は26年にも及ぶ。これまで培った半端でない業界経験と外部ブレーンを始めとした人と人とのネットワーク。「何十年とやってきた会社と同じぐらい万全の体制」で仕事に挑む。

顧客が望むこと、進むべき方向性。そこから話がしたい

株式会社アジュールアジーレは、印刷物の制作からイベント企画まで幅広く手がけるデザイン会社だ。代表の池田氏はこの26年間、広告業界でデザイン、マーケティング、営業、イベントなどを幅広く経験してきた。今回の会社設立はその集大成と言えるかも知れない。

「会社をスタートさせるにあたって、古くから付き合いのある有能な営業マンと、信頼しているデザイナーが入ってくれることになり、心強く思っています。これまで培った人脈で外部ブレーンさんとのつながりもできていますし、体制は万全ですね。新会社設立というより何十年とやっている会社が続いているような感覚です」と池田氏。
新会社としてスタートするからには「単にデザイン会社というよりも、何でも一緒に考えるコンサルティング会社のようなスタンスで顧客の役に立ちたい」と語る。「顧客が一体今何を望んでいるのか、どういう方向に進むのが一番いいのか、そういう話をしたいんです」。

事務所風景

広告制作、イベント、人材教育を3本柱に事業を展開

「最初の1年は、3つの事業を柱にやっていこうと思っています」と池田氏。
「まず1つめが、“広報物の企画制作”。長い経験からどんな状況でも作るノウハウがありますし、すでに大学案内のパンフレット制作など複数の制作が進行中です。そして2つめは“イベントの企画運営”。会社員時代に愛知万博や天神祭、御堂筋パレードなど、大きなイベントに関わる機会に恵まれたこもあり、自信がある分野のひとつです。料理好きが高じて屋台のメニュー提案や運営もするんですよ」。
そして3つめが、今回新しく手がける「EV自動車普及事業」だ。「これが最初の1年で最も大きな仕事になると思います。大阪府の事業である“新エネルギーにかかわるEV自動車のプロモーションとそれに関わる人材育成”を大阪のある電気工事会社と協同で1年かけて手がけることになっているんです」。
簡単に言うと「電気自動車普及のために、まずは充電設備を町に増やそう」というプロジェクト。そのために必要な人材を採用し、最終的に住宅展示場や商業施設などでのプロモーションが行えるところまで教育しようというものだ。電気工事会社が充電設備を、アジュールアジーレが人材教育とプロモーションの企画を担当する。
「1年という短い期間ですが、うまくいけば雇用問題とEV普及が同時に実現する社会貢献度の高いプロジェクトです。ぜひ成功させたいですね」。

「試練」は、神様が自分を選んでくれている

「26年間の業界経験を積み、この度華々しく独立」と、周囲には映るかもしれない。しかし、決していい時ばかりではなかったという。
「3つの全然違う事業を柱にしているのには、理由があるんです。どんな仕事でも好不調はある。3つ柱があれば全部だめになることはないということです」。
池田氏には、自営で会社をやっていた時期があった。「そのときに、家3軒分ほどの負債を抱えたことがあって。当時、まだ普及していなかったエアタオルの大口契約が取れて、商品を神戸の長田にある倉庫に置いていたんです。そこへ阪神大震災が起こった。震災2日後に起きた火事で2月の納品を控えていた商品が全滅してしまって。私も身内を守ることで精一杯だったので商品のことまで頭が回っていなかった。結果、支払いはあるのに入金がないという事態になってしまい、億の借金を抱えてしまったんです」。
「首くくる覚悟をしましたね」と池田氏。「信頼してくださっていた仕事関係の方、社員、家族、みんなに迷惑をかけてしまって顔向けできない。でも、周囲のおかげで思いとどまって。『やるだけやってあかんかったらそのとき死んだらいい』と、考え方を変えたんです。これは、神様が僕を選んで与えてくれた試練なんやと」。

幸い周囲のサポートもあり会社を潰さずにすんだが、そこからは家を売り、私財をはたき、がむしゃらに働き、必死の思いで10年がかりで借金3000万円まで減らした。
人生で最も大変な時期。しかしこの経験で「前向きな考え方」が身に付いたという。「与えられたことは何でもチャンス。この年になっても知らないことはなんぼでもあります。経験はもちろん大事ですが、知らないこともプロに習うなり、勉強して身につける。人材教育事業も、ここで実績を作ればまたひとつ仕事の窓口ができます。1から10まで自分で経験してモデルケースを作れば、今後企業にアプローチできるかもしれない」。

やる前はふろしき広げるがやるときは地道

「今、久々に仕事をやってて楽しいですね」と池田氏。
「やりたいことがあり過ぎて、問題は自分の体がひとつしかないということ(笑)。でも、やる前はふろしき大きく広げるけど、やるときは地道なんですよ。結局は、身の丈を考えながらちょっとずつなんです。地道に仕事をして、出会う人を大事にして。ちょっとずつの結果が今。これからもそんなやり方でやっていくんだと思いますね。まずはこの1年で考えている事業計画を進めて、次の年、そしてまた次の年と、さらに面白くしていきたいですね」。

公開日:2013年09月11日(水)
取材・文:わかはら 真理子氏
取材班:株式会社ファイコム 浅野 由裕氏