仕事は相手のため、アートは自分のための表現
鳥山郷氏:(株)音動

鳥山氏

プロモーションビデオやCM、店舗やイベントを演出するインスタレーション映像の制作から、写真撮影、楽曲、音響、広告チラシや企業パンフレットなどのデザイン、さらにはイベントの企画&運営まで、カテゴリーにとらわれず幅広いデザインワークを手掛けるクリエイター集団「音動」。

代表の鳥山さんはクリエイターでもあり、また音楽と映像を駆使したライブパフォーマンスを行う表現者でもある。

映像編集やデザイナーなど5人のメンバーをまとめる27歳の若き社長としても、アグレッシブに活動を展開する鳥山さんに、起業のきっかけや今後の展望などについて訊いてみました。

法人化することで一層営業の大切さを知る

地元、港区の自営業の家庭に生まれ育った鳥山さん。
「大学を卒業してすぐに、大学時代からのグループ名『音動』として個人事業を起こしました。実家が自営業なので、個人事業を始めるのに抵抗はなく、そんなもんだと思っていました」

仲間4人で大学時代でのバンド活動やバイトのビデオ撮影をベースに、音楽と動画の事業を始めた。しかし様々な事情で仲間が離れ、1人になってしまう。仕事は激減。しかし覚悟を決め、2011年秋に法人化する。生活や仕事に恵まれない厳しい日々が続いた。
「必死で営業を行い、人を紹介してもらいました。2011年は本当にガマンの年でした。でも乗り越えたら、『音動』が人生のコンセプトとして勢いづくと信じていました」

活発な営業活動により、大学時代のバイト先など複数の映像制作会社や同業者からの依頼、また自ら営業に出向いた店舗や企業、学校などから発注を受けるようになる。

仕事の取り方や営業方法は?
「企業や学校にはまず広報さんに電話で連絡し、自分から営業に伺います。その他はクチコミや紹介、ウェブを見てが多いです。ミュージックビデオのクレジットを見てという依頼もありました。クレジットは本当に大切だと実感します。最近ではフェイスブックから同業者からの問い合わせも増えています」

フリーや個人経営では、クチコミや紹介といった、従来からの繋がりで仕事が発生することが多い。また、“探している人”はインターネットを検索する。そこでヒットしたホームページやブログ、フェイスブックなどのSNSを見て仕事を依頼する、仕事の依頼が来た、という話は昨今よく聞くことだ。鳥山さんの話に、近頃の依頼スタイルの一端を垣間見ることが出来る。

コミュニケーションによって関係性を築くことが基本

依頼主からの評価は?
「人と話をすることが好きで、よく取引先へ行くんです。仕事だけの関わりでなく、人間関係を楽しむ感じでコミュニケーションを取り、取れば取るほど楽しいんです。そんなコミュニケーションの賜物であるナチュラルな表現が得意です。先方からもナチュラルでストレートな表現が面白いと、評価されています」

取材風景

ライブパフォーマー、そしてイベント主催も

ギターやノートパコン、プロジェクターなどを用いたライブパフォーマンスを行う、アーティストとしての顔も。
「活動は国内では定期的にイベントを行っています。今までイスラエルやイギリス、ベルギーでライブを行い、イスラエルでの成功が忘れられずにいます。世界中でライブパフォーマンスをするのが目標で、1、2年に1回のベースで国内外を問わずツアーをしていきたいです」

映像&音楽の空間演出とゲストによるトークをミックスしたイベントを、定期的に主催。しかも入場無料で開催する。
「イベントも自分のためにしているんです。例えばアート作品を粘土で作るときでも、粘土代を人にもらうのは違うと思うので。その感覚と一緒です」
もちろん、人の話を聞き、出会い、コミュニケーションできる場を、多くの人たちと共有したいという思いもある。

仕事とアートの振り分けは?
「最初はアート表現と仕事を分けなかったんです。でも分けるようになってからバランスが取るようになり、ラクになりました。アートをやることで表現に自分のカラーやモノサシが出来てくるんですね。そのモノサシは仕事の上でも量れるようになるんですが、このモノサシを振りかざしてはいけないんですよ。アートの押しつけはゼッタイしないようにしてるんです。仕事は人のモノのための表現、アートは自分のための表現ですから」

ライブ風景
2013年1月に開催した『ONDO by ONDO』でのライブパフォーマンス

メンターは父と大学時代の先生

クリエイターとアーティストの二足のワラジを履くきっかけは?
「4歳からピアノを習い、中学3年の時からバンドを組んでいました。なので音楽は自分の中にずっとあるものです。映像は両親の趣味で、その影響で子どもの頃から撮るのが好きでした。学生の頃はビデオで友だちを撮影し、それを編集したDVDをプレゼントしていました。映像がバイトに繋がったのは、遊学していたイギリスから帰国後すぐに、友人から声が掛ったのがきっかけです。映像が仕事としてスタートしたのはその時からです」

さらに、大学で経営心理学の講義を受けた八木隆一郎氏の言葉に影響を受ける。
「八木先生はソーシャルリアリティについて話していたんですが、『音楽をやりたかったら、その音楽を生活にする』、『社会人になったら社会は有意義だ』、『自分の目で現実を確かめる』という言葉にショックを受けたんです。八木先生の言葉で、自分の目で見て肌で感じないと信じない現場主義になりました」

そして、突然ゴルフ工房を営み出した父親の影響も。
「父は元々手広く商売をしていたんですが、現在はゴルフ工房のみを経営しゴルフコンペなどのイベントを企画しています。父が言ったんです。『いくらお金やモノを持っていても面白くない。一番良いことは人が集まることだ』と。人が集まるルーツは父譲りです」

「音動」を大阪発信の文化に昇華させたい

鳥山氏

さて、今後の展望は?
「仕事の面では商材を広げ、より多く発信していきたいと思っています。試行錯誤で新しいものを作っている最中です。その中で『音動』というライフスタイルを作り、大阪の文化に発展させていきたいと考えているんです。『音動』を見るために大阪に来た、といわれるような文化にしていきたいと思っています。『音動』によっていろんな人と関われ、ごはんを食べられるようになりました。『音動』は自分のスタイルですが、これからはいろんな人に活用してもらいたいと思ってるんです。信じてカタチにしていきたいですね」

「自分の足次第で人生が作られる」と語る鳥山さん。愛する地元・港区から、現在もそしてこれからも、様々なアイデアを世界に発信していく。


カルマセーキ「サガポー・ティアモ・ラヴャ」のMVを手掛けた

公開日:2013年08月14日(水)
取材・文:下八重順子 下八重 順子氏
取材班:360 清水 友人氏