過去と未来を、映像でつなぐ
大野将志氏:(株)DeSIGN PLUS

大野氏

「心が折れないのが強みですかね」と大野将志氏。人懐っこい笑顔の裏側に意思の強さが垣間見える。株式会社DeSIGN PLUS (デザインプラス)の代表取締役として、制作に営業にと日々活躍されている。制作ジャンルは、テレビ・CM番組制作からVP(企業用ビデオパッケージ映像)、WEB映像まで幅広くこなす。「今まで全て、人とのつながりの中から生まれています」。そんな大野氏に、これまでの経緯や仕事への想い、これからの展望についてお話を伺った。

好奇心旺盛だった学生時代

小学校の文集に残した言葉は、“みんなから尊敬される人になりたい”だった。そんな大野氏の小学校時代はマンガ部。正月の楽しみは、友達からの年賀状を自分仕様のデザインに描き換える遊びだった。高校時代は作詩、音楽に夢中になっていた。創作意欲が高く、興味の湧くものは飽きるまでとことんやってみる性格。また、その頃から映像への興味を持っていたのか、テレビドラマも好きだった。

「サラリーマンではない仕事がしたい」と、サラリーマンである父親を見ながら、いつの頃からか思っていた。決められた道を進むのではなく、新しくクリエイトすることへの魅力を知らず知らずに感じていたのかもしれない。そんなことを考えつつ大学卒業後、入社したのが東映系列の映像制作会社だった。これが大野氏の現在へと繋がるひとつのきっかけとなる。

自分の個性って何だろう、考え続けた20代


愛用の撮影器具

入社してから、制作する仕事が始まった。あるとき上司から、プロデューサーとディレクターとどちらを目指したいかと問われた。プロデューサーは、企画立案から資金調達など制作全般の運営・管理を司る。ディレクターは、演出家または監督。クリエイティブなことがしたいと考えていた大野氏はディレクターを志望。そのときから、上司による技術講義が始まった。スチールカメラの仕組みを学んで、シャッターを押すと出来あがる作品。その面白さに次第にのめり込んでいった。「動画を作ってみたい」と考えるようになったのは、この頃からである。
「映画で強く影響を受けたのは、ヒッチコック。サスペンスやバラエティなんかでも人を驚かせたり、笑わせるポイントを見つけるのが楽しかったです」

仲間をあつめて、台本作りをしてショートムービー制作をするようになった。技術向上の楽しさとチームワークでものづくりをする喜び、やりがい。そして、映像の魅力。今ある時間の全てを映画制作に充てたいと強く考えるようになってきた。
入社2年目、一念発起。会社を退職することとなる。

レンタルビデオ店でアルバイトをしながらの自主映画制作が始まった。自ら台本を書き、監督となった。どっぷりと映画の世界に浸かった。金銭的に厳しい生活のなか、自主制作映画を何本か発表し、賞を取る作品もあった。

「20代は、自分の個性って何だろう、個性を作りたいとずっと考えていましたね。たどり着いたのは、やりたいことを一生懸命やっていればいい。そうすれば答えはおのずと出てくるんじゃないかということでした」

個人から法人へ

ツールは決まった。映像。
映画制作にあたってたくさんの資金や人員、時間がかかる。多くの人に助けてもらっている。様々な人とのつながりや紹介から、映像制作の仕事の依頼も増えてきた。改めて気づく、人と人とのつながりの重要性を体感する日々。自分の表現したいものを作ることから、人のために作る作業に比重を置くようになってきた。

「人との関係をとても大切にしています。根本的に、人といるのが好きなんですよね。人とつながって、そこから何かが生まれるのが好きなんです」

そしてまた、一つの決断のときが訪れる。
映像撮影・編集・ディレクション・営業と多岐にわたる業務に、一人では廻らなくなってきた。2012年10月に法人化したのが、株式会社DeSIGN PLUS(デザインプラス)。スタッフも大野氏を含め4人と増やした。より幅広いジャンルの映像制作にも、数多く素早く対応出来るような仕組みを作った。「社員は家族みたいなもの。これから人数が増えていってもお互い信頼できる関係を築いていきたい」


イラストレーターのトヨクラタケルによるアイコン。大野氏の大学時代の後輩でもある

「社員は家族」

大野氏

こうして、様々な変化の中、その都度全力投球してきた。
フットワークの軽さと、もともと持ち合わせた好奇心と感度の高いアンテナで情報を収集。そして、人とつながる。ギアは常にニュートラルで、いつでも発進できる状態にしておく。

「時代の流れの変化に対応できる柔軟さを、持ち続けることが大切だと思うんです」

撮影の際にも、その場その場でいろんな意見を柔軟に取り入れながら制作していくスタイルを好んでいる。クライアントからの異例の条件や、撮影時に起こる予定外の出来事、全てを一旦受け入れて、改善しながらより良い物を作っていく。時には台本通りでなくても。

今後については、 会社の数字を上げていくと共に、官公庁など公共の仕事も広げていきたいと大野氏は話す。

「社員は家族みたいなもん。5年後、10年後社員は増えていると思うけど、今のようにお互い信頼し合ってやっていける関係でありたいです。ゆくゆくは、映画制作を会社の事業の一つにすることで、社員の希望を叶えられるような会社にしたい。映画を撮りたい社員がいるんです。彼は監督で。そのときに僕は、プロデューサーとして関わりたいですね」

公開日:2013年07月24日(水)
取材・文:オフィスコモコモ 小倉 千明氏
取材班:クイール 松本 幸氏