持ち前の行動力で世界に挑む
吉永 安智氏:(有)サウンドスタッフ

著作権を扱う“音楽出版社”

吉永さん
吉永 安智さん

『有限会社サウンドスタッフ』は“音楽出版社”というあまり聞き慣れない業種の会社である。音楽出版社とは音楽著作権の登録などの処理業務全般を行う会社のことで、レコード会社、音楽プロダクションとともに音楽業界を作り上げている。吉永安智さんは大阪営業所のディレクターを務めている。「本社は、和歌山で唯一の音楽出版社なんですよ。著作権業務以外にも、イベント運営などの企画段階から行っています」。

“音楽ビジネス”をしたい

吉永さん

吉永さんがサウンドスタッフに入社したのは10年前。社長の桂さんとの出会いは、吉永さん曰く「今思えばとても失礼なものでした」。
高校を出てサラリーマンをしていた吉永さんは、ひょんなことがキッカケで音楽に興味を持ち、専門学校で学ぶことになった。しかし入学後すぐに自分の音楽を作る才能に限界を感じ「楽曲を作るのではなく、ビジネスとして音楽に取り組みたい」と考えるようになった。「そこで、自分で考えた企画書を音楽ビジネスを題材にした書籍の著者に見せるため、東京に乗り込みました」。
そんな吉永さんの行動力が幸いしてか、その著者の紹介で大手レコード会社の会議に出席できることになった。だが、当時は学生。会議では冷たくあしらわれ、企画のプレゼンも満足にできなかったという。
「当時、企画が通らないのは自分が学生であるせいだと思っていたので、とても悔しかった」と語る吉永さん。そんな中、友人に音楽出版社の知り合いがいることが判り、紹介してもらうことに。「企画書を通すために会社の名前を貸して下さい」と頼み込んだ相手が桂社長だった。「まだ学生だったとはいえ、かなり失礼なことをしたと思います。でも桂社長は企画に賛同してくれて、一緒に企業に売り込みまでしてくれたんです」。そのことがキッカケで、吉永さんはサウンドスタッフに入社。以来、企画部門のディレクターとして忙しい毎日を送っている。

「文章の力」に気づく

関西ライター名鑑

専門学校生時代から、ずっと独学で企画書を書いてきた吉永さん。「文章を書く」ことについてあまり深く考えたことはなかったが、ライターの北村さんとの出会いで変わったという。「自分で書いた企画書を見てもらうと、ダメ出しされてしまいました。そこで彼に手直ししてもらうと、見違えるほどわかりやすい文章になったんです」。北村さんのお陰で「わかりやすい企画書はビジネスとしても効果的なことに気付きました」という吉永さん。「今までとれなかった仕事も、企画書の文章を直すせば通るようになるのでは?」と考えるほど、文章の持つ力に感銘を受けた。
そんな経験を元に「プロモーション専門の部署を持たない企業と、プロのライターとの橋渡しをしよう」と考えた吉永さんは、北村さんとともに2006年5月に合同会社『ライトスタッフ』を設立。ビジネス文書に関するコンサルティング等のほか、企業とプロのライターが直接やりするためのサポートも行っている。
そして会社設立の最も大きな目的が「関西ライター名鑑」の制作・発行。初版の2006年版には、関西圏のライター達が約30数名掲載されている。吉永さんと北村さんが苦労して調べあげ、奔走して掲載を承諾してもらったライター達だ。

海外で実績を作ろう

le Crystal

吉永さんには近い将来実現したい夢があるそうだ。その夢とは、この街のクリエイターと共同で映像を制作し、フランスに持っていく事。「『midem』というカンヌで開催される音楽のビジネス展に出品したいんです」。
『midem』には毎年世界中から100カ国4000社が参加し、売れそうな曲の権利を買い求めにくる。サウンドスタッフは過去に3度、“和の音色”をベースにしたものを出品。吉永さんはプランナーとして参加してきた。去年出した『地球聖地 高野山』は仏具の音や読経の声をメインに作った音楽。高野山は、争いを行なった敵と味方が一緒に眠る世界的にも珍しい霊場であることから「世界平和」をテーマに制作した。それがフランスの大手レコード会社に評価され、クラブ音楽のオムニバスCDに収録されたという実績もある。
「現在、海外で勝負したいという夢を持ったこの街のクリエイターを探しています」という吉永さん。「曲やプロモーションビデオの企画から制作すべてを任せ、それを成功させたら、クリエイティブの街として世界で注目されるでしょう。そうして実績を作り、この街のクリエイター達に東京のアーティストからPV等の依頼が来るようにしたいと思っています」と夢は膨らむ。

野上 智美氏

公開日:2006年11月21日(火)
取材・文:野上 智美氏