幅広いタッチが武器。「この人の絵で!」と言われるのが目標です
石原 えり氏:イラストレーター

石原氏

顎もとで揺れるピンクの星型ピアスにゴールドドットのカーディガン。そして猫をモチーフにしたトップス&トートバックという、キュートな装いであらわれた石原さん。センスが光るそのファッションコーデに、猫好きであることがハッキリわかる。
「街中のどこに猫がいるか察知できる猫センサーがあるほど(笑)猫好きなんですが、実は猫を飼ったことはないんです」
好きなものには敏感に感応し、無意識のうちに自分の中に取り入れ表現できる、豊かな感受性の持ち主。Webから紙媒体まで、オーダーに合わせた多彩なタッチのイラストが描けるのは、この抜群の感受性とセンスからだとうなずける。

7年間勤めたイラスト制作会社から今年3月に独立しフリーとなった石原さんに、イラストレーターになったきっかけや、そしてこれからの目標などについてお聞きしました。

絵が好き。だから職業選択には悩まなかった

「幼稚園の頃から自分が想像する“憧れの女の人”をチラシの裏にひたすら描いていました。小学生の時にマンガを買ってもらってからは、自分でもマンガを描いてみたりもしたんですが、オチが付けられなくて漫画家は無理だな~っと。それでもマンガイラストは書き続けていました。この頃のマンガ絵の名残が今の絵にも反映されていると思います」
中学生になると好きなキャラクターを自分流で描き始め、その頃イラストレーターという職業を知る。うっすらと将来の夢として意識し始めた。

「いとこのお姉さんが美術短大に通っていたこともあり、また高校では美術部だったので、自然と京都芸術短期大学(現・京都造形芸術大学)の洋画コースに入学しました。でも油絵はイラスト表現には向いていないと思い、短大卒業後、専門学校に入学したんです」
その専門学校の特別講師から、イラストをメインに扱う制作会社があることを知った石原さんは、「絶対に入社したい!」と強く思う。

「子どもの頃から絵が好きだったんです。絵を描く仕事をしたかったので、職業選択には悩まずにこれました」

作品

クライアントの要望に応えることで、多彩なタッチが描けるように

しかし時代は就職超氷河期。第一志望のイラスト制作会社の門を叩くも、門前払い。そしてなんとかデザイン会社に就職した。
「デザイン会社では折り込みチラシなどのデザインをするため、イラレやフォトショップなどのグラフィックソフトの使い方を覚えました。でも手が遅くて、向いていないかも・・・・・・と思い始めたんです」

就職して2年が経っていた。イラストレーターへの夢が捨てきれなかった。意を決し、再びイラスト制作会社の門を叩いた。
「ちょうど欠員が出た直後で、タイミング良く契約社員にしてもらえたんです!」
しかしタイミングだけではない。石原さんの熱意が運を呼び寄せたのだ。

「念願のイラスト制作会社では、先輩イラストレーターの作品が間近で見れ、直接指導やチェックを受けられたので、とても勉強になりました。またクライアントの多様な要望に応える会社だったので、いろんなタッチでイラストを描かせてもらえたんです。『スタイリッシュな女性系』や『ほのぼのとした親子系』、『ゆるいキャラ系』、『マンガイラスト系』といった4パターンをメインに、それぞれ画材やデフォルメ具合を変えて、色々なタッチで描かせて頂いてきました。打ち合わせや営業も経験でき、それらはフリーになった今に生かされています」

作品

友人たちの活躍に刺激を受け独立

一見充実した日々を送っていたように思えるが、イラスト制作会社からの独立を決意し、フリーに。
「イラスト制作会社ではすごく貴重な時間を過ごしていました。でもある時、友人の個展を見に行く機会があって、そこで友だちや後輩が作家的に華やかな活動をしているのを知り、焦り出し、悩み出したんです。それで自分のスタイルを持って仕事をすることが理想だと思ったんです。でも、どういうスタイルで行くか悩み中で・・・・・・どういう方向で行くかも模索中なんです」

イラスト制作会社で様々な経験を積むことで、内気で人見知りだった性格を克服。一回りも二回りも成長したそんな時、友人たちの表舞台を目の当たりにした。まぶしかった。刺激を受け、新たな夢がめばえた。そしてそれに伴う悩みや焦りが生まれ出した。今の殻を破るため独立。ところが悩みは解決する間もなく、怒涛のように押し寄せてくる。「自分のスタイルとは?」「独自のタッチとは?」「進むべき方向は?」。しかしそんな悩みや苦しみは、前進する者のみがブチ当たる壁だ。壁を越えてこそ、新しい自分や世界と出会える。石原さんはこれらをしっかり捉え、覚悟し、向き合っている。

自分の絵を必要とする場所や人と出会うことがモチベーション

石原氏

さて、今後の目標は?
「クライアントの要望に合わせて描くのも好きですし、向いているとも思います。並行して独自のタッチを作り、『この人の絵で!』と言われる仕事も出来るようになりたいです。私の絵を必要とされている場所に行くことが、今のモチベーションになっています。そして私の絵を必要としてくれる人や仕事を大切にしたいです」

そして「将来は結婚して、自分用の仕事部屋を持ち、子育てと両立して仕事をしていきたい」と語る石原さん。持ち前の熱意と感性で、いくつもの壁を乗り越え、夢を叶えていけそうな、意思のある目が印象的でした。

公開日:2012年12月12日(水)
取材・文:下八重順子 下八重 順子氏
取材班:尾崎 守彦氏