鍛え上げた取材力で、「『想いが、見える。』をかなえます。」
中 直照氏:(株)ショートカプチーノ

中氏

株式会社ショートカプチーノの中直照氏は、「仕事もコネもない状態」からフリーライターとしてのキャリアをスタート。2009年のメビック入所と同時に人脈と仕事の幅を広げ、昨年には株式会社として新たなスタートを切った。「最もメビックらしく」成長した企業のひとつだ。「メビックで人脈の大切さと取材の楽しさを知った」という中氏に話を伺った。

メビックで、人脈の大切さを叩き込まれた

関西大手の雑誌社で雑誌制作、中堅ゼネコンでは宣伝広報担当を経験するなど、複数の企業で媒体制作や販促物の制作に携わった後、フリーランスのライターとして独立した中氏。メビック扇町に入所したのは2009年と、メビックの閉鎖までのわずか1年少々の入所だったが、メビック関連のイベントやライティングでは中心的な存在。1年という短期間の入所と聞いて驚く人も多いかもしれない。

「実は入所前に、会社員時代の先輩でメビックの入所企業でもあった株式会社コミュニケーターの横井孝治氏の事務所でお手伝いをしていました。なので、自分が入所した時にはすでにしっくり馴染んでいる感じが出ていたのかも」。

中氏は、横井氏の事務所で「メビック」に触れながら、メビックという施設が持つ、クリエイターの人脈を広げたり、一緒に仕事を生み出すことができる仕組みに魅力を感じていた。「本気で1人でやっていくと決めた時に、メビックは必要不可欠だと思っていました。そして半年後、自分も正式にメビックに入所することにしました」。

メビックの審査や面接をクリアし、晴れて入所が決まったものの、最初は「仕事のツテもアテもない状態」だった。
「せっかくメビックに入ったのだから、とにかく人と会って人脈を作っていこうと。メビック主催のイベントに積極的に顔を出したり、経済団体に登録したり。そうするうちに仕事を依頼してもらうなど、運良く色々な繋がりが膨らんでいきました」

紹介などで少しずつ仕事が増え、まさにこれから、というときだった。中氏のもとに「メビック閉鎖」の知らせがやってくる。「結果的に短期間の入所になってしまいましたが、それでも1年ちょっとですごく人脈が広がったと思います」。メビック閉鎖後もメビック関係の人脈から仕事が生まれることも多く、「今もよくあるのですが、ライターを探しているクライアントがいると、メビックの仲間が私を紹介してくれることも少なくありません。とにかくいろんな人と知り会うことの大切さを今も体感しています」という。

現場力でインタビューにトンガったライターに!


大阪市発行の「SUPER」、大阪府の「MOOV」、四条畷市の市報など、行政発行の媒体での取材執筆も増えている。

もともと、書くのは好き。雑誌社時代は「この仕事は天職だ」と思っていた。「本当は社交的じゃないんです。大人数の集まりも苦手だし。でも、それが取材や仕事となればものすごく楽しんでできる。不思議ですね」。
現在は、WEBの仕事を中心に、雑誌など紙媒体にも仕事の幅を広げ、中でも「インタビュー」の仕事が増えつつある。

「今後もインタビューに尖っていきたい」と中氏。
「ショートカプチーノは『「想いが、見える」をかなえます。』がコンセプト。人が漫然と思っている事をインタビューの中で聞き出して文章にして見せてあげる。そうすると、『そうそう、こういうことなんですよ。自分の想いを整理してくれてありがとう』と喜ばれることが多いんです」。「いかに想定外の切り口から質問を放ち、現場でインタビュー対象者から話しを引き出すか」それが、中氏の取材現場力の見せ所だ。

「実は、インタビューの面白さに目覚めたのも、メビックの仕事がきっかけ」と中氏。メビックのサイト内にある大阪のクリエイターを取材した「クリエイターズファイル」や、大阪の企業をクローズアップした「クロスポイント」のライティングを手掛けたことは、「自分にとってキャリアにもつながった」。中氏が取材した大阪のクリエイターや企業は、現在、65社を越える。

2011年6月、ついに株式会社へ!


「会社としては、継続することが大切だと思っています。将来的には会社の規模を拡大するのではなく、仕事を拡大していきたい」。

昨年、株式登記を果たした。それは、「この仕事を続ける」という中氏の強い意志の表れでもある。「株式会社は‘何年続けるか’が目に見えない価値だとアドバイスをもらいました。この仕事を続けて行くなら法人化しようと」。
法人化したことで、「見えないところが変わってきている」と中氏。「クライアントや周囲の人に‘本気度’が伝わっているのか、周囲の目や対応も少し変わったような気がします」。

現在、1期目が終わったところ。2期目の目標は、「企業として売上げを安定させること」という。「そのためには自分から情報発信をしていきたいですね。僕の仕事は、情報発信をお手伝いすること。クライアントの情報発信を効果的にサポートするためにも、自分の情報発信をきちんとしないといけない。信頼していただくためにも、それは必要なことだと思います」。

取材力とウェブ知識を強みに新たな展開も


JetStarJapanの機内報でも執筆も担当。実は、この仕事もメビックの仲間からの紹介だという。

中氏といえば、「ITやウェブに明るい」というイメージもある。
最近では、WEBディレクターとして独自のネットワークで「思いを伝えるウェブサイト」の提案をすることも。「どっぷり取材をして話しを引き出して、その人なり企業なりが一番伝えたい思いを伝えるのは、取材記事であれウェブサイトであれ、手法は同じなんです」。

さらに、ITやエネルギー、電化製品など、一般の人には難解な専門的な内容をわかりやすく書いてほしいという仕事の依頼も増えている。
「僕のライティングは、(企業から消費者に伝える)B to C全般。専門家に向けて書く‘テクニカルライティング’ではなく、あくまで‘難しいことを一般の人に向けて分かりやすく伝える’という観点でお手伝いしています」。そして、それは中氏ならではの新たな強みとしてクローズアップされつつある。

今後も、たくさんの媒体に関わり、いろんな切り口でたくさんの人に会いたいという。「その結果として、自分の可能性や仕事の幅が広がればいい。自分に何ができるかは周りの人が決めること。僕の可能性を広げてくれるのは、周りの人なんですよ」。

公開日:2012年08月03日(金)
取材・文:わかはら 真理子氏