‘チーム力’で成長を続ける遊技機用CGコンテンツ企画開発会社
鳥山 進氏:(株)トリサン

鳥山氏
さまざまな業界から広く人材を募集中。「若い人材が存分に能力を発揮できる企業体でありたい」と鳥山氏。

株式会社トリサンは、パチンコ・パチスロなどの遊技機用CG映像やマルチメディアコンテンツの企画開発を手掛ける会社。代表取締役の鳥山進氏は、起業当初の2年半を「メビック扇町」で過ごし、2009年の卒業時には社員3名だった会社を3年たらずで30人規模へと急成長させた、メビック卒業企業きっての「出世株」だ。
クリエイターとして、起業家として、経営者として…その手腕を多才に発揮する鳥山氏に、会社を成長させるにいたった経緯と経営者としての想いを伺った。

社員3名の会社を3年で30名規模に

鳥山氏は、もともとパチンコ、スロットゲームメーカー出身。デザイナーとして、一からゲーム開発に携わっていた。そんな鳥山氏が起業し、インキュベーションセンター「メビック扇町」に入所したのは2007年のことだ。「メビックは、志が近しい人が集う場所。とても居心地がよく刺激的でもあった」と、メビックで過ごした時期について振り返る。「当時の仲間とは今でも付き合いがあり、仕事にもつながっています。あの頃のネットワーク作りがなければ今はないもしれません」。
2009年10月に社員3名と共にメビックを卒業。「正直、仲間が多いメビックを出るのは心配だった」というが、3年たらずで社員30名の会社へと急成長を遂げる。その華やかな成長ぶりは周囲を驚かせた。「急成長と言われるが、自分の中では自然な流れ」と鳥山氏。「ひとつのプロジェクトに多人数がかかわる仕事なので、プロジェクトが同時進行するとそれだけで30人必要です。着実に仕事をこなすには、まだ足りない人数だと思っています」。

「人と人とのつながり」が、仕事のクオリティを上げる


業界では珍しく、社員の4割近くは女性。「最近はスロットでも可愛い機種など、女性向けのデザインも多くなってきています」

メビック時代から一貫して「人と人のつながり」を大切にしている。「開発の仕事は、コミュニケーションが大切です。クライアントと一緒にどんなゲームを作るかを一から考えたり、ニーズを聞き出したり。時代と共にどんなにIT化が進んでも、‘会う’ことが基本だと思うんです」と鳥山氏。東京のクライアントとは週1回のテレビ会議を定例にしつつも、月に1度は自ら東京まで足を運んで直接顔を合わせる。「会って何をするわけでもないんですが、ささいな会話からアイデアが生まれたり、想いをくみ取ることができたり」。直接会うことで、仕事にさらなる奥行きが生まれるという。
「社長はとにかく顔が広い」と同社のスタッフ。「東京でも大阪でも、社名を言っただけで‘ああ、鳥山さんの’と言われるほど社長は有名」「営業しているように見えないのに常にいろんなところから仕事を引き受けてくる」「飲みの席でいつのまにか全然知らない人と喋っている」「発言が可愛いので女子ウケがすこぶるいい!」など、鳥山氏の自然に周囲の人を惹きつけるエピソードは多数。
「数年前、社員から『社長はもう(現場は)いいんじゃないですか』と言われたんです」と鳥山氏。「仕事は任せてくれ、という社員の気持ちがすごく嬉しかった。なので、私は仕事を作り出し、会社の大きな流れを作って行く事に注力すべきだと強く思いました。先行き不安な時代に、トリサンを選んでくれた社員のためにも。その為には様々な人とお会いし、色々な情報を得る事も重要ですし、人と人が繋がっていく中で仕事を産み出していくのが自分の使命だと思ってるんです」。

多彩な個々の能力を活かし、「チーム力」のある企業体へ


「あっという間に会社が大きくなってプロジェクトをまかされたり。大変なことも多いですが、自由な社風でのびのびと仕事ができます」と若手スタッフのみなさん。

現在、社員の平均年齢は28歳。元漫画家、元アニメの作画監督、元映像クリエイターなど、さまざまな経歴の持ち主が集まっている。スタッフの人数が十分とはいえない中で、いかに効率よく仕事を進めるかを考えると、少数精鋭で採用基準は高くせざるをえない。そのぶん「分野は前職を問わず幅広く採用するようにしている」という。
「違う能力を持った人間が知恵を出し合ってこそ、新しいものやアイデアが生まれる」と鳥山氏。「社内を見ていると、さまざまな分野のスペシャリストによる化学変化がすごくおもしろいんです」。自分1人ではできなかったことが会社という‘チーム’でなら可能になる。そんな「チーム力のある企業」を目指す。
社員が増えたことで「社員のマネージメント」という仕事も新たに加わった。「若い社員の能力を最大限に引き出す教育と環境」をいかに整えるかということも自分の大事な仕事、と鳥山氏。業界では「一人一人が黙々とパソコンに向かって仕事をする」スタイルをとる会社が多い中、同社は創業当時からのワイワイと和やかな雰囲気を大切にしている。「ゲームの企画制作という仕事柄、自由な発想には自由にのびのびと働ける環境が不可欠。そして、教育研修制度やシステム環境の整備…社員が能力を発揮しやすい環境を整えることで、‘チームとして最高のパフォーマンス’を目指しています」。

「トリサン」ブランドの確立を目指して

トリサンロゴ

「毎年毎年、‘今年が勝負’です」と、鳥山氏。
今後の展開としては、コンテンツの輸出など海外への販路拡大を考えている。「すでに制作拠点として上海への進出は果たしていますが、市場としてアジアに注目しています。アジアの販路開拓も当面の目標のひとつです」。
そのために、自社で海外に制作拠点を持つ準備も進めている。「まずはアジアに1拠点、そして東京支社の開設も必要です」。
「我々はチャレンジャー。小さい会社なのでチームワーク、クオリティがないと仕事がゼロになる。でも、いいものを作っていれば必ずおかわりがあるはず。参入したい会社が多く競争の激しい業界にありながら、クライアントに選んでいただいているのがとてもありがたい」と鳥山氏。今後は、その期待にさらに応えるべく、仕事内容もエンターテイメントを軸に少しずつ幅を広げ、次のステージへ向けて進んでいる。
「目指すのは、‘トリサンブランドの確立とスタンダード化。この時代に選ばれるエンターテイメントを作る会社として、変化し続けていきたいですね」。
株式会社トリサンは、日本を、そして世界を舞台にこれからも走り続ける。

公開日:2012年08月09日(木)
取材・文:わかはら 真理子氏
取材班:株式会社ジーグラフィックス 池田 敦氏