ITの力で新しいブライダルギフトの潮流を作る!
安田 真悟氏:(株)ウィーブ

安田氏

ASPサービスの開発・販売会社として設立した(株)ウィーブ。現在はブライダルギフトカタログを電子化して披露宴会場がお客様に提案できるWebシステムの開発・販売などを行っている。代表取締役の・安田真悟氏は「挙式するカップルのためにブライダルギフト業界にITを導入したい!」という志を持って奮闘している。そんな安田氏に、これまでの波瀾万丈の足跡と将来の目標を語っていただいた。

ASP開発でIPOを目指すも頓挫。救ったのはガム

2003年から約2年間メビック扇町に入所していた(株)ウィーブは、もともとASP開発を行うシステム会社として安田氏が設立した。実際にASPサービスを公開し、中には1万人以上の会員が集まるサービスも生み出した。だが世はITバブル崩壊の真っ只中。想定通りに物事は進まなかった。
「会社設立当時は、ベンチャーキャピタルから出資頂いて自社のASPサービスによる広告収入でビジネスを展開しようと、イベント管理システムのビジネスモデル考えていましたが、ITバブル崩壊で会社設立直前に出資がストップ。自己資金でシステムを開発し運用を開始するも、資金が底をつき開店休業状態になってしまった。その時、先行投資して事業を展開するようなビジネスモデルは今の自分では不可能だと悟りましたね」

そこで考えたのがネット通販で、偶然出会ったのが名入れができるガムだった。安田氏は、このガムを通販で販売することにした。
「最初はアドガムと名付けて販促物やノベルティ商材として販売しました。メディアにも露出する事が出来てお陰さまでかなり売れたのですが安定的に売上が上がらず苦労していました。そんな時に、ブライダルのプチギフトとして販売することを思いついたんです」この狙いが当たり、ネット通販で年間約8,000組の披露宴や二次会で使われる大ヒット商品に。
「1年間の挙式施行組数が現在では30万組程度と言われていますから、そのシェアの大きさに自分たちも驚きました。なによりもブライダル商品として販売すると、お客様にとても喜んでもらえたんですよ。そこでブライダルギフトのビジネスをやろうと決めました。2005年のメビック卒業前後には、ブライダルに関連しないサービスは売却・譲渡しました」

競争から抜き出るためにBtoBへの進出を決断


ブライダルギフトオンライン

ビジネスをブライダルギフトのネット販売一本に絞ったウィーブ。最初はガムを披露宴会場に販売してもらうことを目指していた。
「披露宴会場に営業に行くと『面白いが取り扱えない』という回答ばかり。その時初めてブライダルギフトの卸業者の存在を知り、新規参入の難しさを体感しました。仕方なく、ネット通販だけで販売することに決めたんです」
その後は先述の通り、ネット通販で名入れガムが大ヒット。だが、同時に競合商品が大量に出現した。
「想定通りでしたね。ガム以外のプチギフト商品を開発しネット販売を展開しましたが、競合も増え続け、さらに挙式会場でも問屋さんがプチギフト専用のカタログを準備し従来の販売方法で商品を販売し始め、いよいよこれは業界構造を変えないと生き残れないな、と確信しました」

そこまでブライダル業界にこだわった理由を尋ねると、そこには結婚するカップルへの想いがあった。
「結婚するお客様は、数十冊の膨大なカタログの中からページをめくって引き出物やギフトを選ぶように言われます。そんなお客様の不便もITの力があれば簡単に解決できますから、絶対に喜んでいただけると思ったんです。さらに、ブライダル業界が古い商習慣に縛られていて、ITの導入が遅れていることは明白でした。我々の強みであるITの力で勝負できると考えたんです」

2009年には披露宴会場をクライアントとするBtoB事業の第一歩として、披露宴会場向けのブライダルギフト販売支援システムの販売を開始。その中身とは、紙のブライダルギフトカタログをインターネット上に掲載し、会場に提供するというものだった。

ブライダルギフト業界にITの力で風穴を開ける!

こうしてBtoB事業に乗り出したウィーブだが、その船出は大変厳しかったという。
「BtoB事業を始めても、業界内に誰も知り合いがおらず営業活動すらできない。最初はブライダル雑誌の編集部で紹介してもらったほどです。最初の2年間は業界の事情を知って顔を広げるために、飲みに行くのが仕事でした(笑)」

当時、業界慣習の壁が厚く苦戦していた、と話す安田氏。それでもこの仕組みの必要性を誰よりも感じていたからこそ、粘り強く取り組んだ。
「ITを使って仕組みを構築して未来を変えるのが我々の役目。ブライダルギフトメーカーと挙式会場、そして披露宴を行うお客様をシステムで繋げば、利便性の向上やコストの削減など大きなメリットが生まれます。業界の新しいインフラを作るという気概で取り組んだからこそ、諦めずに前進できたんでしょう」

すると、iPadやスマートフォンなどが多くの披露宴会場やホテルに導入されはじめ、ブライダル業界にもシステム化やWeb化の流れが押し寄せ始めた。時を同じくして2012年4月、安田氏は結婚式・披露宴会場で業界大手企業との業務提携を決断した。
「披露宴会場とタッグを組むことが必要だと考えていた時に、偶然の出会いがありました。ウィーブが考えるブライダルギフト業界のインフラ構築構想と、先方の事業のシステム化を進めたいというニーズが合致したんです。今後は事業スピードを加速し、ブライダルギフト業界の新しいインフラの構築を進めていきます」

『点』ではなく『線』で繋がるお手伝い


内祝ギフトオンライン

将来について安田氏に尋ねると、2012年と2013年が勝負だと語る。
「2012年は第二創業の年だと考えていて、初心に返ってゼロベースで取り組んでいます。儲けや利益よりも『ブライダルギフト業界を変える!』という使命感に近い気持ちです」
その変革のひとつが披露宴会場とお客様の接点の増大だ。結婚は大きなライフイベントでありながら基本的には一度しか訪れない。つまり一人のお客様に対してビジネスは一度きり、というのが常識だが、安田氏はインターネットを活用し、この常識を変えようと考えている。
「ウィーブでは新たに披露宴会場が内祝の商品を販売するサイトを立ち上げました。私たちは挙式を挙げたご夫婦と披露宴会場が、挙式後も長くお付き合いできる仕組みを構築していきたいんです」

結婚という大きなライフイベントを一緒に成し遂げた披露宴会場が、ご夫婦のその後に寄り添うような仕組みを目指したい、と安田氏は語る。
「挙式や披露宴を行ったご夫婦に、継続的にライフスタイルをご提案できるような仕組みの構築が目標です。少子化による挙式組数の減少は確実です。そんな時代の流れの中で、私たちはITを活用して披露宴会場とお客様が結婚式や披露宴という『点』ではなく『線』で繋がるお手伝いをしていきたいですね」

公開日:2012年07月27日(金)
取材・文:株式会社ショートカプチーノ 中 直照氏