不動産広告制作とECサイト構築・運用の二本柱で成長を目指す
有吉 伸介氏:(有)アドクリエイト

有吉氏

2003年のメビック扇町開所当時に起業し、入所した(有)アドクリエイト。代表の有吉氏は大学卒業後、メーカーの営業、販促企画として流通相手の仕事に携わったのち、不動産情報誌発行を生業とする会社の起業に役員として参加、その後独立しアドクリエイトを立ち上げた。今回は、メビック入所当時から現在までの経緯について、さらにはこれから目指す方向性などについてお話をうかがった。

直取引主体から代理店との取引を主体に

起業当初は、クライアントがほぼゼロの状況で起業した有吉氏。少しずつクライアントを増やしていき、メビック卒業時は中小の不動産ディベロッパーの広告制作を直取引で行っていた。
「メビックを卒業する前後に、不動産広告を取り扱う広告代理店と知り合いになり、その会社が中津に事務所を構えていたんですよ。その会社から『近くに来て一緒に仕事をしませんか』と誘われるような感じで、中津に事務所を構えることが決まりました(笑)」

その広告代理店は、当時Webへの取り組み実績が少なく、アドクリエイトはその広告代理店が受注するWEB関連の仕事の大部分を引き受けるようになった。一般的には、広告代理店の仕事よりもクライアントとの直取引を広げようと目論むクリエイターが多い中、有吉氏はあえて逆の方法で事業を安定させることを目指した。
「ディベロッパーとの直取引だと、営業活動や校正打ち合わせのため制作に集中することができませんが、広告代理店からの仕事は制作に集中することができます。しかも、クライアントの間口も広がる。そう考えて、中津に事務所を構えて広告代理店のお仕事をお受けすることにしました」

『不動産特化』を強みに不動産不況も乗り切った

取材風景

直取引を残しながらも徐々に広告代理店経由の仕事が増えていったアドクリエイト。
「不動産広告には厳しい法令上の表現制限や広告規定があり、それらを理解していないと制作は難しい。当社はそのノウハウを蓄積していましたから直取引も可能でした。ただ、直取引をしていたのは中小のディベロッパーが多く、昨今の不動産不況などの影響もあり、大変厳しい状況です。今振り返ってみると、広告代理店との取引開始がリスクヘッジになりましたね」

また直取引が多い頃は、帰る時間も遅かったという。
「メビック入所当時を考えると、今の方が仕事量は多いですが、帰る時間は今の方がわずかですが早いかもしれません。それはやはり取引形態の違いによるものだと思います。広告代理店と協働することで、制作も効率的に進むようになりましたし」

リーマンショックが発生した頃には、マンション建設そのものがストップするクライアントも少なくなかった。
「毎年数棟以上建てていたディベロッパーでも建築ゼロになるのが当たり前でしたね。そんな建設不況の風が吹く中、数多くの不動産事業広告の実績が強みとなって、より多くの広告代理店からの発注をいただくようになったんです。結果的に、直取引にこだわらずに広告代理店ともお付き合いすることで未曾有の危機をうまく乗り切ることができました」

地域ポータルサイト『環境王国.jp』を立ち上げ


環境王国.jp

不動産広告を中心とした事業に加え、ひとつの事業の柱に育てたいと考えているのが『環境王国.jp』という地域ポータルサイトだ。このWebサイトは、自然環境と農業のバランスが保たれ、安心できる農産物の生産に適した環境の地域を環境王国と認定し、街の紹介や農薬使用などの基準を満たした商品をECサイト『環境王国市場』販売している。
「この『環境王国.jp』は、お米のコンクールを実施している団体と共同で運営しており、当社がこのWebサイトを制作・運営しています。現在は12の市町村が掲載されていますが、このサイトを活性化させて街おこしに活用していただけるようなサイトにしていきたいですね」

今後は、現在設立申請中のNPO団体が運営する体制を構築し、さらに公共性を高めた上で地方公共団体へのアプローチを加速しようとしている。
「まずは30市町村に登録してもらうことが目標。さらに、各地域の特産品などを販売するECサイトの構築も計画中です。さらに認知度を高めていき、多くの市町村に参加していただけて、街おこしのお役に立てるWebサイトに育てていきたい」

2本の柱をバランス良く成長させたい!


環境王国市場

アドクリエイトという起業が10年以上の時を重ねてこられた秘密はどこにあるのか、有吉氏にたずねた。
「広告制作なんて特殊な仕事でもなんでもなくて、どの制作会社でやっても同じかもしれません。そんな中で当社を選んでいただくという意味では、不動産に特化しているというウリは大きかったですね。もちろん他業種の仕事もやっているのですが、内外にはっきりと『不動産に強い』というスタンスを示していたのが功を奏しました」

今後は、現在の取り組みをそれぞれ伸ばしていくことに注力するという。
「不動産関連の広告制作会社として、これまでの取り組みをきちんと継続していきます。また『環境王国.jp』についてもEC部分『環境王国市場』の強化を行い、活動費を捻出できる仕組みの構築を目指します。不動産業界に軸足を置きつつも、片足では常に新しい分野を探っていきたいですね」

社内でECサイト構築ができるノウハウを生かして、ECサイトの構築や運営代行を受注できる体制も整えていく予定だ。
「当社はほぼ100%内製でサイト構築していますから、ノウハウがきちんと自社に蓄積されています。今後、広告制作会社として生き残っていくには、この点を生かして戦略的に動く必要があるでしょう。目指すべきは、ECサイト構築から運用までのノウハウを活用して、企画提案から運用までトータルに提案していくこと。そのためにも『環境王国.jp』とECサイト『環境王国市場』をしっかりと育てていきたいですね」

公開日:2012年07月10日(火)
取材・文:株式会社ショートカプチーノ 中 直照氏