世界観を持ったアウトプットを生み出したい。
水口 卓哉氏:sakotsu

水口氏

Web制作、中でもflashが得意というsakotsu・水口氏。Flashを使った作品を発表したり、勉強会の世話役を担当するなど、仕事以外にも積極的に活動している。今回は、Webの世界に身を置くことになるまでの話や、Flash / ActionScriptを中心とした勉強会『大阪てら子』の運営スタッフを務めるきっかけやその理由などについてお話をうかがった。

ゲーム好きのファミコン少年だった。

小学校の頃は、各家庭にファミコンが行き渡り、ドラゴンクエストに夢中だったという水口氏。
「ドラクエⅢやⅣあたりの世代ですが、今の仕事に大きく影響を与えています。でも、家庭内ファミコンルールを破ってファミコンで遊べない時に、父親のMSXで雑誌に載っているゲームのプログラムを打ち込んで遊んだのが、今の自分の源流かもしれません。その時はすぐに興味を失ってしまったんですが……」
本格的に今の仕事に繋がるのは、子どもの頃のファミコンよりも大学時代に初めて触れたインターネットの世界だったという。
「衝撃を受けましたね。当時は個人ページを持つことや、『BMS』と呼ばれるフリーの音楽ゲームなど、個人で作ったゲームをネット上に公開することが流行していました。個人が制作したゲームを見ず知らずの大勢の人が遊ぶという仕組みが面白そうでした。そんな時にFlashという技術に出会ったんです」
当時発売された『Flash5』は、ActionScriptという技術が採用されて、水口氏はその可能性に魅了された。大学もインターネット関連のことを学びたくて“情報”と名の付く学部学科がある大学を受験して進学。しかし、入学した大学のカリキュラムは想像と少し違っていた。
「結局、授業中にFlashの本を読んだりしていました。就職活動も、SEとして就職する人が多い学科で私もSEとして内定をもらっていたのですが、最終的にはホームページ関連の仕事がしたくて辞退してしまいました」

勉強会の世話役になって、つながる。

イベント風景

大学卒業後はホームページ制作の仕事がしたいと、Web制作会社と居酒屋のアルバイトを掛け持ちした。
「その頃もFlashでいわゆる“クソゲー”と呼ばれる簡単なゲームを作ってはインターネット上で発表していました。知らない人に見て楽しんでもらうことが純粋に楽しかった。そんな自分の趣味を仕事にするためにも、Web制作の道に進みたいと考えていました」
その後Web系の会社に就職したものの、営業会社だった上に間もなく倒産してしまう。

「自分がFlashをさらに極めるための勉強時間ができたとポジティブに考えました。そんな時にFlashなどのWebクリエイターが集まる勉強会『大阪てら子』と出会ったんです。参加してみると、Flashができる人は会社に一人か二人しかおらず、みんな相談相手がいないという、私と同じ悩みを抱えていました」
最初は勉強のために通っていた水口氏。だが、次第に仲間が増えて気がつけば二次会の幹事に任命され、さらに運営スタッフに加わることに。
「時間だけはたくさんあったことと、集まってくる人が面白くて素晴らしい人ばかりで、もっと仲良くなりたい、もっと学びたいという想いもあって。そこでどうすればいいか考えた結果、運営スタッフに加わることにしました。その縁で仕事のご依頼をいただくのも嬉しいですが、一番のメリットは面白い人と仲良くなれることですね」

当たり前のことをきちんと、それが一番大事。

水口氏は、FlashをはじめとしたWebの仕事について、どんな営業活動を行っているかたずねた。
「基本的には知り合いからご紹介いただく場合が多く、交流会で名刺交換させていただいた方からお声掛けいただくこともあります。重要なのは、技術的な部分以前に納品の時間を守るとか電話の対応というビジネスの基本的な部分。Web業界はなんとなくそういった面がルーズなのは事実だと思いますから。当たり前のことを当たり前にやる、これが一番の営業活動ですね」
あとは、Flashの技術が武器になると実感している。
「昔の同僚がFlashの仕事なら、と声を掛けてくれるようになりました。会社員時代から、ひとつの武器としてFlashをアピールしていました。それが今になって生きてきていますね」

自分らしい世界観を常に意識したい。

取材風景

水口氏が将来やりたいことはどんなことなのだろうか。
「仕事としてはWeb制作の仕事を増やしたいのですが、自社サービスというか自社の作品も発表したい。それも一人じゃなく、個性的なスキルを備えた仲間とチームを組んで作品を作りたいですね」
仕事とは別に自分たちで作る作品とはどんなものなのか。
「ウェブサービスでもiPhoneアプリでもいい。自分たちの世界観を出したいんです。場にマッチしていなくて壮大にスベる……スベっているのに、でもなんだかゾクゾクするという感じ、あの感覚がたまらなく好きなんですよ。そういったギャップを『sakotsu』らしさとしてアピールしていきたいですね」

最後に事務所名『sakotsu』の由来について聞いてみた。
「弱そうでショボイ名前で、実はスゴイというのが好きなんです。sakotsuってすぐに折れて弱そうじゃないですか。でも、そんな弱っちい社名の会社がスゴイモノを作ったら、そのギャップは大きなインパクトになりますよね。でも、自分が電話で『はい、sakotsuです』と話すのが恥ずかしくなってきました(笑)」

公開日:2011年10月21日(金)
取材・文:株式会社ショートカプチーノ 中 直照氏
取材班:株式会社グライド 小久保 あきと氏