自分のアラ探しをし続けることでスキルを磨く。
浜田 智則氏:buzz photo camera

浜田氏

さまざまな雑誌媒体の編集者から信頼を集めているカメラマンの浜田さん。衣食住にかかわることを何かやりたいと考えて就職先に選んだのはアパレルメーカーだったという。そこからどんな経緯を経てカメラマンになったのだろう。今の仕事に至る経緯をお伺いさせていただきました。

blogをはじめたことが転機となった。

足の踏み場もない満員電車に揺られて、終電で帰る東京での日々。アパレルメーカーで買い付けの部署に在籍し、お客様に展示会に来ていただくのが大きな仕事だった。

仕事で写真を撮るようになったのはこの頃。専門店や百貨店のバイヤーさんに年に6回ある展示会に来ていただいて発注してもらうのが大事な仕事だが、来れなかった方にはカタログを見ていただくしかない。商品サンプルは1点しかない場合が多いので、全部写真を撮って、ブックにして見てもらっていた。商品の点数が多く、マネキンのボディに着せて撮影するので、忙しい時期は会社に泊まることも多かった。
「仕事で撮らされていたという感じです。撮る量が多いのと、その分、短時間で撮影しないと帰られなくなるのでスキルも自然に磨かれていたと思います」。

浜田氏

大阪勤務に異動してからは勤務先のビルが22時には退出しなければいけなかったこともあり、少し時間の余裕が生まれてきた。プライベートで撮影したものをblogで公開していたところ、それを見た広告代理店の方から仕事の依頼をいただいたという。依頼内容はバーでカクテルを撮影することだった。
「自分の裁量で動ける働き方がしたくなったという気持ちもありました。それでカメラマンとして独立しようと考えたんです」。

マイナスポイントをつぶしていく。

師匠がいない。だからこそ、ひとつの状況の中で、自分が求められていることの中から学んでいく。ひとりでやっていくノウハウやスキルはなかったので、まずは現像所で働き、ある程度の知識を身につけた。意識的に何度もシャッターを切った。
「現像が無料ですからとにかく撮っていましたね。自分の写真だけひたすら見ていると、アラばっかり見えてくるんですよ。プロフェッショナルは長所を伸ばす人とマイナスポイントをつぶしていく人と二通りいると思いますが、自分は間違いなく後者です。師匠がいない弊害だと思います」。

某有名百貨店内の写真スタジオでも業務委託で働いた。成人式やブライダルなどの写真を撮る現場だった。
「証明写真の撮影が一番難しいんです。身体がまっすぐな人ってまずいないんで。そういうのをまっすぐにとるのを極めようと努力していました」。

取材風景

年間1000人ぐらいの方を撮影する。証明写真に正解はないから難しい。
「ほとんど素人の方を撮ります。それがすごく勉強になりましたね。例えば人によって目の大きさがぜんぜん違う。女性はそれをすごく気にする。それを同じ目の大きさに撮ってあげる。この角度からしか撮られたくない、という方もいらっしゃいますが、思い込みでそんなことはなかったりする。そういうときに主導権を持っていろいろ提案してあげるのが大事だと思っています」。

撮影ジャンルのひとつひとつを極めたい。例えば料理の撮影にアラが見えれば、自分で料理をつくってみて撮影をひたすら繰り返す。弱点はなるべくつぶしていていきたいと語る。

働く上で大事にしていること。

現在、「大阪人」「料理通信」「月刊島民」「kamipro」「週刊現代」などの有名媒体で活躍中の浜田さん。働いていく上で大事にしていることがある。

掲載雑誌

「声をかけてもらったらすぐに動けるようにしています。それと納品までのスピードもなるべく早くできるように心がけていますね。データファイルを無料で転送できるサービスもなるべく使わずに、大阪の会社だったら出社される頃にお伺いして手渡しでもっていけるようにしています。そうしないと完了した気がしないので。編集者といっしょに内容を確認して反応も知りたい」。

浜田さんのインタビューを通して感じるのは、クリエイティブな仕事に必要なことはセンスではなく、手間を惜しまず反省を繰り返す心ではないだろうか。自分の状況に満足せず、常に自分のクオリティに問いかけ考え続ける情熱にヒントをいただきました。

公開日:2011年09月06日(火)
取材・文:狩野哲也事務所 狩野 哲也氏
取材班:株式会社キョウツウデザイン 堀 智久氏