フランスや日本のクリエイターと楽しいことを仕掛けたい!
北村 奈津子氏:(株)La Bonne Solution

北村氏

阿波座にあるクリエイター集積ビル『ACDC』に事務所を構える株式会社La Bonne Solutionは、ウェブの企画・制作に携わっている会社だ。フランスでWEBサイトの制作、アプリケーション開発などを行っている3CFRとパートナーシップを結びウェブ制作に取り組んでいる。今回は、代表の北村氏に会社設立のきっかけやフランスと日本の国民性の違い、会社が目指す方向などについてお話を伺った。

セレンディピティが結びつけた? 突然だった起業の誘い。

『La Bonne Solution』立ち上げ前は、商業施設の企画・開発を行う会社で勤務した後に、什器のリースレンタル、ディスプレイの企画・設計・施工を行う大手企業のパートナースタッフとして企画やディレクションに携わってきた北村氏。
「パリで年2回開催されるインテリアの展示会、MAISON & OBJETへ2008年9月にリサーチに行った際、現在の共同経営者であるジャック・ルシュエル、間瀬祐加吏夫婦と知り合いました。パリで一緒に食事をさせてもらったりしている時に、彼らから『将来日本で事業を展開したいから、一緒に面白いことに取り組める元気で若い日本のIT関連会社を知っていたら紹介して欲しい』というような何気ない会話からが始まりです。」

もちろん当時は、将来一緒に会社を立ち上げるとは想像していなかった。だが、彼らが3ヶ月後に来日した時、その想像していない方向に話は進んでいった。
「彼らに大阪のWEB制作会社を紹介する予定だったのが、当日先方の都合が悪くなり紹介できなくなったのです。でもせっかくだから一緒に食事をしませんかと誘って、楽しい時間を過ごしました。すると「一緒に日本で会社を立ち上げないか」という申し出をいただき、私も全く予期しない突然の展開で驚いたのですが、でもなぜか「やってみよう」と思ったんです。3ヶ月後には私と主人が彼らに会いにパリへ行って、そこからトントン拍子で話は進み、私が代表取締役に就任することになりました。お互いの中でセレンディピティ(何かを発見をする「能力」)が働いたのだと思います。でも、実はまだ彼らに私を会社設立に誘った真意は聞いていないんですよ(笑)」

日本とフランスのクリエイティブが融合する?


『ACDC』ホームページ

北村氏の役割は企画立案や“ビジネスの仕組みづくり”で、制作は日本スタッフとパリのスタッフが担当している。
「会社を設立して1年あまりですが、最初は日本で仕事を受注して、パリで全ての制作をしようと思っていました。パリの会社は、独自CMSを使ってフランスの一流企業のサイトを数多く制作しており、そのCMSを日本でも展開しようと。ただ、日本国内で直接コミュニケーションして即時対応できるスタッフが必要と分かり、現在は日仏両方に制作チームを置いて仕事内容ごとに使い分けています」

フランス人は長期バカンスで1カ月以上休んだり、残業はしないのが通常だそう。そんなお国柄の違いを感じることもあるという。北村氏は、最近フランスと日本の技術や役割をどう融合させるかを考えているそうだ。
「WebはUI(ユーザーインターフェイス)が重要で、ボタン位置やレイアウト、入力フォームなどにおいて、やはり日本人とフランス人では“使い勝手の良さ”の感じ方に違いがあるんですね。そこで日本サイト制作時は、日本側でデザインをしてUIの監修を行い、システムの部分でフランス側の力を活用するようにしました。もちろん、日本企業がヨーロッパをはじめとした海外サイトを立ち上げる際には、フランスの一流企業のサイトを数多く構築しているパリスタッフが主体で制作します」

日本のクリエイターともっと繋がりたい。

事務所

バリバリの技術者ではない北村氏が、Web制作の会社を率いる中で大切にしていることは何だろうか。
「私の役割は、クライアントの成果を実現するために最善の戦略を立てること。私の中では今まで関わっていた商業施設の企画や開発と変わりません。私はソースコードを書く技術者ではありませんが、技術者が忘れがちな“クライアント側の目線”で常にプロジェクトを見られるように意識していたい。要はディレクターということになるのでしょうか」
同時に、フランスと日本のクリエイターの良い部分を生かしながら、それをいかにクライアントの満足に繋げていくかが、今後の自らの役割になるだろうと、北村氏自身は考えている。
「これからはWeb制作のパッケージ商品を作ったりしながら、フランスで熟成されたCMSシステムを日本で販売するような仕組みを構築しようと考えています。そのためにも、メビック扇町のような施設や私が事務所を構えるクリエイター集積ビル『ACDC』の力を借りながら、大阪にいる多くのクリエイターと繋がりたいですね。もちろん仲良くなるだけじゃなくて、面白い仕事や魅力的な仕事を一緒にしたいんです。」

人々の心に共感を湧き起こして世の中を変えたい。

最後に、北村氏に今後の展望についてお話をうかがった。
「日本のクリエイターとネットワークを構築して協力してもらいながら制作体制を強化していこうと考えています。クリエイターのネットワークを『La Bonne Solution』の強みにしていきたいですね。我々が受注した仕事をクライアントもクリエイターも、みんなで目的を共有して成果を目指し楽しみながらやろうよ!という感じが好きで憧れています。会社を大きくすることよりもそうした思いを実現したい。きっと、野望の持ち方が男性とは少し違うのかもしれません。『La Bonne Solution』を中心に多くのクリエイターと面白いこと、楽しいこと、質の良い仕事をやって、少しでも世の中を変えたい。人々の心の中に共感が湧き起こるような仕掛けをしていきたいんですよ」
『La Bonne』はフランス語で“最適な”を意味する。もしかしたら、北村氏が仕掛ける“La Bonne Solution”が世界に飛び出す日もそう遠くないかもしれない。

公開日:2011年01月25日(火)
取材・文:株式会社ショートカプチーノ 中 直照氏
取材班:有限会社TTDESIGN 高山 理氏