大阪ケイオスは“経営者=情報発信者”を目指します。
原田 徹朗氏:(株)レイ・クリエーション

原田氏

レイ・クリエーションは、さまざまな広告デザインはもとより、展示会のディスプレイ設計やウェブサイト制作、中国ビジネス支援のほか、医療系インフォメーションシステム、コンテンツ制作など、多彩な事業を展開している。また、中小企業の経営者とともに『大阪ケイオス』の立ち上げに参加し、情報運用や経営者が情報発信者になるためのサポートを行っている。今回は、代表の原田氏にクリエイティブに対する想いや大阪ケイオスについておうかがいした。

お客様の痛みがわかるデザインをすること。

多数の大手企業の広告制作やウェブサイトを制作してきたレイ・クリエイーション。最近は『大阪ケイオス』をはじめ、中小企業の経営者とともに活動することも増えてきた。
「お客様の痛みがわかるところまで濃密なコミュニケーションをしたいんです。そうすれば絶対に成果が見えてきますから。制作のため、とパソコンの前にいるとすごく楽なんですが、それじゃ戦えない。伝えるべきことや真実は現場にあります。それを見るためには自ら外へ出て、実際に見て感じることが重要なんです」

レイ・クリエーションは、常にクライアントやマーケットと向き合うことを意識しているという。
「我々の仕事は天才が生み出すアートではなく、凡人が生み出す商業デザイン。だからこそ、デザイナーはデザインを見ていてはダメで、マーケットや商品を見なければなりません。要は、情報を処理するのではなく、情報を設計する考え方がクリエイターには必要だと。表現を作り、情報が伝わり、買い手が感動し、消費行動を行う。この流れを設計することが情報設計で、我々はこれがクリエイティブだと考えています」

悩みが『大阪ケイオス』設立につながった。

今は、中小企業の経営者とともに『お客様の痛みがわかるデザイン』を目指す原田氏も、以前は対極の考え方をしていた時期があった。
「以前は、我々がお客様からいただくお金に見合った効果や成果を提供しているかと考えたら、我ながら疑問に思ったり、ちょっとした後ろめたさがありました。でも、『お客様のために』なんて本気で考えて仕事をしていたら、絶対に採算が合わないと思い込んでいましたから、自分の中でとても悩んでいました」

そうした悩みを解消する方法が、クライアントととことんまでコミュニケ−ションすることだった。
「デザイナーもクライアントの現場にどんどん出て行って、密にコミュニケーションすることが最も大切だとわかったんですよ。それが『大阪ケイオス』の活動に繋がっていったんだと思います。もちろん『大阪ケイオス』を主導的に導いたのは製造業の経営者の皆さんで、私は裏方ですが(笑)」


ケイオスカフェ

『大阪ケイオス』で、情報発信の主体を経営者自身に帰属させたい。

『大阪ケイオス』とはどういった組織なのだろう。
「大阪のモノづくり企業が参加し、モノづくり企業の情報戦略及び情報運用を研究・実行する組織が『大阪ケイオス』です。なぜそれを志向するかというと、経営者自らが情報運用の手法を覚えて活用することが最強だと思うからです」

その考えに基づき、今後の『大阪ケイオス』の動画は、経営者自身がインタビューして撮影するという。
「本来ならクリエイターが制作する方が、動画としては良い映像ができるかもしれませんが、それでは情報運用という概念が希薄になり、成果物を見せるだけの動画になってしまいます。モノづくりの背景にある多くのストーリーを表出させ、“モノづくり”を“モノ語り”に変えるのに最適なのは製造者自身のはずです。情報発信の主体を製造者自身に帰属させていくのが『大阪ケイオス』が目指すところなんです。クリエイターと経営者が、お互いの良い点を出しあって、スパイラルアップさせていくのが『大阪ケイオス』の役割と言えるかもしれません」

今後の活動として、Twitterなどのソーシャルメディアを中小企業や商店街に活用してもらえるようサポートすることも予定している。
「Twitterは大きな派生を生み出すメディア。製造業の経営者は自分の技術しか見えていない部分があります。でも、それだけじゃ絶対にダメ。Twitterなどを用いて、我々が“感覚発動”と呼ぶ、心を動かす仕掛けの一端を経営者自身が担うことで拡大スピードは速くなります。『大阪ケイオス』は、これからいろいろな仕掛けを行っていきますよ」

スタッフ一人ひとりが輝けるフィールドを。

ケイオスカフェ

『大阪ケイオス』の未来についておうかがいした。
「この活動を通じて情報運用することで、参加企業の本業の仕事が活性化して発展に繋がる……ここに到達できるかがカギです。その場になれば、というわけではありませんが、当社の隣に『ケイオスカフェ』を作りました。将来的には企業やクリエイターが集まって交流できるようなスペースになればと思っています」

最後にレイ・クリエーションの未来についてたずねた。
「働いている仲間が、主体的に楽しく仕事できるようにしたいですね。やりがいのある職場になることを目指します。そのために、当社で働く一人ひとりに、自分が輝けるフィールドを与えてあげたい。やりがいは責任から生まれるのだと、私自身が代表になって実感しましたし、経営という仕事がこんなに面白いとは思っていなかった。このやりがいや面白さをスタッフ全員に体感して欲しいですね」

クリエイターは事業家にならないとダメ、と原田氏。
「痛みがわかる、苦しみがわかる、そうなると本当のデザインができるようになりますから」

公開日:2010年12月07日(火)
取材・文:株式会社ショートカプチーノ 中 直照氏