“夫婦クリエイターズユニット”が目指す次のステップとは?
佐野 良之氏・ノグチ マサヨ氏:ハビットデザイン

佐野氏・ノグチ氏

ユニットで活動するクリエイターは多いが、夫婦がユニットを組んで活動しているケースは少ないかもしれない。今回お話をおうかがいした『ハビットデザイン』の佐野氏とノグチ氏は、結婚後にユニットを結成した上、二人とも同じグラフィックデザイン&イラストが守備範囲。音楽アーティストのジャケットやノベルティ、さらにはアパレルブランドのカタログなど、多方面で活躍するお二人に色々とお話しをうかがった。

全く別の道を歩んでデザイナーになった二人。

夫婦でユニットを組む二人だが、もちろん最初は別々にクリエイターの仕事をしていた。
佐野氏は、デザイナーを志してデザインの専門学校を卒業後、大阪のデザイン会社に就職。別のデザイン会社で働いていたノグチ氏と結婚したのは、その会社で5年目を迎える頃だったという。
そのノグチ氏はデザイナーという仕事にたどり着くまで、自分が目指すモノを模索していた。高校卒業後、ファッションデザイナーを目指すも何か違うと感じ、服飾学校を半年で中退。高校時代の恩師の「グラフィックデザイナーになればいいのに」という一言を思い出し、グラフィックデザインの道に進むべく大阪に上京し、造形学校で基礎を勉強した後、大学に入り直したという異色の経歴の持ち主だ。

そんな二人だが、実はもともと起業意識が高かったのはノグチ氏の方だったという。
「佐野が独立したいと切り出した時、いい営業担当が現れた! と思いましたね(笑)」
先にノグチ氏がフリーランスとして活動し、資金面を確保。佐野氏は仕事を続けながら営業先の開拓を始め、独立するための準備をしていった。そして結婚してから3年後、佐野氏が8年勤めた会社を退職し、ハビットデザインが誕生した。

営業活動の成果が、さらなるアピールとなる。

作品

二人は基本的にデザインやイラストのテイストが全く違うため、仕事にマッチするテイストの方が作業するという。また、佐野氏が営業担当も兼ねているので、佐野氏の判断でどちらが主として担当するか決めるのだという。
だが、今では忙しい二人も独立当初はゼロからのスタートという思いだった。
「独立してすぐ、過去の実績を整理してポートフォリオを作成して、独学でホームページを立ち上げました。あとは、外注先募集をしている制作会社のサイトや、面白そうな仕事をしている会社に片っ端から電話していました。当然、断られましたが逆に燃えましたね。最初はひたすらテレアポで企業訪問していました。」と佐野氏。

テレアポのほか、mixiなどのコミュニティサイトから仕事を受注するケースもあったそう。
「某音楽アーティストのCDジャケットをやるきっかけは、mixiで繋がったインディーズバンドのCDジャケットを手掛けたのがきっかけ。そこから繋がって今は様々なメジャーアーティストのCDジャケットやノベルティグッズのデザインを担当しています。」と佐野氏。
最近は、今まで重ねた実績がクライアントの目に止まり、クライアントからの問い合わせや紹介も増えたという。

依頼されれば全部やる、その力の源泉は“後戻りはしたくない”という強い思い。

作品

営業を担当する佐野氏は、依頼された仕事はできるだけ断らないようにしているそうで、時には何夜も連続で徹夜することも。その理由を尋ねると、
「独立当初の仕事のない時を体験しているので、もうあの時に戻りたくないという思いがあります。小心者なんですよ。」
と語る佐野氏に、ノグチ氏は、
「気持ちはわかるんですが、身体が資本のフリーランスなので、少しは身体に気を遣って欲しい。一つ仕事が終わりそうになったら「営業電話しないと」とか言い出して……。まだまだ仕事を抱えてるのに……。ちょっと勘弁して欲しいかも(笑)」と応酬。そのやりとりはまさに“夫婦漫才”の様相だ。

しかしながら、そんな性格が幸いしてか準備は怠りない。ポートフォリオを常時携帯し、同じデータをiPhoneにも入れる念の入れよう。また、Twitterやmixiなどのインターネット上にもアンテナを張り巡らしている。しかも、営業電話も自分がやりたい仕事が受注できそうなクライアントにしか掛けないなど、佐野氏なりのこだわりを持って営業活動に取り組む姿勢は、まさに“営業マンの鏡”かもしれない。

やりたい仕事をやるために“組織化”と“新規開拓”。

佐野氏・ノグチ氏

順調に仕事を拡大するハビットデザイン。佐野氏に今後の方向性をおうかがいした。
「より多くのクライアントの期待に応えられる体制づくりをしていきたい。次のステップに進むために仕事の流れを整備して組織化したいですし、仕事を重ねてもっと成長したいです。あとは、クライアントからの要望もあるのでWebも強化していきたい。」
「ジャンルを定めず、どんな媒体のデザインにも対応できる強みを活かし、今後は大阪発信で、ファッション関係や広告デザインにも深く関わっていきたいですね。」とノグチ氏。

最後に、二人の夢をたずねた。佐野氏は、
「映画関係の仕事がしたいんです。映画祭のポスターなどを担当させていただいたことはありますが、いつかメジャー作品の仕事に携わってみたい。」
ノグチ氏にたずねると、
「私が高知県の出身で、故郷に貢献したいという思いがあるんです。いつか、故郷でもある高知密着の仕事に携わって、デザインの力で高知の地域活性化に協力できればと思います。」

公開日:2010年08月20日(金)
取材・文:株式会社ショートカプチーノ 中 直照氏
取材班:株式会社ジーグラフィックス 池田 敦氏