音と映像がシンクロする瞬間を追い求めて
本多 眞吾氏:INDIGO

第2回OAV.Eにも出展した、INDIGOの本多さん。NECやパナソニック、ロート製薬などメーカーのプロモーションビデオのCG加工や編集、オリジナルCMSの構築、企業HPのフラッシュ制作など多岐に渡って活躍している。今回は本多さんのパートナー、ミラージュスタジオでお話を伺った。

動くものが作りたい

本多氏

デザイナー専門学校を卒業し、学生時代からアルバイトをしていたデザイン会社に就職した本多さんは、グラフィックデザイナーとして飲食店や美容院のポスター、チラシなどの制作に携わることになる。
3年後、ようやく仕事のほとんどを1人でこなせるようになった頃、世の中に“Web”という言葉が登場し、やがてデザインの世界でもFlashが使われはじめた。
「その技術にものすごく惹かれましたね。それまでの仕事は、型が決まっているというか、どこか同じような制作物になってしまうので、何か新しいことがしたいと考えていた時だったんです。ただ会社では、FlashどころかHP制作やWeb関係に力が入れられる体制じゃなかった。でも、僕はやりたくてしょうがなかったんですよ(笑)。なので独学でFlashを勉強して、ある映像プロダクションに“3ヵ月タダでもいいので置いてください”と頼み込んで雇ってもらいました」
元々グラフィックデザイナーにこだわっていたわけではなく、自分が面白いと思ったことで食べていきたかった。その後、本多さんは正社員として登用され、3Gを使ったCG加工・編集に没頭するようになる。
「アフターエフェクツやファイナルカットなど、コンテンツ制作とかCG加工に必要なことを覚えるのが楽しくて。音と映像がシンクロした瞬間はものすごい気持ちいいですね。作った映像と音がバシッと決まった時もそうですし、意外な組み合わせで気に入ったものができた時は鳥肌が立つぐらいです。音ひとつで、映像の持つイメージや与える印象がガラリと変わるんですよ。僕はビジュアルを作るのがメインですが、良さを決める要素の半分くらいは音が占めてると思います。だからこそ、音に負けないような映像を作らないといけないんですよね」

東京ではなく、世界へ

スタジオ

そんなある日、本多さんは東京本社へ来ないかと声をかけられた。大きなステップアップになると意気込んだが、本多さんが1ヵ月後にいたのはオーストラリアだった。
「そろそろ違う世界を見てみたい、そんな気持ちはありました。でも、東京には魅力を感じなくて。オーストラリアはCGが盛んで、ハリウッドの映画のCGもやってたりするので、勉強になると決めたんです」
オーストラリアではフリーとして働いた。電話一本でやりとりをしながら、映像のCG加工をしたり、CGを使った番組のタイトルを作った。新しい刺激を求めて海外進出した本多さんだが、実は英語に自信はまったくなかったという。
「英語もろくに喋られないのに知り合いがいたので、頼りにしたんです。でも結局、子ども扱いというか、日本でも日本語が話せない外国人に対して簡単な言葉を選んで話したりするじゃないですか。そんな扱いを受けて、ちょっと凹みました(笑)。でも、仕事のやり方では得るものも大きかったです。大阪のように1人が何でもやります、できますっていうスタイルじゃなくて、完全に分業制なんです。自分の担当の仕事の質を突きつめていく、そういうプロフェッショナルなやり方でしたね」
7ヵ月後、帰国した本多さんはこれからフリーでやっていくことを決意していた。背景に、東京に行かないかと誘われた映像プロダクションの社長の存在がある。
「僕と同じぐらいの年齢なのに社長業をやっていて、いろんな刺激を受けていました。クライアントと直接やり取りをして、やりたいことも提案して企画に盛り込んでいったり。大変ですけど、面白そうだと感じてました。言葉の通じないオーストラリアで頑張れたのだから、言葉の通じる日本、しかも大阪っていう自分のホームでやっていけるはずだと」

映像で人の役に立ちたい

本多氏

フリーになって5年、本多さんが見据える今後のビジョンとは。
「CGの分野を突きつめて、映像で人の役に立ちたいと思っています。普段仕事をしてて思うのは、映像って贅沢品なんですよ。不動産の広報とか、パンフレットだけで充分のところに映像をつける。もちろん分かりやすいという利点はありますけど、映像も使いたいと思ってくれているクライアントに、映像を通して利益をもたらしたい。それと、そろそろ部下をもちたいですね。社会貢献じゃないですけど、今まで周りの人に育ててもらった恩返しとして、今度は僕が誰かを育てていきたい。いずれは僕が全体を管理して、スタッフに実際の作業を任せられるような体制が作れたらいいですね」

現状に満足することなく、脱皮を続けていく本多さん。デジタルメディアクリエイターとして、また経営者として、これからどんな進化を遂げるのか、楽しみだ。

公開日:2010年02月18日(木)
取材・文:山下 朋子氏
取材班:株式会社ファイコム 浅野 由裕氏