システムとデザインの距離は、確実に縮まっています。
杉本 展将氏:(株)ウィズテクノロジー

杉本氏

東天満の静かなエリアにある(株)ウィズテクノロジーは、Webシステム、社内の業務系システム、携帯電話やデジカメに組み込まれる制御系システムを事業の三本柱とするシステム開発会社だ。代表の杉本氏は、経営者、現役のエンジニア、さらにはデジタルハリウッドで講師を務めるなど、多方面で活躍している。今回は、エンジニアとは無縁だった子どもの頃の話やシステムとデザインの“距離感”などについてお話をおうかがいした。

社会人になってから本格的に取り組んだプログラムの世界。

システムエンジニアというと、「小さな頃からパソコンが大好きで?」といった話をイメージしていたのだが、杉本氏は、子どもの頃からコンピュータの仕事をしたいと強く思っていたわけではなかったという。
「私はファミコン世代で、小学生の時に『ファミコンを買って欲しい』と頼んでいました。すると、親はなぜかMSXというパソコンを買ってきたんです。結局、パソコン雑誌に掲載されているゲームのプログラムを打ち込んで遊んでいました。」

高校時代も大学時代も文系で、コンピュータのことは全く学ばなかったが、就職活動はシステム関連企業に絞って活動したという。
「潜在的には理系志望だったのでしょうが、好きじゃなかった物理や化学をガマンして勉強したくなかったんでしょうね(笑)」
就職活動は見事に成功し、当時2,000人規模の受託開発系のソフトハウスに入社。プログラムは入社後に勉強したそうだ。同時に、エンジニアにとって、プログラムが書けることはスキルのひとつであり、お客様とのコミュニケーションやドキュメント作成など様々なスキルが必要であることも、この会社で学んだという。
その後、フリーランスとして一人で活動していた時期もあったが、「本当に自分たちが提供したいものを作るにはチームが必要。それには企業というフィールドが必要だ」と、ウィズテクノロジーを立ち上げた。

システム開発はコミュニケーションが命。

杉本氏

杉本氏は、システム開発おいて重要なのはプログラムのスキルではないという。
「システム開発は皆さんがイメージする以上に人間的な部分があります。常にコンピュータと向き合っているように思いますが、チームで開発をしますから、チーム内でのコミュニケーション力はもちろん、お客様の欲しいと思うものを引き出す力が求められます。」
また、システムを開発するためには“お客様視点”が重要だという。
「作り手側の勝手な思い込みで作ると、“使えない、使いにくい”システムができてしまいます。お客様の仕事のやり方に合わせて、画面や操作性を作ることが大切。時にはお客様の業界を知るために、就職活動用の業界本を読むこともあります。」

ヒアリングの時間を長く取るのも、お客様の問題点を引き出すことに重点を置いているからだという。
「お客様の言う通りに作っても、必ず良いものができるとは限らないのが、システム開発の特徴です。システム開発もサービス業。お客様に満足していただき、喜んでいただかないと意味がありません。信頼は、築くのに膨大な時間が必要ですが、壊れるのは一瞬です。信頼関係を保つ上では“納期を守る”“品質を守る”の2つが大切で、それにコストを加えた3つのバランスが顧客満足においては重要だと考えています。」

デザイナーとプログラマー、協業のカギは“相互理解”。

取材風景

近年、Webシステム開発が増えるにつれ、デザインとシステムの距離が確実に近づいているという。
「私はデザインが苦手です。デザインは感性が要求されると思いますが、システムは論理的に成り立っています。両方を同時に持ち合わせている人はかなり少ないでしょうが、Webシステムでは両方を求められます。弊社は『専門家の会社でありたい』と謳っているのですが、今からデザイン分野に取り組んでも、すぐにお客様が満足できるレベルには到達できません。苦手なデザイン分野はプロと手を組んで、お互いの強みを生かしながら協業するようにしています。」

また、協業を成功させるには“お互いを理解する努力”が必要だという。
「我々もデザイナーと話せる程度のデザイン知識が必要だと考えています。逆に、デザイナーもある程度システムについて把握しておいてほしいですね。お互いを理解していないと、本当に良いものはできないですから。」
そうした相互理解を考える上で、デジタルハリウッドで講師を務めることは非常に役に立っているという。
「自分にとっての“当たり前”を知らない人にどう伝えるか。人に教えることで得られるモノは大きいです。どうすれば伝わるか、感じてもらえるか……相手はプロから高校生まで。本当に勉強になりますね。」

目指すは自社サービスの開発。

最後に今後のウィズテクノロジーの目標をたずねてみた。
「今までは受託開発のスタイルでお客様が要望にあわせたシステムを提供するのが仕事でした。今後はそれに加えて、自ら何かサービスや製品を発表したいですね。お客様が求めるものを作る力に加えて、世の中が便利になるもの、楽しくなるものを作れる力を磨きたいです。」

せっかくなので、杉本氏個人としての目標もたずねてみた。
「お客様にとってはシステムはあくまで手段であって目的ではありません。もう少し大きな視点からシステムを提案するようなコンサルティング的な立場から仕事を進めるようなができるようなことをしてみたいですね。あ、某資格の教材が机の中にあったような……(笑)」

公開日:2010年02月17日(水)
取材・文:株式会社ショートカプチーノ 中 直照氏
取材班:カイエ株式会社 多々良 直治氏