楽しいと思っているうちに、走り続けないといけないと思った。
大谷 佳久氏:ジールズ(株)
大阪の梅田の隣町とは思えない静かな雰囲気の野田にWeb開発会社ジールズがある。「ここが地元なんです。営業はほとんど自転車でやっていますよ」と語る大谷さんは、IT系のハードワーカーには見えないオシャレな雰囲気。アパレルにも興味があった過去や、いったいどんな思いで起業されたのか、将来の展望などお聞きしました。
将来アパレル系で働くか、システム系にするかで迷いました。
「僕がなんでWebの仕事をしているかというと、これがすごく好きなんですよ」とおもむろに内ポケットからレゴブロックを取り出した大谷さん。「自分でブロックをつくる力はないけれど、組み合わせてカタチにしていくことはできる。だからものづくりにはなんらかのカタチで携わりたい、そう思ったんです」。
新卒でシステムの開発会社に就職。ある金融機関の営業職を支援する仕組みづくりのプロジェクトで、あるチームでのメインエンジニアとして、充実した毎日を送っていた。しかし5年半勤めたときに、ふとこのまま終わるのかな、という思いが頭の中をよぎった。
「会社に不満はなかったんです。でもそのときは思い切って会社を辞めて、何か新しいことをするには今しかない、と思いましたね」。
専門学校でデザインの勉強を開始。前後してフリーランスで活動しようと自分の道を模索した。しかしうまくはいかなかった。「大惨事になりましたね、仕事はないですし。HTMLを書いてもこの書き方で本当に正しいのかと不安でした。甘い夢をみていましたね(苦笑)」。
その後、ウェブデザインの会社でシステムもわかる営業職として活躍、さらにステップアップを考えてIT系のコンテンツ会社に就職。その会社で役員となり、経営者視線で物事を考える癖がここで養われることとなる。
サラリーマンだったけど、ビジネスマンじゃなかったと思うんです。
そこで転機が訪れた。
「今までの自分はサラリーマンだったけど、ビジネスマンじゃなかったと思うんですよ。自分が会社に所属しているから給料が入っているだけだった。自分が役員の立場になって初めてヤバい!と思ったんです」。同じ役員の立場に立つ先輩たちの話す内容を聞き、自分に足りない経験や知識を感じとった。
「その経験があるからですね、いろいろな人に積極的に会いに行き、自分や会社を成長させるためのヒントをつかもうと思うようになったのは。エンジニアとクライアントの間に入って折衝することのほうが楽しいですし、今そう思えているうちに走り続けないといけないな、と思いました」。
日本国内だけがお客様だと思ってしまうとダメだと考えています。
そして2008年1月に起業。数人の仲間とともに、Webシステムの構築など開発に携わっている。
「基本的に私が営業で動いていて、エンジニアが開発するという状況です。企業様がホームページを管理しやすいようにブログのようなシステムで、記事を打てば簡単に公開されるようなものをつくっています。ひな形自体はうちのメンバーがつくったものがあるので、それをカスタマイズして使用していただいている状況です」。
受託開発だけでなく、iPhoneの開発も行っているので、新しいことをやりながら自分たちがつくってきた資産を活用していきたい。
「日本国内だけがお客様だと思ってしまうとダメだと考えています。日本ではベタすぎて誰も見向きもしないものであっても、例えばスペインでは大ヒットするかもしれない。そうすれば違う仕事のつくり方ができるんじゃないかなと思うんです」。
会社として進み始めたばかりのジールズ。大谷さんが組み合わせたブロックが、少しずつ動き出して歩みつつあるように感じました。