(株)シーセブン・アソシエイツ 西尾 智子氏

主役はクリエイターで、社長はみんなのサポーターです。

西尾氏

大阪厚生年金会館のすぐそばにあるビルの7階に、広告やSPツール、ウェブサイトの企画・制作を行う『シーセブン・アソシエイツ』がある。そして「外に出ないクリエイターが多いので、このオフィスは“太陽が当たる部屋”“見晴らしの良い部屋”と希望して見つけたんですよ。」と笑顔で語ってくださったのが、社長の西尾氏だ。「社長と呼ばれるのが大嫌い」とおっしゃる西尾氏に、先代社長から社長業を引き継いだ波瀾万丈のいきさつや、独特の経営手法や考え方についておうかがいした。

アルバイトから役員に、そして社長へ…。
その時は、突然にやってきた。

二代目の社長である西尾氏が、この会社に入社したのはアルバイトとしてだった。しかも、1カ月程度で辞めるつもりだったので、他の社員との交流もあまりなく、淡々と自分の仕事をこなすだけの毎日だったという。

だが、7年前に転機が訪れる。コピーライターとしても活躍していた、当時の社長が急病で倒れたのだ。しかも余命数カ月と聞かされる。その時、社長以外で社内のお金について理解していたのは、当時経理担当だった西尾氏だけだったという。「先代社長に社印を渡されて「後は頼む」って…そう言われても、ねぇ(笑)」と今でこそ笑い話になっているが、当時の苦労は計り知れなかっただろう。それでも、1カ月後に迫った決算を税理士の協力も得ながらなんとか乗り切ったそうだ。

その後、先代社長は一命を取り留めたのだが、以前のようにクリエイターや社長としての活動は困難になった。そして、銀行から「決済を平社員の方が担当されるのはちょっと…」という要望があり、前社長の意向で取締役に就任した。さらに2年前には、再び銀行から「そろそろ社長を交代されてはいかがですか?」と言われ、先代社長と話し合った結果、西尾氏の社長就任に至ったという。「取締役になることも、もちろん社長になることも全然望んでいませんでした。ただ、投げ出すわけにも行かず、最終的にはやるしかないと腹をくくりました。でも、他社の社長さんみたいな社長業はできないから、今でもスタッフには自分を社長とは呼ばないで欲しいとお願いしています」と笑う。


社員であるクリエイターのために選んだという、見晴らしが良い、ゆったりとした空間が広がるオフィス

社長は“社長”という役割を担当する、
社員の一人であるという位置づけ。

また、西尾氏の「スタッフには、自分を“社長”と呼ばないで欲しいとお願いしている」という言葉にも垣間見られるが、シーセブン・アソシエイツは、組織が非常にフラットなのが特徴だ。本当に社内のスタッフは、西尾氏を「社長」とは呼ばず「西尾さん」と呼んでいるのだそう。西尾氏も「“社長”というのは役割分担であって、その役割を私が担当する、そんなスタンスでやっていこうと決めていました。社長は“一番エライ人”ではなくて、各人の役割として“企画”“コピーライター”“デザイナー”“社長”というイメージですね。」

また、会社の売上や収支も社員に公表するなど、オープンな経営を行っている。「会社の状況を社員全員が同じレベルで理解している状態を目指しています。実は、嬉しいことにその説明後に入社した新入社員には、先輩社員からその話がきちんと伝えてくれているようなんです。」と西尾氏が語るとおり、社員であるクリエイター全員が、高い自主性とモチベーションを持っている。これには、上記のようなフラットな組織やオープンな経営がプラスの影響を与えていると感じた。

主役はクリエイターである社員たち。
社長としての私の役割は3つだけ。


主役のクリエイターたちと西尾氏

実は、社長はクリエイター出身ではなく、社長以外は全員クリエイターだという。個性の塊と思われるクリエイターたちをまとめる秘訣をおうかがいすると「クリエイターの集団をまとめるという意識はないです。ただ、主役はクリエイターである社員ですし、一番エライのは仕事をして売上を上げるクリエイターである社員ですから、私は一番下っ端なんですよ」と西尾氏。

ただ、“クリエイターである前に、シーセブン・アソシエイツという企業の一員である”という点については、徹底して話しているそうで「会社という組織の中で働く以上、チームワークを重視することが最優先です」と、その点に関してはあえて厳しくしている。また、西尾氏は「クリエイターとしての自分以外に、どんな小さな事でもいいから、シーセブン・アソシエイツの一員として必要とされる理由、会社の役に立つことを見つけてください」と話しているという。そのため、クリエイター全員がデザイナーやコピーライターといったクリエイターとしての役割以外に、「備品の管理」「タイムカードの集計・管理」などの会社経営に欠かせない役割を各人が担っている。

また、社長としての仕事について聞くと「社長としての仕事は“経営面の判断を行う時”“謝りに行く時”“ケンカする時”の3つですね。あとは私がいなくても会社が動いていくのがベストですし、実際に動いていますね。」

「成り行き」にまかせる経営で、
本当の強み、得意技を模索する。

西尾氏に目指す企業像を聞くと「理想は私がいなくても良い会社。今後の戦略などは、特に決めていない」という答えが返ってきた。これには理由があるそうで「“成り行きにまかせる”が私の経営方針なんです。なぜなら、そんな“成り行き”になったのは、なるべくしてなった“必然”のはず。だから「ああしよう、こうしよう」と考えるのではなく、その“成り行き”に任せながら、当社がどう動いていくべきかを考えています。」という。

目下の課題をたずねると「成り行きに任せながら成長し続けられる、そんな当社の強みや得意技を明確にすることですね。ただ、それを見つけるための舵取りは、社長である私の仕事です。だって、もし社員が率先してやって失敗したら、社員が傷付くじゃないですか。私が率先してやれば傷付くのは私だけですから」という言葉に、西尾氏の社員であるクリエイターを大切にする想いを感じた。
同時に、『シーセブン・アソシエイツ』のクリエイター全員が、西尾氏からこの想いをきちんと受け取り信頼しているからこそ、自主的に高いモチベーションを持って仕事をしているのだと確信した。

クリエイターズファイル Vol.122

公開

2009年08月24日(月)

取材・文

株式会社ショートカプチーノ 中 直照氏

取材チーム

株式会社ファイコム 浅野 由裕氏
株式会社TMコミュニケーションズ 宮下 大司氏

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