クリエイターとクライアントのより良い関係を模索し続けていきたい。
長束 泰幸氏:(株)オプスデザイン

長束氏

大阪・南船場のオフィス街にアパレルと雑貨のショップprideli graphic labが一階に入るビルがある。そのお店の奥にあるのがデザイン事務所OPUS DESIGNだ。オフィスの代表である長束さんに、ご自身の活動についてお聞きしました。

ブロックのおもちゃに出会ったことで
人生が大きく変わった!?

高校を卒業してフリーターとして百貨店の玩具売り場で働いていた長束さん。「手に職をつけたいと考えていました。パソコンをまったく扱うことができなかったので、バイト先の友だちが通っているデザインスクールに行ってみることにしたんです」。

それがOPUS DESIGN SCHOOL。ビギナーコースの授業でデザインに触れて、名刺やカレンダーを制作し、デザインが楽しくなってきた。そして就職準備コースの最終課題に選んだものがきっかけで、大きな転機が訪れる。

「CARPENTER BLOCKmini(以下ブロック)というおもちゃを課題に選びました。当時、おもちゃ売り場でバイトしていたのですが、デザインを変えたら面白くなる商品は何だろうと思って、このブロックを大人向けの商品として打ち出してみたんです。現役のデザイナーの前でプレゼンしたのですが、思いのほか良い評価をいただいて、デザインの仕事をやっていく上で自信になりましたね」。

すぐにそのおもちゃの販売元であった大阪・鶴橋の会社を訪れた。喜んでもらった。しばらくして「これを商品化していきたいので、うちで働きませんか?」と働いていたおもちゃ売り場にその企業の方が来られたのだった。

ブロックは世界デビューを果たした。
でも、スキル面の不安がつきまとった。

長束さんを高く評価してくれたのは営業担当の富永さん。彼は間もなく「CARPENTER BLOCK mini」のメーカー「SOZ CORPORATION」を立ち上げ、長束さんは創立メンバーとして参画した。

取材風景

ブロックの認知度は高まり、現在はフランス・ルーブル装飾美術館で19世紀から現在までのTOYとして収蔵されている。イチから商品をリニューアルして世の中に広めていくプロセスを体験できたけれど、自分のスキル面をもっと向上させたいと考えた。

そしてデザインをはじめて学んだ場所、オプスで働くことにした長束さん。自宅で作業しながらフリーランスの立場でオプスに関わった。当時、30歳。請求書の書き方はそのときはじめて覚えたというほど、制作以外の知識に乏しかった。そしてWEBサイトの構築とデザインの制作に携わることからはじまった。

ひとつ目指していたことが
自分の中でクリアになった。

OPUSの中で、上司にあたる方といっしょに企画書、計画書をつくりあげていくプロセスの中で、自分の中のスキルに変化が現れたという。「企画書と言えばビジネスマンが作成する企画書しかイメージできなかったのですが、経営者であり、プランナーであり、デザインを活用できる人がつくる企画書に触れることで、デザインというものの視野がパッと広がりました。ある案件でビルの名前を変更する提案依頼があり計画書を視覚伝達の手段を使って伝える試みをしたのですが、どういうふうに筋道を立ててお客様にわかるように表現するのか、お客様と共通言語を持つことの大切さを実感しました。その作業に苦労しながらも良いものができたと思います」。

作業風景

結果的にその仕事は採用されたわけではなかったが、頭の中のデザインを他人に伝えるための方法が明確化し、自分の足りない部分を意識することにつながった。さまざまな案件に携わる中、自分のデザインがクライアントの資産になるよう意識するようになった。ひとつ目指していたことが自分の中でクリアになった。

そして2008年の9月に株式会社オプスデザインが誕生。代表に抜擢された。「偶然が重なっただけなんです」。オプスの目指すところはクリエイティブの新しい環境をカタチにすること。モノづくりにおける様々な垣根を取り払って、みんなが同じ地平に立ち、自由にアイデアを出し合いたい。

「風通しの良い方法で、それぞれが自分の得意な力を存分に発揮しあえる場にしたいと考えています。そんな場所を実現する為に、クリエイター同士のネットワークづくりや、クリエイターとクライアントのより良い関係を模索し続けていきたいですね」。

公開日:2009年07月03日(金)
取材・文:狩野哲也事務所 狩野 哲也氏
取材班:株式会社ライフサイズ 南 啓史氏