多彩な顔を持ち、つねに情報発信をするギャラリー
森 敬典氏・ありさだ あきよ氏:FOREST / Gallery HAY-ON-WYE

ギャラリー外観

オシャレであたたかみのある雑貨にあふれ、壁にはぎっしりと洋書や古書が並ぶGallery HAY-ON-WYE(ギャラリー ヘイ・オン・ワイ)一見、ちょっとヤバイ人?と思うほどの濃い風貌で、少し近寄りがたいなぁ……と思っていると、耳あたりの良い声で
「どうもー!はじめまして!!」
その声に多少ホッとし、席に着きます。
サプライズなファーストインプレッションから、今回はなかなか楽しいお話が聞けそうな予感……。と、わくわくしながら取材させていただきました。

何でも手がける敏腕コピーライター

森さん

森さんは普段は何をしている人なんですか??と、素朴な疑問。
ソコで一発

「さぁて、何者なんでしょうね。人のイメージなんて他人が勝手に作るものですよね。自分で職業説明するのもいいんだけど、あなたの想像で適当に書いてくれていいですよ(笑)。」

実は、森さんは、コピーライター、クリエイティブディレクターという広告業に足をつっこんでいる人です。
大学の経済学部を卒業された後、大阪の広告制作プロダクションや、京都の印刷会社の企画部門を経て、独立。現在の事務所フォレストを1997年にスタートします。

「独立したてのころはなんでもやりましたよ。某大手電器メーカーのMDのパッケージデザインから、旅行雑誌の取材まで、選り好みなしで仕事をしましたよ。」
「広告の命は短いけれど、商品そのもののデザインは少し命が長いのでちょっとうれしかった。」

経済学部出身なのに?元々クリエイティブな仕事に興味があったのですか?との問いに、高校時代の友人からの影響が大きいと答える森さん。
芸術系の友人からデッサンを習ったり、土日になれば集まって酒をかっくらいながらセッションしたり……。
その時の“遊び”が今そのまま仕事になっている感じです。

多彩な顔を持つGallery HAY-ON-WYE


ティンガティンガ展

ギャラリーをはじめたのは、全くの勢い。前の事務所がすぐ近くにあったので、元々のギャラリー[当時は雲母倶楽部]に、よく遊びにきていたんだとか。
ところがある時、オーナーがギャラリーを閉めることに。ファイナルパーティーに集まった人達が、お金を出し合ってこのギャラリーを継続させていこうと話が盛り上がったそうです。しかしよくある話で、計画は流れ、結局、森さんが借りることになり、2003年10月10日にオープンしました。
このギャラリーを共同で運営をしている、ありさだあきよさんは、ファッション専門学校を卒業後、某アパレルメーカーで子ども服の企画、販売促進を経て、2003年に独立。ビーズアクセサリーを中心とするものづくりをする場所を探していたところ、森さんにギャラリーオープンの誘いを受けて現在に至るそうです。


アフリカの生地を使った作品展

ギャラリーオープンから、知人がwebに紹介してくれるなど、たくさんの人とのつながりや支えで、成り立ってきました。最近では、ティンガティンガといった色鮮やかなアフリカンアートの作品展や、様々な音楽ジャンルのライブ、編集稽古のワークショップ、落語会など、ジャンルに囚われない企画展やイベントを開催。内容によって多彩な顔を見せるギャラリーです。
中には、オリジナルの万華鏡やビーズアクセサリーを製作できるワークショップもあり、老若男女を問わず楽しめます。世界でたった一つの万華鏡なんて魅力的。自分で作るとなると感動もひとしおです。

古書の村[ヘイ・オン・ワイ]


本棚に並ぶ古書や洋書

[HAY-ON-WYE]とは?どういった意味があるのでしょうか?
ギャラリーを立ち上げるとなり、名前をどうしようか……。その時、たまたま[イギリスの村]という本を手にしたありさださんが、イギリスのウエールズ地方にある「古書の村」という見出しを発見。その村の名前こそ、[ヘイ・オン・ワイ]でした。

ヘイ・オン・ワイ村は、古本で村おこしをしようと考えたある人物が、古いお城を買い取り、その庭に古本がたくさん入った本棚を並べたら、様々なアーティスト達が集まりだした。あまり知られていないマニアックな村ですが、町おこしをしている人や、古書マニアにとってはバイブル的存在の村です。年に一回、ブックフェアなるものも行われます。その他ロックフェスティバルなども行われ、ジョン・レノンの死について黙していたポール・マッカートニーが初めてその件について意見を述べた場所とのこと。要は、町おこし村おこしのパイオニアみたいなもの。

なるほど、どうりでこのギャラリーには本がたくさんあるわけです。

[平穏和癒]という和文表記もあり、落語会のときはギャラリー ヘイ・オン・ワイから[平穏亭]に変身するなど、なかなかこまめな空間です。

これからのHAY-ON-WYE


今後の展望を語る森さん(写真左)と
ありさださん(写真右)

これからギャラリーをどうしていきたいですか?との質問に、

「情報は、発信する者のところに集まってくるといいます。しっかりと発信できるギャラリーにしていきたいものですね。」

クリエイター同士の横のつながりを大切にして、育んだネットワークを生かして、世間へどんどんアートを発信していきたいと、クリエイターでありギャラリー経営者ならではの目線で取り組んでいかれます。

「売れないのがアートという先入観がありますが、売れる=支持されるのもアートの大切な要素。販売に関するノウハウも培っていきたいものです。」

ありさださんのアクセサリーはイベントに出品した際、「どこで販売してるんですか?」と聞かれることも多いので、今後はギャラリーにショップ機能を持たせる計画もあるそうです。
大阪、東京と日本国内だけにこだわらず、世界中に目を向けられているお二人。今年はぜひ、ヘイ・オン・ワイ村とコンタクトしたいとも。
なんだかHAY-ON-WYEから、新しい動きが始まりそうな予感がします。

公開日:2009年03月23日(月)
取材・文:株式会社ライフサイズ 東 恭子氏
取材班:株式会社ライフサイズ 杉山 貴伸氏