水曜日の午前中は仕事をしない日、と決めています。
浜地 直美氏:(株)バルーンヘルプ

浜地氏

扇町公園南側、高速道路沿いのビルの一室にバルーンヘルプという企業がある。そちらの女性社長が浜地さん。ファイルメーカーと呼ばれるアプリケーションソフトを使用したサービスを展開している。今回は開発者として、社長としてのお話をおうかがいしてきました。

78000円で購入した
ファイルメーカーで
すべてがはじまった。

「コンピュータが好きで、Macを使っていろいろなソフトの操作をするのが好きだったんです」と語る浜地さん。アルバイトで貯めたお金で当時78000円だったファイルメーカーを購入した。
「大学生だったのですが、本当に買っただけで(笑)。愛着もあるし、使わなければもったいない、元をとろうと思ってファイルメーカーを使用するアルバイトをはじめたんです」。

時はバブルの時代。派遣会社が活発で、ファイルメーカーのスキルを登録していた浜地さんは、京都の企業で顧客管理を行った。大学を卒業し、仕事でMacを使いたかった浜地さんはアップルセンターに勤めることになる。1年半後、出産のためその会社を辞め、出産後、子育てしながら会社を興した。

浜地氏

「起業のきっかけは会社を作りたかったわけではなく、登録している派遣会社が企業相手じゃないと契約できないからだったんです。そのほうが時給が高くなるし、派遣じゃなくて発注という関係になりました」。1997年1月、バルーンヘルプはそんなふうに誕生した。

バルーンヘルプ誕生。
社長業のたいへんさを
身にしみてわかった。

気負いがなく、当時は会社を大きくしようという思いはぜんぜんなかったという浜地さん。徐々に案件が入るようになり、人手が足りないのでスタッフを雇うようになった。
「1人目の採用はたいへんでしたね。労力が倍になって売り上げが半分になりました。社長業は初めてなので、結局は人を採用して学べるじゃないですか。自分が10時間働いたとして、その半分を教えるたり、2割を管理するとかなので、失敗も増えたりしますね。来てくれる人材も少なくて、来てもマウスのクリックができないとか(笑)」。

システムをつくるのでその業務にあったものを開発する。実際に作業をする人がほしいけれど、そういう人材がいない。だから育てるしかなかった。

「ファイルメーカーだけでも、ものすごく奥深いソフトなのに、他のデータベースソフトも使って中途半端な技術でシステムづくりするというよりは大好きなファイルメーカーに特化したいと思い、今もそれを曲げていないですね」。

システム開発以外に、ファイルメーカーを多くの方に知ってもらいたいと活用セミナーを開催している。
「社長さんだったり経理をやっている方だったり教える方はバラバラですね。商工会議所さんとタイアップしていてパソコン教室の中にファイルメーカーを入れてもらっています」。

開発環境としてファイルメーカーを使うということのメリットは、早い、安い、簡単だからだと語る。

取材風景

「一般的に、システムづくりって紙の上で仕様を決められたら半分ぐらい完成。そして3割が開発、動作テスト、修正、運用サポートで完成なんです。ファイルメーカーを使えば、開発がとても速く、お客様にイメージを見ていただきながら仕様の確認ができ、イメージの食い違いが少なく、またプログラムの修正が容易なのです。だから、早い・安い・簡単なソフトなんだと思います。

ファイルメーカー社自体が大企業を意識した戦略に変わってきたので願っていた方向にきてくれました。大企業の基幹システムなんて、仕様を確定するのに何年もかかっています。そこで、仕様を確認するためのシステムプロトタイプにファイルメーカーが向いていると思います。だから今後は大企業さん向けに講習会を開催し、よさを広めていきたいと思っています」。

「水曜日はみんなが仕事をしない日」
と決めているんです。

ホームページには社員旅行の様子など、楽しい様子が満載。「システム納品後、お客様はそこからがスタートなので、長いお付き合いになるのです。だから、社員も長い目でみて一時的に無理して残業して働いてもらうと体調を崩し辞めちゃうかもしれないので、スパンを長く考えているんです。あたしはアイデアマンなので、いろいろなことにチャレンジしたいので、今は水曜日を仕事しない日って決めているんです。研究日にしてマインドマップしたり、普段しないことをしたりしています」。

マインドマップは一つの言葉や絵からイメージするものをどんどん広げていって、自分が気づかなかった奥底にあるものを引き出す方法。

マインドマップ

「目標とか夢とか前向きなものをテーマにしようと思っているんです。このいきさつは各個人の成長する場が会社だと思っているからなんです。こういうこと事態の積み重ねで会社が大きくなると思っています。

マインドマップは楽しそうにやっていますよ。私たちは普段パソコンを操作するので文字を書く機会がないので手を動かすということが以外とできないと思うんです」。

そろって水曜日の朝に、英語カルタとり大会や3分間スピーチコンテストなどをするそう。
「みんな、なかなか人前でしゃべる機会が少ないので意外な効果があるのが、それがきっかけで社内での会話が増えたんです」。

わくわく申請というものがあり、みんながみんなに役立つための案を出しあうのだとか。その狙いは社員とのコミュニケーションをとるということが大きい。

「経営者として失格だと思うのですが、自分で何かやりたいとか考えたことって普通に働いているだけなら流されると思うのですよ。例えば『自分にはこんな仕事に向いているかも、だから転職しますね』と言われると普通の会社なら引き止めたいところだと思うのですが、
私は素直に『おめでとう』と言えると思うのです。そういうことで、長いおつきあいが社員とできると思うんですよ」。

公開日:2009年02月12日(木)
取材・文:狩野哲也事務所 狩野 哲也氏
取材班:株式会社ゼック・エンタープライズ  長尾 朋成氏、株式会社ファイコム  浅野 由裕氏