イメージをカタチにしていきたい
佐古 邦彦氏:(有)ツー ジャパン

画材販売やカラー出力、オンデマンド印刷など、一見、街の出力センターのように思えるTWO-JAPANさん。実際はポスターを出力するだけではなく、持てる技術や経験、知識を活用してスゴイことを創造している。どのようなものを創り出しているのか、代表の佐古さんにお話しをお伺いしました。

古い技術を使って新しいものを創りだす

TWO-JAPAN事務所前

デザイナーが使用する画材の販売と、ポスターやチラシを出力するテクニカルサポートセンターを、スタッフ4名でスタートさせたTWO-JAPANさん。しかし、ある時、ちょっと変わった依頼がやってくる。それは、「商品パッケージのサンプルをつくってほしい」ということだった。「某メーカーの商品カタログを制作するという話があり、まだパッケージも完成していない商品を撮影したい。その商品のパッケージをつくれないかといわれたんです」。完成型を思い浮かべながらスタッフと相談して作業を開始。出力したパッケージのデザインを立体にし、クロマテックで文字を転写するなど、自分たちの持てる技術や経験、知識を生かして1点もののパッケージサンプルを手作業でつくりあげた。自分たちが創ったものに対してどんな反応を示すのか、内心はドキドキしたに違いない。そのサンプルを使った撮影は順調に進み、お客様は大喜び。そのクオリティの高さと熱意、スキル、発想力が評判になり、「パッケージのサンプルをつくってほしい」という依頼が多く寄せられるようになったという。「クロマテック」と聞いて、「ああ、あれね」とわかった人はオーバーフォーティー。そもそも「クロマテック」とはインレタ(インスタントレタリング)とも言われ、文字や写真などを擦って貼る転写シールのこと。デザイン業界にMacが現れる前は、よく使われていた画材のひとつである。「古い技術かもしれないけれど、それを使って新しいものを創り出す。視点を変えれば、新しいものに見える」という発想は、他の出力センターにはない、TWO-JAPANさんの大きな強みだ。

ものづくりへの「こだわり」が、お客様の満足度を高める

TWO-JAPAN事務所前
パッケージ等のダミー

パッケージのサンプルづくりというジャンルに取り組みはじめたTWO-JAPANさん。
「イメージをカタチに」を合言葉に、お客様が「こういう風な商品をつくりたいけど、どうかな?」といった要望を次々と叶えていった。どれもそう簡単なオーダーではないだろうが、イメージをカタチに変えていく。例えばデザイナーが企業へプレゼンテーションする際に、そのパッケージデザインのサンプルを手掛ける。その結果は、見事に採用。「現物見本を創ってプレゼンすると、通る確率が高くなる」と考えるデザイナーが増え、パッケージサンプル作成が多くなってきたという。なかにはとんでもない発注もある。イベントに使用するという高さ150cmもあるお菓子のパッケージを制作してほしいというオーダー。東京でのイベントに使用するもので、ブースに飾るという。「通常業務の合間にできるものではなく、それに集中して制作しなければいけないので、早朝か、深夜、もしくは休日に時間をつくって制作しなければできない。さらに、つくった後も東京に送る際に壊れないように気をつけなければならなかったんです」。試行錯誤を繰り返し、2日間で完成。その梱包も、移送中に壊れないよう、細心の注意をはらって手づくりした。創るものに対する「こだわり」と、お客様のイメージをカタチにし、満足していただきたいという「こだわり」。その2つの「こだわり」を持って取り組む姿勢は、業種が変わっても通じるもので、見習うべきことあり、それがお客様の心をつかむコツであると、あらためて教えられた。

ウチでしかできないことをやっていきたい

佐古氏

「お客様が持っているイメージをカタチにしていきたい」。それはTWO-JAPANを立ち上げる前身の会社から掲げていたコンセプト。それを実現していくためには、時に苦労することもあり、それはパッケージの「質感」を出すことだという。見た目はもちろん、触感をどれだけ本物に近いものが創れるかを考えるのが大変であるが、それをきちんと実現することによって、そのサンプルが量産するためのプロトタイプになり、お客様からの大きな信頼を得ることにつながるのだろう。
最後に今後の目標を聞いてみた。「まずは、社員みんなで集まって相談しながらものを創っていきたい。さらには、パッケージ印刷に役立つ機械を入れてサービスの幅を広げていきたいと思います。例えば一部分だけが盛り上がっている1点もののポスターを作成するなど、ウチにしかできないようなことをやっていきたい」。
職人と呼べる精鋭が集まったプロフェッショナル集団。それがTWO-JAPAN。企業やデザイナーの裏方でありながら、なくてはならない大きな存在。これからもお客様がイメージするそのビジョンを的確に読み取って、次々にカタチへと変換していくことだろう。

公開日:2009年02月10日(火)
取材・文:株式会社レグ 三島 淳二氏
取材班:株式会社ファイコム 浅野 由裕氏