メビック発のコラボレーション事例の紹介

3団体が3世代で「逢う、喋る、絡みだす」
3団体によるコラボトークイベント開催

イベント風景
2017年02月25日開催「3団体から3世代3人ずつのトーク3昧 第2弾 言葉の殴り愛。」

自分から扉を開くことで、血のめぐりを良く!

コピー、写真、デザインは広告制作の上で欠かせない三つ巴、それぞれの聖なる領域をリスペクトしながら長い年月を協働してきたが……。クリエイターの守備範囲も変わった。広告予算も昔とはぜんぜん違う。そもそも広告業界に憧れる若い世代はいるのか。そんな時代の空気に風穴を開けるべく「OCC」「APA関西支部」「JAGDA大阪地区」という3つのクリエイティブ団体が自ら扉を開いた。「逢いにいかなくちゃ。」
3団体から取材に応じてくださったのは、APAの平林義章さん、JAGDAの森夕里子さんと鈴木信輔さん、OCCの会長・坂口二郎さん。そもそもの言い出しっぺはOCCの坂口さんだ。OCCは、日本で最も歴史あるコピーライターズ・クラブだが、活動は“OCC賞”の開催と“OCC年鑑”の発行がメイン。「動いている感覚がなくて。JAGDAなどは会員も若く、展覧会やイベントも活発。OCCも世代交代しながら血のめぐりを良くしたいなぁと」。坂口さんはOCCの先輩コピーライター田中有史さんと話し合い、2014年の暮れにメビック扇町に足を運んだ。堂野所長は「ビックリしました。OCCは他のクリエイティブ団体とは切り離されていて、デザイナーやカメラマンの知り合いが少ないと言うんですから。そもそも親戚のような職種なのに!」と当時を振り返る。そこから話は急展開。JAGDA、APA共に親交の深いメビック扇町の計らいで、3団体の代表が顔を合わせることに。まずは逢って、仲良くなることからで充分。ゴールは決めなかった。2ヵ月に1回のペースでミーティングを行い、酒を酌み交わす。そのうち青く見えていた隣の芝生もそれぞれに似たような想いや課題を抱えていることがわかっていった。

フライヤー
第1回フライヤー / 2016年2月27日

友だちをつくる感覚で充分じゃないですか?

3団体が共通して抱えている課題とは、主に若手クリエイターの発掘、異業種とのコミュニケーションや連携不足など。とはいえ昨今、団体に所属しようとするクリエイターが少ないのも事実。メリットを尋ねてみると、皆が口を揃えて「特にないんですよね~」と笑う。もちろん各団体に所属しているからこそチャレンジできる広告賞もあるし、展覧会やイベントに参加するチャンス、フリーランス向きの健康保険組合に加入できるメリット等は大きいうえでのこと。APAの平林さんは、「APAだからってカメラの機材が安く買えたり、スタジオが安く借りられるなどのメリットはありません(笑)。かつては広告写真業界のスーパースターに憧れ、彼らのセンスや技術を学ぼうと精力的にAPAに入る人が多かったんですけど、若い世代は減っていますね。しかし、APAならではの写真家同士のヨコのつながりは大きな宝物です」。JAGDAの鈴木さんは「僕はデザイナーとしてJAGDAに入ってこそ一人前だと先輩方を見ていて思っていました。実際に入ってみると同世代のデザイナーとのつながりが生まれ、彼らがどんなデザインをしてるか意識するようになってからは競争意識が芽生え、僕、デザインが巧くなったと自負しています。よくJAGDAに入るメリットは?と聞かれますが、数字にならないメリットはすごくある。友だちをつくる感覚で充分じゃないですか。それに今回のようなコラボでは、コピーライターやカメラマンといった異業種の先輩と会話できることが面白いことでした」。JAGDA大阪地区の代表である森さんは「最初の頃に3団体でコラボして企業ポスターを作る話があったらしく、鈴木さんがやりたくないと言っていたのを覚えていますが(笑)、JAGDAの大阪地区は楽しいことが基本なので、何かやらねばという危機感もなく、しばらくはお酒を飲んだり、ご飯を食べたり……」。そんな風にして3団体が顔を合わせているうちに、「この酒場の延長のようなトークサロンをやってみたい」と、トークイベントの骨格が見えてきた。

フライヤー
第2回フライヤー / 2017年2月25日

2年目の「3団体、3世代、3人のトーク3昧」

初開催は2016年2月、「3団体、3世代、3人のトーク3昧」。“写真とデザインとコピー、親戚みたいなものなのに交流がなかった3つの団体のごちゃまぜトーク”はゆるやかにスタート。2年目はさらにパワーアップした。写真は「3本のバナナ」、コピーは「言葉の殴り愛」、分厚い段ボール紙に印刷したやんちゃ目のフライヤーが大々的に撒かれ、2017年2月25日開催。フライヤーだけで、3団体の気合が伝わってくる。「コピーだけでも十案以上、写真も何十枚とあがってきて、そこから一番ゆるいものを選んでビジュアルを作りました」とデザイン担当の鈴木さん。今回はトークバトルをより白熱させるために、会場のセンターにリング状に椅子を設置。オーディエンスには、関西クリエイター業界の重鎮から、第一線で活躍する中堅どころ、ノートを広げてメモをとっている若手クリエイターなどが集まる。「若手の部」「中堅の部」「ベテランの部」で各団体から代表者がセンターに集まり、トークを展開。「デジタル化で仕事は変わったか?」「ワークライフバランスをどう思うか?」「モチベーションを高めたり、維持する方法は?」など、テーマは各世代の仕事観を浮き彫りにする内容。トークが得意とはいえないクリエイターも、モデレーターの手腕によってじわじわと個性が滲み出て、若手カメラマンの悩みに頷いたり、大御所コピーライターの名言にはっとしたり。酒場で先輩クリエイターとじっくり人生トークをした夜にも似た高揚感に包まれる。当初、課題に挙げられていた若い世代や他業種クリエイターはいなかったのではなく、まだ出逢っていなかっただけ。OCCの坂口さんは、「コピーライターズ・クラブは全国にありますが、こんな風に異業種コラボをしているのは大阪だけ。他からの注目度も高いんです。僕らはやっと入口に立ったばかり。これからも続けていくことで若いクリエイターを育て、次世代にきちんとバトンを渡していきたい」と語った。

プロジェクトメンバー

公益社団法人日本広告写真家協会関西支部(APA)

http://www.apa-japan.com/kansai/

公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)大阪地区

http://osaka.jagda.or.jp/

大阪コピーライターズ・クラブ(OCC)

https://www.occ.gr.jp/

公開:2017年5月12日(金)
取材・文:村上美香氏(株式会社一八八

*掲載内容は、掲載時もしくは取材時の情報に基づいています。