メビック発のコラボレーション事例の紹介

デジタルサイネージ市場に風穴を開けるアイデア×技術×共感。
デジタルデザインサイネージ®の開発

レストラン外観
扇町 ビアレストラン ONZORO’s BIERRÖSTEREI

新規事業の方向性は決まっていた。あとは、パートナー探しのみ!

かつてドッグイヤーやマウスイヤーなどといわれたICT業界の進化スピード。そのスピードはさらにアップし、範囲は拡大し続けている。近年、デジタルサイネージの進化もめざましい。そこにビジネスチャンスを見出したのが有限会社TTDESIGN代表の高山理さん。パンフレットやカタログ、会社案内などグラフィックデザイン中心のデザイン会社を大阪で創業、現在東京にもサテライトオフィスを構えるが、安定した会社経営のためには新たな事業展開が不可欠だと考えていた。「さまざまな展示会などに足を運び情報収集をしていたのですが、紙の媒体がデジタルサイネージに取って代わられる時代が来るだろうな、それもそんなに遠くない将来、と思うようになりました」と高山さん。新規事業の方向性は決まった。次はシステムまわりを担ってくれるパートナー探し。当初、メーカーなどと交渉していたが、なかなかうまく事が運ばず苦労していたという。パートナー探しについて、早い段階から相談を受けていたメビック扇町の増見コーディネーターの頭に適任者として浮かんでいたのは、U-SOFTFACTORY代表の上間俊和さん。折を見て紹介しようと考えていたところ、たまたま高山さんと上間さんが、「企業等によるクリエイター募集プレゼン特別版 in 大阪イノベーションハブ」に参加。最適なパートナーとなる両者が、ここで巡り合うことになる。

テンプレート画像
ユーザーが気軽に使えるテンプレートを提供するほか、オリジナルコンテンツの要望にも対応。

明確なビジョンが引き寄せた、アイデア×技術×共感。

上間さんは、前職ではものづくりに携わっていたが、社内の業務改善の一環でシステム制作に関わるようになった。そのスキルを活かして独立するが、最初に受注したのが映画館のデジタルサイネージだったという。現在は関西を中心にデジタルサイネージコンテンツの企画・開発の他、ソフトウェア開発なども手がけている。「高山さんから新規事業のお話を聞いて、そのアイデアの斬新さがすごい、このビジネスモデルなら、デジタルサイネージが一気に広がるのではないかと思いました」と上間さん。かたや高山さんは、上間さんの誠実そうな人柄と技術力の高さに惹かれたという。しっかりとした技術的バックボーンがあり、アイデアに共感してくれる上間さんは、高山さんが探していたパートナーにぴったりだった。高山さんがビジネスモデル、サービス、デザインなどを、上間さんが基幹システムの作り込みをそれぞれ担当。コミュニケーションもスムーズでお互いを尊重できる関係が醸成されていった。結果、2~3ヵ月という短期間でプロトタイプが完成。「あのとき上間さんと出逢えていなければ、もっと時間が必要でした。デジタルサイネージ市場も成熟しつつある中で、出来すぎではないか、というくらいのタイミングでした」と高山さんは当時を振り返る。

デジタルデザインサイネージ®

デジタルデザインサイネージ®は、ユーザー自身が手軽にデザインできる。

高山さんと上間さんが世に送り出す「デジタルデザインサイネージ®」の最大の特徴は、まず、その汎用性の高さと運用の手軽さだ。用意するものは、スティック型専用端末、モニター、スマホ・タブレット・キーボードなどの入力デバイス、Wi-Fi、電源、以上。コストパフォーマンスにも優れている。また、無料のブラウザーアプリやテンプレートを提供するので、複雑なソフトを操作する必要はなく、文字入力もできる。コンテンツはユーザーが作成することもできるし、高品質なオリジナルコンテンツ制作の要望があれば対応する。高山さんの本業はデザインだ。コンテンツ制作はお手の物。さらに、複数ディスプレイの一括管理も可能というクラウドサービスならではの利点がある。遠隔地に拠点が多数ある企業などには、情報の一斉配信ができるメリットは大きいはずだ。
対象顧客としては商業施設やウェブ制作会社、デザイン会社などになるが「新規事業ではプラットフォームをつくっていきたいと考えています。将来は、社内だけではなくLINEスタンプのように契約を結んだ外部のクリエイターが、そのプラットフォームを活用しテンプレートを制作販売できるようにしたいですね」と想定顧客も多岐にわたるビジネスモデルだ。

DIMENSION WALL
大崎のぶゆき《DIMENSION WALL》所蔵 千島土地株式会社

メーカーへと成長、ひろがる夢。

「デジタルデザインサイネージ®」は2017年4月1日からのサービス開始を予定しているが、すでに前倒しで大阪市住之江区のアート複合スペース「クリエイティブセンター大阪」に納品されている。「ある映像作家さんのアート作品をデジタルサイネージで流したいと依頼がありました」(高山さん)。このサービスが軌道に乗れば、写真や絵画などのファインアートのデジタル版を企業、個人へ提供する「デジタル『アート』サイネージ」への展開も計画しているという。もちろん課題山積だが、メーカーへと脱皮する準備は着々と進んでいる。「今回あらためて気づかされたのは、さまざまな知見が集まる場に出向き、いろんな人と交流することの大切さです」と語る高山さん。「これからが本番、スピード感を持って臨みたい」と二人は意気揚々。高山さんと上間さんのコラボレーションは、まだまだこれからだ。

上間氏、高山氏

有限会社TTDESIGN

高山理氏

http://d-d-s.jp/

U-SOFTFACTORY

上間俊和氏

http://u-softfactory.net/

公開:2017年4月21日(金)
取材・文:赤瀬章氏(Lua Pono Communications)

*掲載内容は、掲載時もしくは取材時の情報に基づいています。