メビック発のコラボレーション事例の紹介

阿波おどりの魅力をキャラクターで表現『徳島阿波キャラ! 有名連』
阿波おどり有名連のキャラクター

キャラクター

阿波おどりに魅せられた
その情熱が制作のきっかけに

徳島の伝統芸能、阿波おどり。その歴史は400年以上と言われ、夏の期間中、普段は静かな徳島の街に多くの観光客が訪れる。その阿波おどりの“有名連”が『徳島阿波キャラ! 有名連』という愛らしいキャラクターとなり、日本全国へ、そして世界へ飛び出そうとしている。
“連”とは、阿波おどりを踊るグループのこと。その中でも有名連と称される「阿波おどり振興協会」と「徳島県阿波踊り協会」所属の33連は、特に熟練した技術を持ち日々切磋琢磨しているという。
「初めて阿波おどりを見た時の衝撃は、今でも忘れられません。運命の出逢いでしたね」と語る株式会社マジカルの副社長・宮谷克志さん。阿波おどりに魅せられて、有名連のキャラクターを制作したクリエイティブディレクターだ。2009年夏、何となく訪れた徳島で阿波おどりに出逢い、その踊りの繊細かつダイナミックな美しさ、人々の熱気、そしてお囃子の音色に心を奪われた。以来、毎年阿波おどりの時期には徳島に滞在。いろいろな連を巡るうちに有名連の存在を知り、阿波おどりのさらなる奥深さを知っていった。知れば知るほど魅力的な阿波おどり。「自分も阿波おどりのために何か役に立ちたい」との想いから、得意のイラストで有名連をキャラクターにすることを思いついたという。
「各有名連には、それぞれの歴史と独特の技があります。その魅力を分かりやすく表現すれば、もっと阿波おどりを好きになる人が増えるんじゃないか。そう考えて、踊りや衣装、小物、その他の特長を一年ほどかけてイラスト化しました」

有名連をキャラクターで再現
その忠実さは関係者も納得のクオリティー

2014年4月、株式会社マジカルの設立と同時に、代表・山下大輝さんは宮谷さんから「制作したキャラクターを徳島の観光に役立てたい」と相談を受けた。
「はじめに宮谷から話を聞いたときには、戸惑いました。私自身は阿波おどりについて詳しい知識もありませんでしたから。ただ、宮谷が本気で制作しているということはよく分かりました。うまくいけば面白い展開になるかもしれないと考え、メビック扇町に相談したところ、徳島県の職員の方を紹介してくださいました。自分たちではきっかけを作ることができませんでしたから、本当にありがたかったですね」と語る山下さん。メビック扇町を通して徳島県商工労働観光部とつながり、すぐに宮谷さんとともに徳島県庁へプレゼンテーションに出かけたという。
「お話を聞く前は、どのくらい本気なのかと疑っていました。これまでも有名キャラクターや徳島のゆるキャラなどを使った阿波おどり関連のおみやげものはいくつかありましたが、著作権の問題などで展開が難しいという現状もありました。勇気のある若者が大阪からやってきたという感じでしたね」と語るのは、徳島県商工労働観光部・企業支援課の國安治さん。
阿波おどりは徳島の人々にとって、県民の誇りであり、生活にとけ込む文化だ。時期になると親族や友人が集い、絆を確かめ合う行事でもある。子どもたちが育つ場であり、老若男女が世代を越えて交流する場でもある。さらに有名連に所属する人たちとなると、阿波おどりを中心に生活が動いていると表現しても過言ではないという。そんな阿波おどりの有名連を大阪在住のデザイナーがキャラクターにしたと聞いて、半信半疑になるのも無理はない。
「ビジネスに阿波おどりを利用するだけなのではないかという気持ちもありました。でも実際にお会いし、イラストを見せていただいて納得したんです」と語るのは同部・観光政策課の上原和樹さん。プレゼンテーションで提示されたのは、33の有名連それぞれの雰囲気と特長が忠実に再現された全99体のキャラクター。踊りの特長や衣装はもちろん、連の中の個人名まで特定できそうな精妙さは、これまでにないクオリティーの高さだったという。

展示風景

日本全国へ、そして海外へ
阿波おどりの魅力を発信できる訴求力

「これは話を進めなければ」と感じた同課の天羽聡美さんは、さっそく阿波おどりを取り仕切る2つの協会に連絡。各協会の役員会や連長会で、プレゼンテーションの場を設けた。関係者からもキャラクターは好評。協会、商品の製造業者などと交渉を重ね、2015年に『徳島阿波キャラ! 有名連』として商品化された。
「役員や連長のみなさんも、本気さを感じられたんだと思います。キャラクターの一つひとつに阿波おどりへの敬意と愛情が感じられ、生半可な気持ちで制作したものではないと分かっていただけたのでしょうね」と國安さんは語る。
現在は、ステッカーやメモ帳など4種類の商品とLINEスタンプを展開。商品は県内の業者が製造し、みやげ物店で販売されているという。また、2015年10月には、徳島県立美術館開館25周年記念『フィギュア展〜ヒトガタ・人形・海洋堂〜』展において、株式会社海洋堂の協力の下、阿波キャラの白無垢フィギュアに着彩をするというワークショップを開催。徳島ゆかりの著名人と一般公募者100人が参加し、作品は美術館内に展示された。
「今後は徳島県内だけでなく全国に阿波キャラが広まり、阿波おどりや徳島のことを知っていただくきっかけになってほしいと考えています。またSNSなどで発信すれば、海外のファンに向けても訴求力のあるキャラクターだと思います。まだまだ展開の可能性を秘めていそうですね」と上原さん。キャラクターをきっかけに徳島を訪れる人が増え、そこでさらに阿波おどりの美しさや奥深さを知り、グッズを買ってもらう。その財源でまた徳島の観光業を盛り上げる。そんなループを作りたいと両者は語る。さらに新たなアイデアを練っているというマジカルの二人。由緒ある伝統芸能とクリエイターとの熱いコラボレーション。今後の展開に目が離せない。

國安治氏、宮谷克志氏、鶴園悠氏、山下大輝氏、上原和樹氏、天羽聡美氏
前列左から 國安治氏(徳島県商工労働観光部企業支援課)、宮谷克志氏(株式会社マジカル)
後列左から鶴園悠氏(株式会社マジカル)、山下大輝氏(株式会社マジカル)、上原和樹氏(徳島県商工労働観光部観光政策課)、天羽聡美氏(徳島県商工労働観光部観光政策課)

徳島県商工労働観光部企業支援課

國安治氏

https://www.our-think.or.jp/digital/

徳島県商工労働観光部観光政策課

上原和樹氏

天羽聡美氏

https://www.awanavi.jp/

株式会社マジカル

山下大輝氏

宮谷克志氏

鶴園悠氏

https://www.magical.bz/

公開:2016年4月22日(金)
取材・文:岩村彩氏(株式会社ランデザイン

*掲載内容は、掲載時もしくは取材時の情報に基づいています。