メビック発のコラボレーション事例の紹介

メビック扇町でのつながりが生み出した「近未来の印刷工場」
丸楽紙業ショールーム

集合写真
左から丸楽紙業の高橋秀一氏、ライフサイズの杉山貴伸氏、南啓史氏、今村勇一郎氏(後)

印刷業界に夢を与えられる場所を

2012年11月、大阪市中心部上本町一丁目交差点角に、ひときわ目を引く建物が誕生した。MARURAKU DIGITAL SHOW FACTORY。すぐ裏に本社を持つ丸楽紙業株式会社のショールームだ。ガラス張りの正面からは、中に大きな印刷機が鎮座するのが見える。「単なる紙のショールームではなく、印刷業界に夢を与えられるような場所を作りたいという社員の想いが実現しました」という丸楽紙業OA事業部長・高橋秀一氏。印刷機はHP社製デジタル印刷機Indigo。オフセット印刷のような仕上がりで小ロット印刷を可能にさせた革新的な印刷機だ。7色の専用エレクトロインキを採用しているので、色の再現が忠実。さらにトナー方式のインキなので機械周りの汚れが圧倒的に少ないという点も印刷現場にとっては魅力。「近い将来の印刷工場はこうなるというイメージなんです」と語る高橋氏。そんな「スタイリッシュな印刷工場」の設計・空間デザインを手がけたのが、株式会社ライフサイズだ。

お互いに良好な関係を続けてきたからこそ

「高橋さんとはメビック扇町を通して気心が知れる仲だったので仕事を進めやすかった」と話すのは、ライフサイズ代表・杉山貴伸氏。高橋氏と杉山氏の出会いは2006年。創業間もない杉山氏がメビック扇町のインキュベーションオフィスに入居していた頃だ。「当時、高橋さんは度々メビックを訪ねては、クリエイターたちに紙のことで困ったことはないかと声をかけて下さったり、みんなで使えるコピー機を置いて下さったりしました。その頃取り組んでいたイベントでも、多くのクリエイターが大変お世話になりました。そんな中で、高橋さんとは次第に仲間のように親しくなっていきました」と杉山氏。「日々奮闘しているクリエイターの皆さんの力になりたいという一心だったんです」と高橋氏。そんな濃密な時間を共に過ごしたからこそ、今現在でもクリエイターたちとの良好な関係は続いていると語る。「社内でこのショールームを作る話が持ち上がった時、杉山さんの顔がすぐに思い浮かびました。やはりメビックでのつながりは強いですね」

紙業者として印刷業界を牽引する存在になりたい

こうして始まった建築計画。大阪市内の一等地に巨大な印刷機を置き、印刷場面を見せたいという。顧客とのヒアリングを大切にする杉山氏は、スタッフの南氏と今村氏も加え、丸楽紙業の社長をはじめとする社員一人ひとりの想いを丁寧に聞き取ることから始めた。そこで浮かび上がってきたのは「近未来の印刷工場」という言葉。従来のアナログ印刷工場ではなく、洗練されたデジタルの印刷工場のイメージ。紙や印刷をめぐって人が集まり、出会う場所。印刷業界を牽引するような存在でありたいと願う会社像。そんな丸楽紙業の想いや願いをくみ取り、みんなでコンセプトを作った。そこから今村氏はグラフィックを含めた空間をデザインし、南氏が設計。杉山氏はそれらを総合ディレクションした。当初SHOW ROOMとしていた建物の名称も、SHOW FACTORYと変更。丸楽紙業の主な顧客である印刷会社を元気づけたい、印刷業の明るい未来を展望できるような場所でありたい。そんな願いが込められた「見せる工場」だ。

人のつながりが、また新たな出会いの場を生み出した

「この場所ができて、社員の士気があがりました」と語る高橋氏。さらに今後は、この場所をデザイナーや写真家など、紙や印刷に関わる人のためのギャラリーとしても機能させたいという。「ここからまた新たな人のつながりが生まれたら、こんなに嬉しいことはありません。人と人が出会って生まれる力は偉大ですから」。メビック扇町で出会った丸楽紙業とライフサイズ。時を経ながら関係が熟成し、また新たなつながりの場所を生み出した。ここからどんな物語が始まるのだろうか。今後の展開に期待したい。

ショールーム外観
ひときわ目を引く近未来的な外観と内部の様子に、通りすがりの人が見学を申し入れる事もあるという。

丸楽紙業株式会社

上町営業所所長・OA事業部部長
高橋秀一氏

営業部営業係長・MSDF広報部
森山洋行氏

http://maruraku.co.jp/

株式会社ライフサイズ

代表取締役
杉山貴伸氏

取締役・一級建築士 / 管理建築士
南啓史氏

デザイナー
今村勇一郎氏

http://www.life-size.co.jp/

公開:2013年8月6日(火)
取材・文:岩村彩氏(株式会社ランデザイン

*掲載内容は、掲載時もしくは取材時の情報に基づいています。