社会性の高い企業の情報をメディアに届けたい!
(株)PRリンク 神崎 英徳氏

「物書き」への思い

神崎氏
神崎氏

中学生の頃から読書少年だったという神崎さん。その頃から何となく「作家になりたい」と思っていたそうです。転機は高校の夏休みの自由課題。ありきたりの内容が嫌で小説を書くことに。すらすら書けてしまったという作品は、学年の優秀課題をまとめた本に掲載され、国語の先生からも褒められたとのこと。ここから「物書き」になりたいという思いが本格的になっていきます。学生時代は小説や論文を書いては賞に応募し、バイト感覚で年間にかなりの賞金を稼いだとか。そんな中、ある新聞社主催の日米学生サミットの論文コンテストに入選、日本代表としてアメリカに行き、現地の学生と議論をするという貴重な経験をします。一緒に行った学生はマスコミ志望が多かったのですが、神崎さんは「マスコミは書きたい文章が書ける訳ではない。民間企業で文章を書く仕事=広報の仕事がしたい。」と考えました。作家については「すぐになれるものではないし、働きながら書くんだろうな。」と漠然と思っていたそうです。父親の「日本経済を支えているのはメーカーだ」という意見もあり、コンシューマー向け製品を作るメーカーの広報を目指すことに。

就職そして念願の広報室へ

目標通り、大手メーカーに入社するも、最初から広報の希望は通らず、まずは営業の現場へ。人間関係がものを言う職場でしたが優秀な営業成績を残すことが出来ました。年1回の異動希望では毎回広報室への異動を希望し20枚もの自己申告文を提出するも、多忙を極めていた現場から離れることは適わず、気づけば入社6年目に。「このままではいつまで経っても希望が通らない」、ある日、思い立って上司に「広報に行けないのなら辞めます」と言いに行くと「もう1年待ってくれ」と言われ、翌春には念願かなって広報室に配属になるのでした。

広報室は上司を入れて4名の部署。各人の業務範囲も広く、神崎さんは雑誌、専門紙を担当し、一方でいきなり社内報の編集長に指名されます。ちょうど翌年が創立50周年ということもあり、今まであまり触れられなかった会社の歴史の内情や会社が大事にしてきたことを掘り下げて、今の人達に伝えたいと書いた記事は高い評価を受けることになります。

広報で関西を盛り上げたい

仕事上ではマスコミとの付き合いも増えてきます。マスコミは関西のユニークな企業を知りたいと思っており、他の会社の広報を手伝う形で広報のスキルアップと同時にマスコミの為になることも出来るのではないかと考えていました。

そこで活用しようと思ったのが社内ベンチャー制度です。そこで関西の企業の広報を手伝う事業を提案、承認され、まずは事業化の可能性を探ることになります。

専任として1人でスタートし、企業ニーズを探ります。各社に「広報でもっと関西を盛り上げましょう」と提案したところ、企業が集まり、広報活動をすると東京のマスコミに取り上げられました。小冊子に関西企業の情報を掲載し、メディアに情報を渡し、各社からは情報掲載費を頂くというモデルを検証します。最終的には賛同企業は30社ほどになり、発行を重ねましたが、収益面では大きな利益を出すには至りませんでした。全て一人での製作でしたが仕事は楽しかったと言います。この時、営業の時とは比べ物にならない位、多くの方と会うことが出来たのが財産になりました。

独立して事業化を目指す


設立パーティー

しかし、事業として採用されるかどうかという点では既存事業との関係も薄い為、神崎さん自ら継続審査を受けることを断念します。将来的に広報室に戻るという可能性もありましたが、徐々に増えてきたクライアントに対して「事業中断」と言う気にはなれませんでした。また自分自身の「本当にやりたいこと」を考えると、やはり企業の広報の手伝いをしたいという気持ちが強くなっていました。結果、社内ベンチャーは1年半で終了、神崎さんは会社の了解を得て、この事業を継続する為に独立することを決意します。
「ニーズはある。やり方の問題だけだ。それをこの1年半で確かめた。」退社後まもなくしてPRリンクを立ち上げます。

社会性の高い企業を支援したい

神崎氏

当初は設立手続き等でなかなかお客さんを回れず、1人の限界を改めて感じつつも、神崎さんの思いを知って応援してくれるクライアントも出てきました。クライアントには10人以下の小企業も多く、小冊子は止めて、ニュースリリースを作って発信することにしました。仕事はそれなりにもらえましたが、神崎さんの「良い物を持っている企業や社会的意義のある事業をしている会社を紹介したい」という思いからボランティア的な仕事も多く、当初は収益は二の次というケースも多かったそうです。

これは神崎さんがある出来事をきっかけに強く意識するようになったのが「企業の社会性」です。社会的意義の高い事業を持つ企業の情報をメディアに届けることにより、その企業を支援し、結果的に子供達が安心して暮らせる社会の実現を目指したいという思いを事業の理念として強く意識しているとのこと。今でも「お金を頂いても手伝えない企業、あまり頂けなくてもウチでしか手伝えない企業」という判断をすることがあり、それらを収益面からバランスを取るのが課題だそうです。

企業としてのバランス

セミナー風景

そんな独立から数ヶ月、以前から「こういった人と一緒に仕事をしたい」と考えていたメンバーに加わってもらうことも出来、責任を感じるようになりました。社会の為、お客さんの為だけではなく、会社そして社員の為ということも考えるようになり、結果的に事業としてはバランスが良くなってきたとのこと。

今は企業の情報発信の質を高める活動を進めており、マスコミに確実に届けていく仕組みを充実させている所です。来年には事業モデルが完成形になる予定です。
先日開催した企業向けのニュースリリースについてのセミナーも大盛況で、分かりやすく広報の重要性を説明する姿は高校生の時から人に文章で伝えることを楽しんできた神崎さんらしいと思わせるものでした。

ニュースリリースの奥の深さ

現在、ニュースリリース作成の依頼が増えてきていますが、全ての依頼に納得できる形で応えることの大変さを実感しているとのこと。企業の理念や商品への思いを理解して、その気持ちに共感した上で、短い文章にまとめることは非常に生みの苦しみを伴います。「書けば書くほど奥の深さを実感して自分の腕を磨かないといけないと痛切に感じます。」という神崎さん。傍から見ると不器用な程、自分の信念を大切にして事業を進めようとしています。それは時には遠回りになるかもしれませんが、人々の共感を得る事業への道のりかもしれません。

チャレンジャーズクリップ Vol.80 公開:2008年11月11日
取材 文:インキュベーションマネージャー 増見 浩一朗

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