「鶏口牛後ーニッチでも独自の市場を切り拓く」(株)ROKKON 出口 幸宏氏クリエイター・起業家支援施設「扇町インキュベーションプラザ」

メビック扇町の起業家紹介「チャレンジャーズクリップ

「チャレンジャーズクリップ」は、メビック扇町に入所している「起業家=チャレンジャーズ」をメビック扇町スタッフの視点で紹介するインタビュー記事です。

鶏口牛後ーニッチでも独自の市場を切り拓く
(株)ROKKON 出口 幸宏氏

新しもの好きな中学生

出口さん

80年代初頭、YMO(Yellow Magic Orchestra)が一世を風靡した時代。テクノポップに憧れ、シンセサイザーにはまった中学生。その名は出口幸宏さん、当時15歳。YMOの登場は、これまでの日本の音楽シーンを根底から変えるものと、中学生ながらに予感したといいます。

Apple II購入


当時のポスター

中学最後の夏休みがはじまってすぐ、自宅近くの本屋で買物レジ待ち、新刊誌コーナーにYMOが表紙を飾った雑誌が目に入りました。新しい音楽誌かと思い、急ぎのあまり中身も確認せず購入。家に帰って雑誌をみて、それがアマチュア無線やラジオキットを紹介する「初歩のラジオ」というエレクトロニクス誌。すぐに返品交換も面倒だなぁと思いつつ、広告記事に憧れのシンセサイザーが日本橋には沢山あり、しかも安い。さらに海外から電子楽器を並行輸入するショップがあるのを知り、日本橋に通うようになりました。

いつも足を運ぶのが、並行輸入品を取扱う電子部品会社のショールーム。そこで、アップル社のApple IIというパソコンを知り、それがどういうモノなのか、徹底的に販売担当者に聞いていました。Appleと言えば、今やiPod/iPhone等の商品を立て続けにヒットさせる超有名ブランド・メーカーですが、当時は国内法人も無く、その店が並行輸入販売していました。
正規代理店より安く、ほぼ半値で購入できることを知ると、マニュアルや付属ソフトも英語のApple IIを、英語が苦手でコンピューターの専門知識もない中学生が、購入のメリット、高校入学以降の返済計画を親に説明して、ついに購入してしまったそうです。

自分で見つけた仕事

高校生になってすぐ、大阪市内のベンチャー企業がPCソフトの開発者を募集している事を知り応募。簡単なテストと面接で合格、現役高校生の契約社員(アルバイト)として採用されました。在籍する学生アルバイトは、理工系の大学生が最も多く、海外からの留学生もいました。情報収集、開発力の高さに毎日驚きつつ、新しい発見が得られる仕事がとても楽しく、この頃は毎日が充実していたといいます。
最初の仕事は、海外製PCソフトの調査。海外ではどういった商品が売れているか、それはなぜ売れるのか?日本人はどう評価するだろうか?といった情報分析だったのですが、プログラム開発の仕事をしたいとマネージャーに相談したところ、「大手学習塾を得意先とした営業担当を紹介するから直接交渉しなさい。」とあっさり言われ、戸惑ったそうです。
この会社が「自分の仕事は自分で見つける」という方針であったため何度か営業の苦労話を聞きに行き、今度NECが発表する家庭用パソコン向けに、何かソフトを用意しセット販売したいという考えを聞きだすことに成功。楽しんで勉強できるような、数学ソフト教材をカタログと共に無償配布する提案を行いました。

時給500円

ソフトを無償提供するアイデアが、まだ、どこもやってないサービスだったせいか、これが好評。時給500円という低賃金を武器に、企画・ソフト・デザイン・サウンド、カセットテープの量産作業を一人で担当し、広告予算だけで制作が済んでしまいました。パソコンセットが学習塾を通じて売れ始め、リピート発注がつづき大成功。高校生ながら、今は上場企業となった社長と北新地で祝賀会。台湾から来た学生には、「私の国で作るより、安く作るからもう作るのはやめてください。」と冗談まじりに目が真剣だったことを覚えているといいます。

映画「TRON」の革新に触れる

高校の授業が終わる午後から夕方、市内までバイトに通う日々。帰りはアルバイト先から映画館へ行って映画を観てから自宅に帰ることが増えてきます。ある日「TRON」という初めてコンピュータグラフィックスを採用したディズニー映画を見て、何か凄いものを発見できそうな気がして、映画館に5回も足を運んだそうです。
初めは革新的な映像に魅了されていましたが、何度か見ているうちにところどころに手抜きに感じられる表現が目につきました。衣装に蛍光テープを貼ってCGらしく見せていたり、カットの一部が安っぽい手書きアニメになっていたり。ところが何回も見ていると、この安っぽく見える個所が映画のプロトタイプに見えてきたそうです。
制作者の何か熱い志と厳しい制約に対する葛藤、決してあきらめない抵抗感みたいな感情として、どんどん浮き彫りになって伝わってくる。映画は、そういった制作者の感情までも伝え残すものだと思いました。

絶え間ない挑戦

YMOしかり、フルCGのディズニー映画しかり、多感な時期に未来を占う技術やシーンを見たことが、今の出口さんに大きな影響を与えています。

昨今、特に関西地域は、世界市場を見据た大型フラットパネル工場建設等大型投資で、久しぶりに世界をリードする積極姿勢が明確化しています。さらに、超高精細の液晶ディスプレイや有機ELといった新しい技術が研究開発される中、先端のディスプレイは、すでに放送分野で要求される映像再現能力を十分有してしまい、これから先、別の付加価値を内包した、新しい市場を創造するフォーマットが期待されつつあります。

(株)ROKKONは、こうした、新しい映像メディアの利活用によって、より豊かな、新しい生活スタイルを連携して事業化する。そういった夢を持って、関西を代表する大阪市で創業しました。

「これまで人々が気づかなかったところに価値を見つけ、それを具体化していくことにより、ニッチでも独自の市場を切り拓いていきたい。先ず関西のクリエイター達と業界を超えて連携し、ユニークなフレームづくりを実現したいと考えています。ベンチャー精神を忘れず、絶えず挑戦しながらも、決して人間らしい考え方を無くさない企業にしたい。それには、事業に信頼がなければならない。」

物静かな人柄の奥に潜む起業家・挑戦者としての熱い思いがひしひしと伝わってきます。

チャレンジャーズクリップ Vol.76 公開:2008年07月22日
聞き手 文:インキュベーションマネージャー 堂野 智史

(株)ROKKON

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